国際開発ジャーナル社 International Development Journal

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2018.12.03

『国際開発ジャーナル』2018年12月号 特別記事

本誌『国際開発ジャーナル』2018年3月号で特集した「JICA予算問題」

同問題に関して本年8月号でも続報を報道しましたが、この度、新たな展開があり、12月号にて国際協力機構(JICA)財務部予算執行管理室長の安藤 直樹氏へのインタビュー記事を掲載しています。本日12月号の発売にあわせて当該記事をWebでも公開いたします。

※その他、Facebookなどでも同時公開中です。

*************以下、記事内容****************

JICA予算問題、解消の兆し

開発コンサルティング業界に朗報が入った。予算逼迫問題で揺れる国際協力機構(JICA)が2017年度下半期から落ち込んでいた新規案件の公示件数を今年度から回復させていくというのだ。JICAは当初2018 年度の新規案件公示は「厳しい」との見解に立っていただけに状況改善が期待される。本誌8月号でも登場したJICA予算執行管理室の安藤室長に再びインタビューを実施し、その内実を聞いた。

国際協力機構(JICA) 財務部予算執行管理室 室長 安藤 直樹氏

技プロ公示が8割まで回復見込み

今年7月以降、関係者の協力を得て事業計画の見直しを行った結果、 2018~19年度以降の予算執行管理に見通しが立った。

そのため、15~16年度までの採択 案件のうち、予算ひっ迫問題を受けて一時着手を見合わせていた案件に取りかかるとともに、今年度に採択する新規案件規模を概ね例年並みで 進めるべく、日本政府と相談を行っている。この方針に基づき、この10 月には今年度の新規案件の公示規模についてある程度回復する見込みを確認できた。

具体的には、2018年度中の運営費交付金による新規案件のうち、コンサルタントへ発注予定の合計金額見込み(2019年度以降支出分含む)は、約280億円~300億円となる。 15~17年度における平均の発注実績総額約350億円と比べると約8割の規模にまで回復するよう努める。

今年度の技術協力プロジェクト本体の業務実施契約の公示件数も今年5月の時点で予定していた54件から 約100件に増える見込みだ。他方、今年度に例年並みの規模で採択する新規案件は19年度に詳細設計調査などの準備を始めるため、本体事業の公示発注がなされるのは2019年度末から20年度になる。

18年度の新規案件の公示件数予定をある程度回復できた背景には、コンサルタントやJICA専門家をはじめ、多くの関係者の皆さまにご協力いただき、継続案件の事業規模や事業スケジュールの見直しをさせていただいたことが大きかったと考えて いる。

今後、持続的かつ安定したJICA事業を実施していくために、まずは新規案件の採択規模の回復を優先させていただく。その上で、今後の予算執行状況に応じて、継続案件の事業規模についても、優先度の高いものは順次検討していきたいと考えてい る。

なお、単独型案件は、特に個人コンサルタントや中小のコンサルティング企業にご活躍いただいてきた事業であることも踏まえ、バランスよく公示規模の回復を目指したい。今年5月時点に予定していた今年度中の単独型の公示件数は82件だったが、120件弱にまで増加すべく検討しているところだ。

職員の予算管理能力強化を

当面の予算管理の見通しは立ったものの、同じような問題を再び起こ さないためにも制度の見直しを含めた予算執行管理方法の改革を行う必要がある。

今年の6月から、理事長の下に組織・経営、会計管理・独法監査、IT システムなどの外部の専門家から構成される「予算執行管理強化に関する諮問委員会」が設置された。18年 10月まで7回にわたって開催され、年内には提言を取りまとめる予定で 議論をいただいている。

併せて、理事会を通じたガバナン スの強化や事業担当者の予算リテラ シー向上にも同時進行で取り組んで いる。特に、制度やシステムを十分に機能させるためには、各事業部の担当者から役員に至るまでが、予算関連の情報の重要性を認識した上 で、適切にシステムに入力するだけ でなく、入力された結果を正しく解釈し事業計画にフィードバックしなければならない。

今年度は4月から理事会に予算執行状況が毎月報告され、今年度と来年度以降の事業規模などが適切に計画されているか、さまざまな方面から確認を行う。また、予算制度や予算執行管理の手法に至るまでの社内研修を実施して、すでに500人近くの職員が受講した。

今回の問題を通じて、適切な予算管理なくして適切な事業実施はできないことを改めて痛感した。そのことをJICA職員一人一人が常に心がけ、適切な予算執行管理を行っていきたい。開発コンサルタント、NGO、地方自治体、大学などの開発 パートナーの皆様からのご理解とご支援を引き続きよろしくお願い致します。

 

2016.11.18

【取材情報】八千代エンジニヤリング新社長インタビュー

「開発コンサルタント・トップインタビュー」と題しまして、
9月に就任されました出水重光社長に
1.新社長としての抱負
2.国内事業及び海外事業の現状
3.今後の事業展開

についてじっくりお話を伺いました。

詳細は国際開発ジャーナル1月号(1/4発売)に掲載予定ですので
是非ご覧下さい!

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2015.11.05

国際協力キャリアフェア セミナー情報更新!!

昨日に続いて本日は、2つ目のセミナーセクション「開発協力への多様な関わり方」をご紹介します!

平和構築への貢献、草の根レベルのボランティア活動、一般企業のCSRやBOPビジネスの展開など。
自分なりの動機や目的を活かした開発協力分野との多様な関わり方、道筋を一緒に考えていきます。

●平和構築に関心のある方は必見です!!
世界で紛争が絶えない中、日本は平和国家として国際社会で不断の努力を続けています。
国連平和維持活動(PKO)をはじめとする国際的な平和協力活動に携わるのが内閣府国際平和協力本部事務局です。

事務局内で、日本の国際平和協力を担う人材を育成する「国際平和協力研究員制度」について説明します。
セミナーでの質問はもちろん、ブーススペースにも是非、足を運んでみてください。

●開発コンサルタントに興味のある方はこちらへ!!
国際開発センター(IDCJ)によるセミナーです。
1971年に日本初の国際開発分野専門の総合シンクタンクとして創立されて以来、160カ国以上で調査に取り組んできた歴史を持つのが、国際開発センター(IDCJ)。セミナーのみならず、ブースでの質問も積極的にどうぞ!!

●開発協力のプロになるにはここから!!
(独)日本貿易振興機構アジア経済研究所/開発スクール(IDEAS)によるセミナーです。
IDEASは、主に社会人としての実務経験を持つ人を対象に、国際開発のプロ育成を目指す教育機関です。
開発協力の分野を目指す人たちは、必ずしも専門知識を持っているとは限りません。そうした人が本当に何がしたいのか、何が向いているのかを、過去のキャリアを踏まえてアドバイスするのがIDEASならではの進路指導です。
開発協力のプロとして活躍したい方は、必見のセミナーです。ブースにもどうぞ!!

その他、セミナー情報は随時更新しますので、お見逃しなく!!

参加登録はこちらから↓↓
http://www.idj.co.jp/?page_id=3183

2008.12.06

日本の寄附文化を考える(㈱ファンドレックス代表取締役 鵜尾雅隆 氏)[2008.12.6]

日本の寄附文化を考える
資金・情報・機会を仲介する機能が必要

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株式会社ファンドレックス 代表取締役/「ファンドレイジング道場」主宰
鵜尾雅隆 氏

[プロフィール]
1968年兵庫県生まれ。91年にJICA国際協力事業団(当時)入団。外務省経済協力局、総務部総務課、インドネシア事務所勤務などを経て、2004年に米国ケース大学大学院で非営利組織管理修士号を取得。05年に「ファンドレイジング道場」を立ち上げNGO支援を開始。08年に日本で初となるNGO向けファンドレイジング支援コンサルティング会社を設立。

企業がCSR(企業の社会的責任)の一環として取り組む社会貢献活動に、国際協力NGOは欠くことのできない存在となりつつある。しかし残念ながら、金額的に見れば、欧米諸国と比較しその規模はまだまだ小さいのが現状だ。日本と欧米の違いはどこにあるのか、それを活発化させるためには何が必要なのかについて、“日本の寄附文化”にまで立ち返り、その現状と課題などについて聞いた。(インタビューア:本誌主幹荒木光弥)

寄附を阻む3つのボトルネック

アメリカでの個人寄附市場が20兆円ある中で、日本はその100分の1程度。経済規模で見れば約3倍程度の開きであることを考えた場合、いかにこの差が大きいかが分かる。

私は1994年、まだJICAに入って3年目ぐらいのころ、「日本に100億円のNGOをつくるには研究会」というものを立ち上げたことがある。これは、官公庁や経済界から20代の人たちが集まった勉強会だった。その原点は、当時のODA白書に「ケア」の年間予算が約800億円、オックスファムが約100億、日本のNGOは多いところで2、3億円。“この差はなんだ”と。企業や個人からの寄附が集まれば、NGOにもお金が回るようになるし、ODAにとってもプラスになるのにとの思いが、今でも私の問題意識の根底にある。

寄附市場にこれだけの格差がある原因について、大きく3つほどに分けて考えてみたい。はず初めに、よくいわれる税制上の課題がある。国際協力NGOに限らず、NPO全体に対して税制の優遇措置を与えるという面では、日本は明らかに遅れている。一例を挙げれば、日本には3万5,000ぐらいのNPO法人があるが、その中で認定NPO法人は89団体程度。これがアメリカだと「501c3(ファイブ・オー・ワン・シー・スリー)」というステイタスを持つ団体が100万ほどあるといわれている。この差は、100円、200円という金額ならさほどでもないが、まとまった金額を寄附する時には大きな問題となってくる。まして、これが企業であればなおさらだ。

第2の問題が、寄附を市場ととらえた場合、日本には、企業や個人、NPOの間に「資金の仲介」、「情報の仲介」、「機会の仲介」を果たす機能が圧倒的に少ないことだ。例えば「東証一部」や「eトレード」、「ネット証券」といったものがなければ、すべての企業が未公開になってしまう。こうした状況下では、投資する側も情報がないばかりに、高いリスクを負って投資することになる。これでは、たまたま社長を知っているとか、ものすごく有名な企業でなければ怖くて投資などできない。日本のNPOが置かれている状況は、これに似ている。

アメリカでは、NPOが格付けされ、一般の人たちが寄附先として比較できる「Charity Navigator」や「BBB Wise Giving Alliance」というウェブサイトがあったり、「Community Shares」のように、数十団体のNPOをまとめた資金仲介機能があったりする。

そして3つめの問題として、NGO自身のファンドレイジング力やコミュニケーション力の問題を考えてみたい。これにはさまざまな要素があるが、よい人材が集まらなかったり、あるいは続かなかったり、そもそもそうしたことに人員を割けなかったりというNGOが多いことになどに深く関係している。その原因の一つに、NGOスタッフの待遇問題がある。

そもそもNGOはキャッシュフローが遅く、資金を給与にまわせない事情はあるにせよ、何より問題なのは「NGOの給与は安くて当然」という認識が浸透していることだ。日本は、世界で最もNGOスタッフの給与に対して認識が厳しい国だ。たとえば、インドネシアでは平均的な給与額と比べ、NGOスタッフの給与水準は高い。日本では、年収250万円程度が上限で、平均で180万円程度。これでは長く続けられない。魅力ある人間が残れる環境をつくらなければ、NGOの能力も上がらない。

NGOの流出を招く規制

ある政府関係者とNGO税制の話をした際に、その人が財務省を説得するためにはロジックを変える必要があると話していた。“寄附金に対して税制面で優遇措置を”と要求しても、向こうはそれができない理由を完全な理論武装で返してくる。そこで、NPO側に何か反論する材料をといっても、これが出てこない。

資金・お金の流れを変えることで、経済モデルあるいは成長モデルとして日本社会にメリットがあることを立証できれば、説得力が出てくる。どうしても、“市民社会を育てる”といったロジックだけでは弱い。社会構造を変えるためには、あるいは、エポックメイキングというものが必要なのかもしれない。いくら「ボランティアが大切」と言っても効果はないが、阪神淡路大震災が起こって初めて、ボランティアが広まったというのがその例だ。

アメリカに「キバ(KIVA)」というNGOがあり、途上国の人びとの自立を支援するための投資ができるウェブサイトを運営している。これは、「私は500ドルでミシンを買って起業します」といった多数のメニューの中から対象者を選び、直接その個人に投資するというもの。そのビジネスが成功すれば、投資したお金が戻ってくる。マイクロクレジットに近いものだが、これと同じことを日本でやろうとしても出資法などの規制が壁になる。そうすると、アメリカにNGO法人をつくり、そこで日本語のサイトを立ち上げた方が手っ取り早いという話になりかねない。

NGO税制もそうだが、あまりに規制が厳しいと、優秀な団体が海外に流出してしまうだろう。実際、私の知り合いでも真剣にそうしたことを検討しているところがある。これでは、日本社会にとって大きな損失だ。

資金の流動性を確保するために

現在、来年の4月に「日本ファンドレイジング協会」を立ち上げようと準備を進めている。これは、日本にも寄附者の権利条項や権利憲章はもちろん、ファンドレイズする側の行動基準が必要だとの考えからだ。ファンドレイズする際には、「こういうことを説明しなければならない」とか、「財務諸表を見せなくてはいけない」など、国内のNPOも含めた「寄附市場」のルールを明確に発信する必要がある。ファンドレイジングを技能として確立し、それを修得してもらい資格認定する、というのが全体的なイメージだ。欧米にはファンドレイザーが社会的に認知され、NGOと企業や個人をつなぐパイプ役として資金の流動性を高めることに一役買っている。また日本の寄附文化を考える上では、小口の寄附も大切だが、富裕層からの大口寄附を獲得することも考えていかなければならない。「一生分稼いだし、何か世の中のためになることをしたい」という意思を汲み取る仕組みづくりが必要だ。

野村総研の試算によれば、日本の相続市場は年間75兆円。これが2020年には109兆円になる。この内、子どもに財産を残したいと考えている人は63パーセント程度。ここに、これだけのニーズがある。しかし最大の問題は、日本人で遺書を残す人は10パーセント程度しかいないことだ。遺書を書かないと、せっかく本人が社会貢献をしたいと考えていても叶わない。仮にみんなが遺書に全財産の5パーセントでも社会貢献のために使うと書けば、一気に日本の寄附市場は、現在の2,000億円から数兆円規模に拡大する。

これは仕事としてではないが、その仕掛けとして「遺産寄附倶楽部」のようなものがつくれないかと考えている。これまで経済界などで活躍してきた60代、70代の人たちが、社会のリーダーとして未来の向けた遺書を書く。1円でも寄附すると書いた人だけが参加できるステイタスシンボルとしての社交場をつくる。“遺産寄附というものは社会リーダーのマナー”とう流れがつくれれば面白い。こうした同じ価値観でつながった社交場が、老後の楽しみにもなるだろう。先ほどエポックメイキングの話をしたが、これもその一つになり得るものだ。

この数年、私が日本の寄附市場を見てきて感じるのは、寄附とか社会貢献に対して社会の関心は高まっているが、まだ水面をないでいるということ。何かきっかけがあれば、これが一気に加速する。ファンドレイジング専門のコンサルティング会社を立ち上げたこと、あるいは来年設立予定のファンドレイジング協会、そして遺産寄附倶楽部が、社会が変化する一つのきかけになれば、これほど嬉しいことはない。

子どもが夢を語らないという前に、大人が夢を語っているか。大人が子どもに、社会の役に立つ人間になりなさいという前に、大人が社会の役に立っているところを見せているのか。
個人の意識改革が、企業の社会貢献活動を活発化させ、個人の寄附とあわせてNGOへの資金的な流動を促していく。夢ではなく、こうした流れをつくることで、日本全体として国際協力を盛り上げていければと考えている。

2008.11.08

外務省国際協力局長就任インタビュー(木寺昌人 氏)[2008.11.8]

官民連携をODAの柱に
木寺新局長インタビュー

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外務省国際協力局長 木寺昌人 氏

アフリカ開発会議(TICAD IV)、北海道洞爺湖サミットという大きな会議を終え、それらの成果をいかに実行に移してくかが問われているなかで、外務省で政府開発援助(ODA)を担当する国際協力局長に木寺昌人氏が就任した。10月には新JICAも発足し、これらの会議で議論された施策がどのように実施されていくのかに注目が集まる。こうした節目にあたり、ODAの方向性などについて、木寺局長に聞いた。
(インタビュア: 本誌編集長 日下 基)

冷え込むODAへの関心

—ODAを取り巻く現状をどう認識しているか。

10数年前に無償資金協力課長としてODAを担当して以来、今回久しぶりに経済協力の部署に戻ってきたが、その間、この分野は大きな変化を遂げていた。残念ながら、現状ではこの分野には「冷たい風が吹いている」という印象だ。

一つは、ODAの額の問題だ。日本のODAは、一般会計予算ベースでみると、ピーク時から4割以上減っている。企業もODAにあまり関心をもたなくなってきている。

そして、いわゆる「PCI事件」(コンサルタント企業「パシフィックコンサルタンツインターナショナル:PCI」が、ベトナムのODAプロジェクト受注をめぐりベトナム側に賄賂を渡したことが発覚した事件)の影響は大きい。これは二重の意味であってはならない事件だった。すなわち、まず贈賄は断じてあってはならないということ。もう一つは、日本のODAとともに歩んできたともいえるPCIという会社でこういった事件が起こったということの重大さだ。今後はこうしたことが起こらないように、外務省としても全力を尽くしていく。

ODAの額が減っているが、日本経済の状況も思わしくない。国内では物価高、ガソリン高が市民を直撃している。市民の間に「ODAどころじゃないでしょう」という実感があることは政治家も認識している。ただ、ODAは日本の限られた外交手段である。ODAの額の問題は、政治レベルでしっかり議論していただきたい。

—今年はアフリカ開発会議やサミットがあり、国際開発の分野で日本の存在感をアピールできた年だが、この成果をどう今後につなげていくか。

今年のTICAD IVと北海道洞爺湖サミットでは、アフリカ開発がかつてないほど日本で注目された。私は今年1月から外務省のアフリカ審議官となり、TICADとサミットに臨んだが、TICADはアフリカ側にも好評だった。欧米も、日本はよくやってくれたとの印象をもっている。アフリカ各国に駐在している大使からは、先方政府との対話がスムーズにいくようになったという声もある。

サミットでも、アフリカ問題についてこれまでに比べてもより実質的な議論ができたと思っている。これらの会議で打ちあげたものを、これから着実に実施していかなければならない。

企業とODAの“再会”を

—日本のODAの当面の課題は何か。

官民連携が一番のポイントとなる。アフリカ支援に限らず、TICADの準備段階で、企業の意見を集約していただいた。それをもとに官民連携の方針を決め、すでに商社などの企業に説明を始めている。

企業の話を伺うと、かなり具体的な国や分野への関心を持っていることがわかった。ただ、進出のリスクやコストが高く、最後の踏ん切りがつかないケースが多いようだ。例えばODAで道路や港などのインフラが整備できれば、企業のリスクも軽減される。一方、アフリカが望んでいるのも企業からの投資だ。経済成長を達成するためには、企業の進出を支援できるようなODAの使い方も考えなければならない。

—企業のなかには、ODAに関わってもあまり儲からないし、コンプライアンスなどの観点からリスクを感じているところも多い。

もともと日本のODAは官民連携がなされていた。例えば、タイの東部臨海地域では、ODAで工業団地を造成し、電力、水などのインフラを整備、人材育成も行った。その結果、日本企業がタイに進出し、タイ経済発展の重要な要素となった。これはODAと企業が連携した成功例だ。日本だけでアフリカすべてをカバーできるわけではないが、こうした事例が一部でもできればいい。すでに、アフリカには日本から複数の企業が参加した官民ミッションが派遣されているが、企業と連携して、アフリカでいい案件を作り上げていきたい。もちろん、他の地域でも官民連携は進めていきたい。

残念なのは、企業がODAに関心を失っていることだ。企業からみれば、最近のODA案件は魅力がない、制約が多いなどといわれているが、われわれも企業とのコミュニケーションを緊密にしていきたい。アフリカを舞台とした企業とODAの“再会”を期待したい。
 
新JICAは迅速できめ細かい支援を

—新JICAが誕生したが、その役割をどう認識しているか。

これまでのODAの体制では、JICAが技術協力と無償資金協力の実施促進、外務省が無償資金協力、JBICが有償資金協力を担当していたが、この3つの制度を一つ屋根の下で行うべきだという議論は以前からあった。今回、これら3つの手法を一つの援助実施機関が行うことになったことで、より迅速できめの細かい支援が期待される。

JICAにおける体制も、国を中心に組織編制が行われている。それによって案件形成から実施後の維持管理まで、一つの部署で一貫して見るようになることはメリットだ。

—対外的には新組織をどのようにアピールするか。

JICAはこれまで何十年も技術協力の機関として実績を積み上げてきた。JICAの名前は海外でも通っている。JICAが円借款も担当するということで、組織が重きをなすことにつながり、より有効な援助を実施していけるのではないか。

現場での成果知ってほしい

—来年度ODA予算の重点項目は何か。

外務省は、来年度予算の概算要求では今年度比13.6%増の5,006.2億円を要求している。無償資金協力については160億円増(10.1%)の1,748億円。JICAは6.5%増の1,638.4億円。分担金・拠出金は57.3%増の804.6億円となっている。このなかには、日本が提唱して2002年に設立された「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」への拠出240億円が含まれている。

—ODAをみる国民の目は厳しい。ODAの必要性について、どのようなアピールを考えているか。

まずはODAを担当している外務省、JICAなどの行政機関、参画している企業やNGOなどが緊張感をもって仕事をしていくことが必要だ。同時に、広報に力を入れていきたい。残念なことに、ODAの成果が出て相手国の人たちが喜んでいるという事実は、マスコミではあまり報道されない。日本がさまざまな国で行っている経済協力の現状と、日本人が現場で汗を流しながらがんばっている事実を国民の皆様にもっと知ってもらいたい。マスコミが記事を書かざるを得ないようないい情報を提供していくことも外務省の役割だと思っている。

—経済協力分野での経験が長いが、これまでの仕事で印象に残っていることは何か。

1986年から88年に南東アジア1課で勤務し、カンボジア和平を担当し、カンボジアと出会った。その後、91年から93年には中国課に配属され、モンゴルを担当した。この2国には親日的な国になってほしいと思い、一生懸命無償資金協力をしたことを思い出す。最近、両国の国内で産業が興り、日本と両国との関係が深まっているのを見て、大変うれしく感じる。日本の外交は、短期間の利益を求めるのではなく、長い間をかけてじっくりやるところに特徴がある。

また、97年、タイに公使として赴任した翌日に、バーツが急落し、アジア経済危機が始まった。そのときはJICA、海外経済協力基金、日本輸出入銀行、JETROの所長と集まり、日本の支援策を話し合い、政策パッケージを作り実行に移していった。これが、現在世界各地に広がっている「ODA現地タスクフォース」の原型にもなった。日本の関係者がオールジャパンでしっかりコミュニケーションをとったことで、いい結果が出せたと思っている。

今日のテーマとなっている官民連携にしろ、新JICAにしろ、うまくいく秘訣は関わる人たちとの間における「コミュニケーション」だと思っている。コミュニケーションを密にして仕事のスピードを上げていき、ODAの効果を強調していきたい。

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(外務省資料)

2008.10.09

【インタビュー】新JICAへの期待(日本財団会長 笹川陽平 氏)[2008.10.09]

日本の国際協力に自信を
国内広報と海外広報の拡充が必要

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日本財団会長 笹川 陽平 氏

[プロフィール]
1939年、東京に生まれる。明治大学政経学部卒。財団法人日本造船振興財団(現海洋政策研究財団)理事長などを歴任、05年より現職。04年に読売国際協力賞、07年に国際ガンジー賞など受賞歴多数。世界保健機関(WHO)のハンセン病制圧特別大使、日本政府のハンセン病人権啓発大使などを務める。著書に「世界のハンセン病がなくなる日」(明石書店)、「あの国、この国」(産経新聞社)など。

ハンセン病の征圧や開発途上国での貧困削減に向けた取り組みを積極的に展開する日本財団会長の笹川陽平氏。“援助は現場を知ることが重要”と、年の3分の1は途上国を中心に世界中を回っている。この笹川氏に、日本外交の課題や各国で聞かれる国際協力への評価、新JICAの役割などについて聞いた。

根源的な問いに答え必要

日本の国際協力や国際貢献を考えた場合、まずは政治家もわれわれ国民も「どうして援助をしなければいけないのか」という根源的な問い対する回答を導き出すことが必要だ。国民サイドから見れば、緊迫した財政状況の中で開発途上国に援助をしているが、それが政治家やODA関係者の懐ばかりを暖め、貧しい人々には届いていないという疑念がある。国際協力をやるやらない、増やす減らすの議論に終始するのは、その意義が国民に理解されていない、あるいは説明できていないことに起因しているのではないか。新JICAも含め、“根源的な問い”に答えていくことから始めなければならない。

この問題について私は、“世界があっての日本”というあたりまえのことを、われわれ日本人は見失っているのではないかと感じている。子どものころから、学校では赤や青に塗られた日本が中心にある世界地図ばかりを見ているからでもなかろうが、世界の中心は日本だと錯覚してしまっている。現実はそうではない。日本がこうして豊かに生活できるのは、世界との関係の上に成り立っている。したがって、応分の国際協力・国際貢献をするのは、ごく当然のことではないだろうか。

国民も政治家も、安全保障と国際協力を柱とした外交が、この島国日本が生きていくために重要だということを再認識しなければいけない時代だ。

外交の劣化招く一律削減

昨今の外務省をはじめとした政治に対するバッシングの中で、首相外交や大臣クラスの外交だけではなく、民間レベルの外交も含めて劣化している。開発途上国のみならず、アメリカやヨーロッパ諸国といった先進国の要人の往来が減っている。これは在外公館でも同じ状況のようだ。

各省予算は、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を図るために、マイナス・シーリング(概算請求基準)が設けられている。ODA予算も90年代と比較し、すでに40%近くが削減された。こうした状況下で、限られた予算を効果的に使う努力が見られるのは良いことかもしれない。しかし、何でも一律にカットしていくことは、日本外交の劣化や弱体化を招く。

今年1月、産経新聞のオピニオン面に、「日本料理は最高の外交手段」と題した論説を寄稿した。ここで私は、世界的に評価が高まっている日本料理を外交に生かすべきだと主張した。しかし現実は、給与面などで折り合いがつかず、大使公邸で日本食をつくるのは外国人というケースが目立つ。これでは日本の文化外交も心もとない。慶應義塾大学の阿川尚之教授が外交官としてワシントンに駐在していた当時、ラムズフェルド元国防長官が忙しい合間を縫って、大好きな“スシ”を食べに公邸に来たことを本で紹介している。形式的な会合よりも、こうしたところから信頼関係が生まれるものだ。公邸料理人は、公費から給与の一部は補填されるが、「大使が個人的に雇った随伴者」という位置付けだ。私はこうしたことに税金を使うことは無駄だとは思わない。不必要な道路をつくり、さらに維持費に莫大な税金を投入するより、むしろこうしたことにこそ使われてもいい。何が必要で何が無駄なのかをもう一度考えてみる必要があるだろう。

また、国際協力は外務省やJICAだけで行う時代ではないと考えている。NGOや大学、企業、財団といった民間のアクターを含め、「All Japan」で国際協力を展開していくことが重要だ。そうした意味で官民連携という言葉を耳にするようになったことは高く評価したい。官と民が連携を深めていくためには、まず官が民の目を持つことが重要だろう。民間からの意見や情報を吸い上げ、官ができることを官が、民ができることを民がやることが大切だ。民のために仕事をするのが官という当たり前の認識がなければ、官民連携という大きな協力関係はつくれない。

“Japan Way”を確立せよ

これから新JICAが日本のODAの実施部分で、特に重要な役割を担っていくことになる。ここで大切なのは、日本がこれまで行ってきた協力に自信を持つことであり、日本独自の協力をするアイディアは、われわれの生活の中にたくさんあることを認識すべきだ。

これは私の苦い経験だが、十数年前、日本財団はプライマリー・ヘルス・ケアの普及を目指して、バマコ・システムを使い医薬品の支援を行ったことがある。これは、医薬品を途上国に供給し、それを実費で販売、その売り上げでまた新たな医薬品を購入するというシステムだ。上手くいけば、一度医薬品を支援するだけで、あとは回転ドアのように医薬品の供給が継続されるはずだった。22カ国で約2,700万ドルを投入したこのプロジェクトは、ものの見事に失敗した。このバマコ・システムは、当時、国際社会では最新のアプローチとして注目されていたものだ。

この反省から、「薬が届かない人に届けるにはどうしたらいいか」を再検討し、西洋医薬品の10から20分の1と安価な伝統医薬品を活用しようという、現在の取り組みにつながった。またこれを配布する方法として、モンゴルでは日本に昔からある「置き薬」という知恵を試した。これが定住先を持たない遊牧民には非常に効果的だった。

スリランカでも日本の技術が大きく貢献した例がある。同国の人々はよく魚を食べる。日持ちさせるために干物に加工されるのだが品質が悪く、多くを輸入に頼っていた。そのため貴重な外貨が干物に消えていた。そこにNISVA(技能ボランティア海外派遣協会)からシニアボランティアが派遣された結果、質の高い干物が作れるようになった。それだけで、干物の輸入量が減り、外貨を節約することに成功している。こうした開発途上国に役立つ技術や経験は、日本にたくさんある。

欧米各国の援助は、「こうすべき」という考えの上に成り立っていることが多い。サステイナブル・ディベロップメントなど、耳あたりのよい言葉に踊らされ思考が停止していては、よい援助は生まれない。これまで日本が行ってきた協力は、現地では高く評価されている。これは日本人が現地の人々と目線をあわせ、共に活動し、共に汗を流し、共に達成の喜びを分かち合ってきたからに他ならない。

私は、こうした日本人特有の資質を“ハートウェア”と呼んでいる。相手の立場に立った援助協力ができる世界で唯一の国が日本ではないだろうか。新JICAには、ハートウェアに日本の経験や技術を加え、“Japan Way”というものを確立してほしいと考えている。

心くすぐる広報を

現在世界中に派遣されている2,000人を超える青年海外協力隊をはじめ、シニア海外ボランティア、専門家など、現場レベルで活躍している人たちがいる。これは貴重な財産だ。こうした人たちを、もっと国内外で広報する努力が必要だ。せっかく素晴らしい活動をしていても、各国の在外公館やJICA事務所が把握していないこともある。こうした事例が埋もれてしまっていては、実にもったいない。

こうした事例をヒューマンストーリーとして、もっと積極的に発信すべきだろう。「私はどうしてここに来て、何を目指して何をやっているのか」といった日本人に焦点を当てたもの。あるいは、「私はこんなことに困っていたが、日本からの援助でこんなに変わった」という、途上国の人々から見たストーリーがあってもいい。大切なのは、日本や外務省、JICAといった無機質なものを広報するのではなく、あくまでその中心にいる人間・パーソナリティーに焦点を当てることだ。結果として、その後ろに組織や国があるという広報でなければ人々の心には響かない。

こうしたヒューマンストーリーを国内に発信していく時には、地域に根ざした情報として、大手新聞の県内版や地方紙を意識して発信をしていくことも重要だ。最近では、青年海外協力隊の応募者が一時期よりも減少していると聞く。日本には途上国の人たちのために役立ちたいという志の高い若者は多い。そういう人たちの“心をくすぐる”広報が必要だ。そうすれば、国際協力に対する国民の理解や参加を促進していくことにつながる。

また、開発途上国での広報も不可欠だ。特にその国を動かすようなプロジェクトの場合、大臣クラスではなく、大統領や国家元首に対するアプローチが重要になる。そこに地元のメディアも積極的に活用する。こうした機会を積極的につくることが、在外公館や新JICAの在外事務所に求められている。

【インタビュー】新JICAへの期待(衆議院議員 山内康一 氏)[2008.10.09]

シンクタンク的機能の強化に期待
実施機関から実施促進機関へ

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衆議院議員 山内 康一 氏

[プロフィール]
1973年に福岡県に生まれる。96年に国際基督教大学教養学部国際関係学科卒、04年にロンドン大学教育研究所修士課程(教育と国際開発)修了。国際協力機構(JICA)、NPO法人ピースウィンズ・ジャパン勤務を経て、05年9月に衆議院議員に当選(候補者公募)。現在、自民党で国際NGO小委員会事務局長、改革実行本部幹事、国際局次長などを務める。

国際協力機構(JICA)とNGOという立場から、ODAの前線で活躍してきた経験を持つ山内康一氏は、ODAの現場をもっともよく知る国会議員であり、“JJ統合推進派”の一人として知られている。この山内議員に、これまでの経験を踏まえ、統合のメリット、新JICAの可能性や期待することなどを聞いた。

小規模円借款の可能性

この10月、国際協力銀行(JBIC)の有償資金協力業務(円借款)がJICAに承継され、新JICAが誕生する。私は、この統合の推進派の一人だった。というのも、もともと円借款業務を行ってきた海外経済協力基金(OECF)とJICAは、審査機能や評価機能、あるいは調査機能など、かなりの部分で重複していたからだ。当然、統合した方が効率的であるし、“相乗効果”も生まれるだろうと考えていた。

ただこれまでにも、JICAとJBICの連携というものはあった。JICAで開発調査を行い、それを円借款につなげる。あるいは、JICAの無償資金協力で首都にセンターをつくり、それをモデルケースに、円借款を活用して全国に展開するといったことは、10年も20年も前から行われてきた。こうした連携をより強固にするために、そしてまったく新しい効果を生み出すためにも、やはり統合は必要だ。

今年日本でアフリカ開発会議やG8北海道洞爺湖サミットが開催され、アフリカ支援に注目が集まっている。今後、この地域に対して円借款を展開していくときには、JICAが持つネットワークや知見が生かされるだろう。JBICはJICAと比較し、在外事務所の数が圧倒的に少ない。これまではこうした制約もあって、なかなか円借款の地域的拡大は進んでいなかった。 

特定地域に円借款が集中しがちな要因はほかにもある。“ロット”の問題だ。つまり、1案件あたりの規模が小さなものでも数十億円と、貧しい国は借りづらいといった側面があった。円借款のボリュームといった特徴が、借り手により、魅力にも障害にもなっていた。そうした意味では、10億円程度の、規模が小さい円借款があってもいい。

今回の統合により、こうした無償資金協力としては大きいが円借款としては小さい、そんな案件をつくっていける可能性が出てくる。これまで小規模の円借款が現実的に難しかったのは、先の事務所の話にも関係するが、人員が少なかったことが一因だ。これまで円借款を動かしていたのは300名程度。この限られた人数で数千億規模の仕事をするには、どうしてもロットが大きくなってしまう。これも、重複する業務を一本化することで、少なからず解消できるだろう。円借款に柔軟性を持たせる意味でも、統合はプラスになる。

スキームベースからの脱却必要

日本のODAのあり方として、私は、あまり短期的な国益を追求しすぎるのはよくないと考えている。短期的な国益の追求は、結果として長期的な国益を損ねてしまうからだ。したがって、資源確保やタイド案件などばかりに目を向けるという発想はよくない。逆に、日本として得意な分野に力を入れていくという発想が必要だ。例えば環境や省エネなど、日本には世界に秀でた技術や経験がある。そうした比較優位がある分野で、「二個間関係をよくする」、「地球環境を守る」といった大局的な視点に立って貢献していくという発想が必要だ。その際に重要なのは、手段に固執しない、とらわれないということ。これまで少なからず、手段に固執する発想があった。これはスキームベースの考え方が影響しているのだろう。JICAでもJBICでも、スキームから入っていこうとする。こうした発想を捨てることが、新JICAを構築していく上で特に重要だ。

目的を達成するためには、円借款なのか、無償資金協力なのか、技術協力なのか、あるいはその組み合わせなのか。さらには、本当にJICAがやることが最良の選択なのかを考えていくことで、NGOや大学、研究機関などに任せるという選択があってもいいし、民間が行っているCSRを側面支援したっていい。こうした個別のスキームにとらわれない発想が広範囲な連携を生む。国際協力のアクターが多様化している現在、“援助手段選択の工夫”が必要になってきている。
往々にして、「NGOや大学は実施能力に不安がある」いった見方には、申請や精算書類などのペーパーワークに不慣れなことが原因となっている。JICAのスキームに自分たちがやりたいことを落とし込めない。逆にそれが上手なのはコンサルタント。彼らは仕組みも内容も熟知しているし、JICAもこうした相手と仕事をする方が楽な場合もあるだろう。ただし、それが質の高い援助とイコールであるとは限らない。新JICAは、今まで以上に、こうした不慣れなアクターに対しても双方向で対話をする機会や姿勢を持ってもらいたい。

将来的にJICAは、ODAの実施機関というよりも“実施促進機関”のような役割を担っていくことが、1つの方向性かもしれない。JICAは全体のフレームワークを考え、適当なアクターに対して資金を提供する。案件監理も、細かな予算執行などに労力を投入するのではなく、事後評価を中心に行っていくことで案件実施の自由度を高めていく。それには、これまでの業務委託という考え方ではいけない。NGOや大学、企業などとパートナーシップを構築していくという発想が重要だ。そうすれば、より少ないコストで質の高い援助ができる可能性が出てくる。

“ムダ撲滅”に向けコスト意識を

現在、ODA予算は非常に厳しい状況にある。私はこれ以上、減らすことが良いことだとは考えていない。むしろ増やしてもいい。ただ前提として求められるのは、コストに対する意識だ。外から見れば、まだまだJICAもJBICもコスト意識は低いし無駄が多い。

日本に限らず、世界の援助業界全体にいえることだが、特権階級意識というものがとても強い。ある国際機関の職員は、いまだに航空機での移動にファーストクラスを使っていると聞く。そこにはいろんな理論や反論があるのかもしれないが、少なくとも日本の援助機関はそうであってはならない。民間企業では、本社の課長や部長クラスでもなかなかビジネスクラスにさえ乗れない時代。コストに対する意識と工夫がなければ国民の理解は得られない。

夫婦でJICA職員である場合には、2人そろって同じ在外事務所に赴任できるよう配慮する。これはほんの一例だが、こうすることで住居手当は半分になる。赴任する国にもよるが、これだけで年間で数百万円の節約になる。これを積み重ねれば大きな金額になるし、夫婦で赴任できるということは、当人にとっても幸せなことだろう。

もうひとつ例を挙げれば、休暇制度についても工夫、見直しの余地がある。外務省やJICAでは、在外勤務の場合、年に1回、1カ月程度の休暇が認められている。これは、海外がまだ遠い異国の地であった時代、航空機ではなく船旅だった時代の発想に立った休暇制度だ。もちろん、勤務状況が過酷な国や地域では、多少は考慮されてしかるべきだとは思う。しかし職員全体の休暇制度を見直すことで、人を増員したのと同じ効果が見込める。コスト意識や工夫がないところからよい援助は生まれない、ということを新JICAは真摯に受け止めてほしい。

世界に向け日本の知的ソフトを発信せよ

私が新JICAに期待したいのは、シンクタンク的な機能を強化し、日本の援助ポリシーを世界に向けて発信していくということだ。国際機関でもない、他のドナー国でもない、日本独自の視点というものをこれまでの経験から導き出し、発信していく。もちろんJICA事業にフィードバックしていくことも重要だろう。世界に認められる開発課題や開発目標といったコンセプトやモードをつくることでは、残念ながら日本は、まだまだ力不足だ。それでも「人間の安全保障」など、最近ではそうした場面で日本がプレゼンスを発揮する例も出てきている。

フランスでは、過去30年ほどかけて中近東研究のシンクタンクを育ててきた結果、現在では世界中からこの地域に関する情報は、すべてパリに集まるようになった。

新JICAには、新たに研究機能が加わることになった。開発援助というフィールドで、あるいはアジアという枠組みで、日本にシンクタンクのセンターのようなものがつくれたら大きな財産となる。JICAの研修スキームを活用し、海外から研究者を招聘することも可能だ。研究者を抱え込むというよりも、研究者や研究機関同士のネットワークをつくり、その “ハブ”的な存在となることを目指すことが重要だ。そうして、“知的なソフトで戦えるJICA”というものをつくってほしい。

2008.01.05

『マリ・クレール』編集長 生駒芳子さん インタビュー[2008.1.5]

ファッション誌で“エコ・リュクス”なライフスタイルを提案

『マリ・クレール』編集長 生駒 芳子さん
Ikoma Yoshiko
『マリ・クレール』編集長 生駒芳子さん
『マリ・クレール』編集長。兵庫県宝塚市出身。東京外国語大学フランス語学科卒。
大学時代にはカメラのサークルに所属。卒業後は旅行雑誌に就職。
その後フリーとなり、ファッション誌や新聞などでファッションやアートに関する記事を執筆。
その後、『ヴォーグ』、『エル』の編集部を経て現職。

女性が地球の未来をつくる

『マリ・クレール』という雑誌は、世界27カ国で出版されているのですが、どのエディションでも社会問題を扱っています。それは、本国フランスの『マリ・クレール』の精神でもあるのです。ところが日本では、ファッション誌で社会問題を扱うことは敬遠されがちでした。でも私は、時代は変わってきているし日本でも本国のような誌面づくりをしたいと思い、“ファッション誌”に“社会問題”というエッセンスを加えることにしました。

そして去年1年間、誌面で展開したのが「プラネット・キャンペーン」。これは、環境問題をはじめ、私たち一人ひとりが地球的規模で考え行動する時代になったことを伝えたいという気持ちで始めたものです。
「ラグジュアリー・ライフを楽しみたい、しかしエコも大切」と考えている女性に、「エコとリュクス(=贅沢)のバランスをとるライフスタイルこそラグジュアリー・ライフ」だと訴えてきました。そして、地球の未来のために『マリ・クレール』ができることは何かを考え、私たち自身も2つのアクションを起こしています。

続きは『国際開発ジャーナル』2008年1月号に掲載!

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