節目近づく日・バングラデシュ外交
日印協力が一つのカギに
衆議院議員 自由民主党 井林辰憲(いばやし・たつのり)氏
1976年生まれ。京都大学大学院工学研究科を修了した後、国土交通省に入省。沼津河川国道事務所調査第二課長や中部地方整備局地域道路課長などを歴任。2012年、衆議院議員に初当選。環境大臣政務官、内閣府大臣政務官などを歴任し、現在3期目。日本・バングラデシュ友好議員連盟などの事務局長を務める。京都大学工学部非常勤講師
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※本記事は『月刊 国際開発ジャーナル2021年7月号』の掲載記事です
相互訪問で関係強化に尽力
―日本・バングラデシュ友好議員連盟の設立背景と事務局長に就任したきっかけを教えてください。
この議連はバングラデシュとの友好関係の構築に尽力した故・早川崇元労働大臣のリーダーシップの下、設立された。同氏は1970年、サイクロンの被害を受けた東パキスタン(現、バングラデシュ)を支援する目的で街頭募金活動を実施していたほか、独立の際には日本政府に国家承認を促していた。設立以降、議連は拡大し、現在は自由民主党と公明党の中堅議員を中心に50人程が所属している。
私は麻生太郎副総理にお声掛けいただき、2020年2月に事務局長を拝命した。指名されたのは、同国でインフラ関係の政府開発援助(ODA)が数多く実施されている中、国土交通省出身でインフラに関する知見があったからであろう。偶然にも在日バングラデシュ人の会合で挨拶を依頼されるなど、同国とはご縁があると感じていた私は依頼を快諾し、それ以来、日・バングラデシュ関係の強化に取り組んでいる。
―同議連の活動実績は。
設立以降、独立記念日には必ずお祝いのメッセージを送っている。新型コロナウイルス感染症が拡大する前は、独立記念日に国会議員も派遣していた。このほか、年に複数回、先方政府の大臣を日本に招き、会合を持っていた。大臣との会合では道路などのインフラ敷設や「ベンガル湾産業成長地帯(BIG-B)」構想など、開発に向けた施策に関して意見交換を行っている。そうした中では、バングラデシュ東部には隣国ミャンマーから100万人もの難民が流入している問題の解決について、「日本がイニシアチブを発揮してほしい」といった要望も出されている。
同国とは2022年で外交樹立50周年を迎える。新型コロナが終息すれば、議連として、友好関係強化のために現地を訪問したいと考えている。
日本にとって有望なマーケット
―バングラデシュは優秀なIT人材を輩出するなど、可能性を秘めた国の一つです。
親日国であるバングラデシュは穏健な民主主義国であり、情勢は安定している。貧困層は存在するが、1億6,000万人の人口を抱えており、経済発展を遂げて中間層が台頭すれば、日本企業にとって有望なマーケットになるだろう。
日本は同国にとって、最大のODA供与国であり、発展を後押ししてきた。新型コロナの発生後は「新型コロナ危機対応緊急支援円借款」を供与し、同国の財政を下支えしている。今後も同国の発展に全力で臨むべきだ。
―これからの協力の在り方は。
日本単独のODAは金額や規模の面で限りがあるのは承知している。私はインパクトを大きくするためには日印協力が一つの形態になると考えている。
バングラデシュは日本だけでなく、歴史的にインドとも関係が良好だ。そうした関係を背景に、日本が橋の建設でODAを供与する傍ら、インドが橋までの道路を敷設する支援を行うといった連携事業が自然発生的に数多く組成されている。インドは自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の一角を占める重要国であり、日本の国益にも資する。日本の外交戦略を基に総合的かつ戦略的な支援を展開していく必要があろう。
本記事は『月刊 国際開発ジャーナル2021年7月号』に掲載されています