Vol.1 インドの学校でボランティア

皆さんからの投稿記事をご紹介するコーナーです。
実践中の国際協力アレコレ…。どんな内容でも結構ですので、気軽にどしどしお寄せください!

第一回目は、弊社スタッフの国際ボランティア回想録です。

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国際開発ジャーナル社2年目の新海美保です。2004年夏から1年間、インドに滞在していました。目的は、「国際ボランティアをすること」。学生時代、月1回発行の大学新聞の編集に携わる中で、いわゆる開発途上国や紛争地域の問題解決を目指して奮闘する日本人や外国人に話を聞き、「へぇ~面白そうだな~。でも正直よく分かんない。自分で行ってみよ」と直感したのが、きっかけ?です。 そんな経緯でインドに行くことになったわけですが、しばらくすると、よくも悪くも自分の想像を絶する世界が広がっていることに気付かされました。 私は、ある国際NGOを通して、「Rakum school(ラクムスクール)」という、人々の寄付で成り立っている私立学校に配属され、簡単な英語や日本文化、美術、音楽の授業などをしていました。
生徒は約150人(といっても赤ん坊からおじさんまで全部生徒!)。孤児だったり、親が出稼ぎに出ていて育ててもらえないなど、さまざまな事情を抱えてこの学校にやってくる子どもたちは、校内に併設された寮で、食事の支度から洗濯、掃除、下の子の面倒まで、資金面以外はすべて自分たちでやりくりしながら生活しています。
そんな彼らと同じ寮で生活していた私は、当初、日本では見たことのない大小さまざまなタイプのゴキブリや猫のように大きなねずみに悩まされていましたが、慣れというのは恐いものです。そのうちあまり気にならなくなりました。


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朝・昼・夜3食ほぼすべてカレーという毎日の食事や、冷たい水のシャワー(時々お湯)、衣服の手洗い洗濯、日本とは異なる習慣やマナーも、だんだん普通になってきます。でも、どうしても慣れることができなかったのは、子どもたちから聞かされる過去の苦労話の数々です。
近年、インドは、IT産業を中心に飛躍的な成長を遂げていますが、その恩恵を受けているのは中産階級以上の人々に限られているのが現状だと思います。少なくとも私と暮らしていた子どもたちの多くは、低いカーストの出身で貧しい家庭に生まれ、教育の機会にも恵まれず、華々しいインドの発展とは無縁のところで生きてきました。


ココナツを売る男の子。インドの子どもはよく働く

ある15、6歳の少女は、貧しさから酒に溺れた父親が蒸発し、スラムで売春をしながら暮らしていました。また、ある20代の女性は目が見えないことから十数年間ほとんど外出させてもらえず、これまで一度も学校に行ったことがありませんでした。生まれたばかりの頃に学校の門の前で置き去りにされた少女もいます。目の前で両親の自殺を目撃した少年や、殴られたりナイフで傷つけられた跡が体に残っている少女、ミャンマーから逃げてきた子どももいました。

物乞いをする女の子。カメラを向けるとかわいい笑顔を見せてくれた

10代、20代での強烈な体験は、性格形成にも影響してしまいます。普段は元気で皆仲良くやっているように見えても、突然泣き出したり、暴れ出したり、他人を傷つけることがあり、情緒不安定になってしまうのです。
彼らを追い込んだ諸悪の根源は、貧困だけではないかもしれませんが、格差や貧しさがもたらす負の遺産は、明らかに何の罪もない子どもたちの将来をうばっていました。
ラクムスクールに入って、子どもたちの環境は以前より少しは改善されたのかもしれませんが、彼らを取り巻く状況はまだまだ厳しいものがあります。
彼らの願いは、「家族と一緒に幸せに暮らすこと」。
彼らのような子どもたちが幸せな生活を送れるよう、自分に何ができるのか、これからも考え行動していきたいと思います。

ドイツ人のルームメート(左)と筆者(中央)。右はラクムスクールのラクム校長