【国会議員の目】衆議院議員 自由民主党 塩崎恭久氏

保健ODAの司令塔機能の強化を

内閣官房内に「グローバルヘルス戦略協議会」の設置を提言

衆議院議員 自由民主党 塩崎恭久(しおざき・やすひさ)氏


1950年生まれ。東京大学教養学部を卒業後、日本銀行に入行。82年、米ハーバード大学行政学大学院で行政学の修士号を取得。93年に衆議院議員に初当選。小泉純一郎政権下で外務副大臣、安倍晋三政権下で内閣官房長官・拉致問題担当大臣、厚生労働大臣などを歴任。現在、自民党党・政治制度改革実行本部長、データヘルス推進特命委員長などを務める

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※本記事は『月刊 国際開発ジャーナル2021年1月号』の掲載記事です
※当コーナーでは、国際協力に詳しい国会議員が独自の視点から日本の国際協力の在り方を論じます。

大臣としてCEPIの創設に貢献

―これまでのキャリアで国際協力分野にどう関わってきましたか。

 2000年に自民党外交部会長に就任してから、日本の国際協力の一端を担う機会に恵まれた。当時、日本を含む国際社会は北朝鮮へコメ支援を実施し、国連世界食糧計画(WFP)が各国・国際機関の支援が行き渡っているかをモニタリングしていた。私はWFPの協力を得て訪朝し、支援現場を視察したこともある。また当時は、特定非営利活動促進法が成立した直後であり、自民党はNGOとの連携が弱かった。私は「自民党国際的NGOに関する小委員会」を立ち上げ、委員長としてNGOから政策要望を聞いていた。

 その後、外務副大臣や官房長官を経て、14年に厚生労働大臣に就任した。当時、西アフリカ地域でエボラウイルスの感染拡大が続いており、日本政府として感染症を含むグローバルヘルスのガバナンス体制の再構築に取り組む必要があった。その結果、日本政府のイニシアチブの下、16年の伊勢志摩サミットでユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進などを盛り込んだ「国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン」が取りまとめられている。

 また、厚生労働省は感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)の創設に大きく貢献したが、これは私の決断で決めたものだ。同連合は感染症防止に向けたワクチンの研究開発を目的とする世界的な官民連携パートナーシップで、日本は17年の創設時からCEPIへの拠出を行っている。

日本の保健支援額の低さを危惧

―現在、「保健分野のODAのあり方を考える特別委員会」の委員長を務めています。設立の背景と目的は。

 保健システム強化、UHC、健康危機対応などの国際的議論を主導してきた日本として、持続可能な開発目標(SDGs)の達成年まで残すところ10年となったタイミングで「今後、日本として具体的にどう貢献していくのか」を示す必要性が生じていた。

 一方、日本は「UHCの達成」を度々主張していたが、その実、政府開発援助(ODA)における分野別シェアはインフラが27.4%と圧倒的に多く、保健は5.7%と極めて小さかった(2017年時点)。G7諸国と比較しても、国内総生産(GDP)が日本よりも小さい英国の半分にも満たない状況であった。武見敬三参議院議員が委員長を務める「『グローバルヘルスと人間の安全保障』運営委員会」において、こうした「貢献が少ない」という問題意識が共有され、19年11月に「保健分野のODAのあり方を考える特別委員会」が発足した。

 特別委員会とテーマ別会合に加え、国際機関の幹部、学術界や市民社会の有識者との意見交換を経て、6つの提言(①司令塔の強化、②新たなグローバルヘルスの貢献目標の設定、③「戦略的」選択と集中、④マルチとバイの連携強化、⑤国内外NGO等とのパートナーシップ強化、⑥グローバルヘルスの変化に応える革新的人材の育成強化)を打ち出した。日本政府のグローバルヘルス戦略として13年に策定された「国際保健外交戦略」、そして15年に「開発協力大綱」の保健分野の課題別政策として策定され、健康・医療戦略推進本部(本部長:内閣総理大臣、事務局:内閣官房健康・医療戦略室)で決定された「平和と健康のための基本方針」が6つの提言に沿って改定されるよう促していく。

マルチ・バイで支援を5年で倍増

―提言のポイントは。

 ①では不明瞭になっている保健ODAの意思決定・司令塔機能を再構築するよう提言している。「平和と健康のための基本方針」を策定した際、グローバルヘルスの大きな戦略を策定する機能は外務省から内閣官房に形式上移った。だが、保健ODAの調整業務は健康・医療戦略推進本部に移管されておらず、役割が分散している状態になっていた。今回、保健分野のODAで司令塔の役割を果たせるよう同本部の機能を強化することを提言している。具体的には、同本部の下に外務省や厚生労働省の局長級で構成される「グローバルヘルス戦略協議会(仮称)」を新たに設置し、ODAを含めたグローバルヘルス戦略を議論できるようにすることを求めている。

 ②では、保健分野へのODAが少額であることから、今後5年間で多国間機関へのさらなる拠出と二国間支援の合計額を増額するとともに、ODA資金と民間資金を合わせた支援額も倍増するよう提案している。二国間支援では相手国との政策対話や国際機関との深い協議などを通して、保健政策全体の高度化や効率化を後押しする。

 ④では、日本による多国間支援と二国間支援の連携強化を提案している。開発援助において、1つの国に帰着する支援は総合的に見ないといけないが、現状は2つの支援が個別に実施されることが多く、支援内容が重複するケースもある。これではせっかくのリソースがもったいない。以上を踏まえて、二国間援助における案件形成に先立って、多国間機関を含むステークホルダーと意見交換や政策協議を持つことなど、リソースの有効活用を意識した支援を心掛けるよう訴えている。

 ⑤では、基礎的保健医療サービスへのアクセス改善などでNGOは公的機関と比較しても遜色ない援助実績を誇っているものの、日本のODA全体に占める国内外NGO経由の支援実績はG7の中で最も低いことから、増額のために必要な手立てを講じるよう提案している。さらに力のあるNGOについては、案件形成や入札などで、JICAなどと平等の立場で関与を強めてもらうとともに、JICAも自ら実施するウェイトを引き下げ、NGOに実施を委託したり、NGOと共同実施したりするなど、可能な限り民間主義を実現すべきとしている。上記以外にもさまざまな提言があり、是非一読して、詳細を確認してもらいたい。

弱い立場の人々への支援も期待

―ODA全般で日本が貢献すべきことは。

 G7がODAで拠出する分野を見ると、保健以外では難民支援や人道支援など、弱い立場の人々に対する支援、まさにSDGsの実現につながる分野が多い。一方、日本は先述したようにインフラ支援が突出して多く、自国中心主義が前面に出すぎてしまっている。もっと弱者に対する支援を増やしても良いのではないか。

 また途上国の人材育成をODAでやっていくべきだ。国家は人で成り立っており、国づくりはすなわち人づくりだ。日本はODAを活用して途上国人材の育成をより推し進めていくべきだろう。ただ、ネックは日本の大学になかなか英語で講義を受けられるプログラムがないことだ。受け入れを加速させるためにも、われわれは大学の国際化も併せて考えていかなければならないだろう。

保健分野のODAのあり方を考える特別委員会 概要

目的

持続可能な開発目標(SDGs)達成年である2030年に向けて、日本の保健分野におけるODAの戦略性と開発援助効果を高めるための方向性を検討し、「国際保健外交戦略」並びに「平和と健康のための基本方針」の改定に生かされる提言をまとめる。

構成員(敬称略)

塩崎恭久(衆議院議員)、武見敬三(参議院議員)、植野篤志(外務省国際協力局長)、高須幸雄(国際連合事務総長特別顧問)、瀧澤郁雄(国際協力機構人間開発部審議役)、戸田隆夫(国際協力機構理事長特別補佐)、石井澄江(ジョイセフ代表理事・理事長)、中谷比呂樹(国立国際医療研究センター(NCGM)理事)、平野克己(日本貿易振興機構アジア経済研究所上席主任研究員)など計23名

※(公財)日本国際交流センターが幹事・事務局として特別委員会を運営

提言内容

1.司令塔の設置
2.新たなグローバルヘルスの貢献目標の設定
3.「戦略的」選択と集中
4.マルチとバイの連携強化
5.国内外NGO等とのパートナーシップ強化
6.グローバルヘルスの変化に応える革新的人材の育成強化

本記事は『月刊 国際開発ジャーナル2021年1月号』に掲載されています