【国会議員の目】衆議院議員 自由民主党 松本 剛明氏

自由、民主、法治の価値を世界に
優先順位決め、ODA拡充でリーダーシップを

衆議院議員 自由民主党 松本 剛明氏
1959年東京都生まれ。東京大学法学部卒。旧(株)日本興業銀行、父・松本十郎防衛庁長官秘書官を経て、2000年6月、衆議院議員に初当選(現在8期目、兵庫11区=姫路市)。旧民主党政調会長、衆議院議院運営委員長、外務大臣を歴任。2017年、自民党に入党後、衆議院外務委員長、党外交調査会幹事長。2022年、党国際協力調査会会長として第1次提言をとりまとめ。JICA議連でも活動

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本記事は『月刊 国際開発ジャーナル2022年10月号』に掲載されています。

 

保健、島嶼国、アフリカを重視
 ロシアのウクライナ侵攻は、看過できない問題だ。しかし、国際場裡での各国の対応を見ると、われわれが考える、自由で、民主的で、人権が尊重される法治は、必ずしも国際社会共通の価値観とは表明されていない。
 人類が長い間かけて勝ち得てきたこうした価値観は世界で共有されるべきものであり、そのための環境を作っていきたい。阻害要因があるのであれば、日本がこれまで展開してきた国際協力、政府開発援助(ODA)をある程度、見直してでも、その解消を模索する必要がある。2022年5月の自民党国際協力調査会の第1次提言は、こうした問題意識に立って作った。
 ODA卒業国を含め国際協力の拡充を求める以上、足元を徹底的に見直し、優先順位を付ける必要がある。その意味で「提言」では、重点的に取り組むべき分野として、日本がこれまで取り組み、評価を得てきた保健衛生分野を挙げた。重点的に取り組むべき地域として、太平洋島嶼国とアフリカを挙げた。協力を重ねてきたアジアの国々も重要だが、今まで以上に島嶼国やアフリカへの目配りが必要だとあえて特出しをした。
 島嶼国の中から中国と安全保障の分野で連携する国が出てきたり、「債務のわな」問題がスリランカで顕在化したりする中、日本の役割が従来以上に問われている。

評価の高い日本の協力
 私自身もアフリカをはじめ協力の現場を訪れてきたが、現地では、日本人が入って実施した協力のほとんどが、人・物・金のバランスがとれていて非常に高く評価されている。教育や保健などに対する感覚が鋭いためか、政治の分野で女性が活躍する国ほど、日本の協力への評価が高い印象もある。海外協力隊、国際協力機構(JICA)事業など、人が協力の中核になっているのが、他の国とは違う「日本らしい」協力である。
 今年5月、南スーダンで、日本の無償資金協力で建設された橋が完成し、記念式典が開かれた。式典には、関係が良好とは言えないサルバ・キール大統領とリヤク・マシャール第一副大統領がそろって出席した。日本の大きな貢献である。式典の写真は多くの欧米メディアにも掲載された。一方で、国際的に高い評価が日本の国民に十分浸透していないとも感じる。
 そこで「提言」では国際協力の戦略的な展開を訴えた。「提案型の協力」とは、好事例の共有も含めた共通の協力メニューを策定し、関係者誰もがそれをもって被支援国の要請を引き出そうとするもの。マダガスカルなどで広がった「手洗いソング」による啓発キャンペーンもそうだ。
 地方自治体による協力もいい。高知県がJICAとともに途上国の保健衛生に関するプログラムを実施した。途上国の場合、政府が現場を預かるケースも多く、自治体の経験が役に立つ。自治体の方々にも最近の政策や好事例が共有されれば、途上国とのネットワークもさらにレベルアップするだろう。

ODA倍増で存在感は圧倒的に
 今後、投資支援により企業の海外進出が増えれば、日本の利益となり、国民の理解も増すだろう。
 日本がODAの規模を現在の倍のレベル、量の面で主要国とそん色ない水準に引き上げれば、質の高い協力を進める我が国の存在感は圧倒的なものになり、国際社会でリーダーシップを発揮できる。