不思議な話 -コンサルタントの入札価格査定がなぜ不正防止の歯止めになるの?

ODAトラウマのPCI事件
外務省は4月1日からODAコンサルタントを対象に、技術以外に価格評価の要素を盛り込んだ「技術・価格評価(QCBS)方式」を適用することを明らかにしました。技術と価格の評価は80:20で、技術点が一定の水準を満たさない場合は失格となります。

従来は技術、知恵を売るコンサルタント調達ということで、技術プロポーザル評価が中心でしたが、世間を騒がせた対ベトナム円借款事業のコンサルティング業務をめぐって、PCI(パシフィックコンサルタンツインターナショナル)による贈賄事件、さらにベトナム側での収賄事件が発生し、双方ともに有罪が確定しました。すでにPCIは解散し、倒産しています。この事件が今回の価格評価を導入した背景をなしているとみられているのです。

薄利なODAコンサルタント業
 つまり、贈賄を可能にしているのは、コンサルタント側が儲けすぎて資金的な余裕があるからだ、という判断が政府側にあるように見受けられます。資金的な余裕はコンサルタント入札がプロポーザル(技術)中心で、価格評価が甘いからだという見方に立っています。
 しかし、実際は企業が狙いをつけた案件を落札しようとすると、もし工作資金(ワイロ)が必要になれば、銀行から借金してでも資金調達します。これは、これまでのワイロ研究でも明らかになっています。通常の仕事が赤字であればあるほど、企業はそれを挽回するためにも借金して強行突破しようとします。だから、コンサルタントのODA入札価格が甘い、という判断は一種の政策的なもので、実態を反映したものであるかどうかは疑わしいですね。

官民の情報チャンネル設置が最善の不正防止
 見方によっては、減少傾向のODA予算のなかで、価格を切り詰めるべしという行政的な命令が出回っていますから、むしろ、その一環としてコンサルタント調達条件の変更を行ったものではないかとみられています。したがって、価格を査定することが果たしてコンサルタントの不正防止に効果的かどうかは疑問視されています。
 そんなことより大切なことは、外務省(在外公館も含め)や実施機関(海外事務所を含め)に、途上国側からのワイロ要求攻勢を探知・予防するコンサルタントとの情報チャンネルを設置することでしょうね。真面目なコンサルタントは日本政府と相手国政府との間でワイロ要求の処置に苦悩しています。処置とは、対応を間違うとその問題が外交問題に発展するのではないかと、二国間の谷間で悩むことを意味します。
とにかく、政府とコンサルタントとの情報交換のチャンネルができると、政府は悪質なワイロ談合もキャッチできる可能性が高まり、大きな歯止めになると思います。皆さん、いかがお思いですか。政府は責任回避に終止しているようですが、それではODAワイロ問題の根本的解決は図れないでしょうね。