【国会議員の目】衆議院議員 立憲民主党 神津 たけし氏

現場主義で効果的・戦略的な協力を
「選択と集中」は各国の実情を踏まえて

神津たけし氏は、高校時代から米国へ留学。その後、ウガンダで起業し、国際協力機構(JICA)やアフリカ開発銀行のスタッフとして国際協力の現場で実践を続けてきた。開発協力大綱の改定など国際協力の転換点への思いと理念を聞いた。

衆議院議員 立憲民主党 神津たけし氏
1977年神奈川県生まれ。政策研究大学院大学(GRIPS)修了。国連日本政府代表部、国連開発計画にてインターン。国際協力機構(JICA)企画調査員(ケニア、ルワンダ、南アフリカ駐在)、アフリカ開発銀行(AfDB)運輸交通インフラ・アドバイザー(チュニジア、コートジボアール駐在)を経て、2021年、衆議院議員に当選(1期目)。衆議院国土交通委員会委員、災害対策特別委員会理事、党国際局副局長、党政務調査会長補佐。JICA議連、ユニセフ議連などに所属
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容易ではないODA予算倍増
 政府開発援助(ODA)の倍増を求めて、私自身もJICA議連の一員として、外務省や財務省への要請にも加わっている。しかし、国際情勢の変化や日本の人口減少の中、自国のことに費やさなければいけないことも多く、ODAの倍増は容易ではないと思っている。
 経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)は、各国が国民総所得(GNI)の0.7%に相当するODAを拠出するという目標を設定している。2021年度の日本のODA予算はGNI比0.34%で、目標のほぼ半分となっている。世界全体のGDPに占める日本の割合は、1995年時点は17.6%だったが、2021年は5.2%までに減少した。2030年は4.4%、2060年には3.2%にまで減少するとの予測もある(※)。世界の開発援助における日本の拠出割合も減っていくだろう。
 国連の分担金もGNIによって決まるから、国連における日本の存在感も小さくなる。こうした中で日本の存在感を維持するには、開発のための限られた予算を有効に、戦略的に使っていかなくてはならない。
 必要なのは、①相手国の成長に加え、日本の成長にもつながる開発協力、②日本のシンパを増やしていくことにつながる開発協力、③日本の評価につながる相手国の生活向上、の3点のバランスであり、そのための「選択と集中」だ。

「提案型」への転換の前に
 今回の開発協力大綱の改定に関し、これまでの相手国からの要請を待って行う「要請型の支援」から、日本が事業内容をメニューから提示する「提案型の支援」へ転換するという議論がある。協力相手を同列のパートナーとし、相手のペースに合った協力をするのが、他国や他機関とは違う日本の協力の強みであり、成果もあげてきた。しかし、これまでの「要請型」でさえ、相手がプロジェクトに積極的でないときは、成果が見えないこともあった。提案型の支援となれば、先方のオーナーシップややる気というのものがさらに測りづらくなるところがあるだろう。提案型への移行よりも、やる気のある国には予算を多くつけるというようなやり方の方が、プロジェクト終了後に成果が残るのではないか。
 また、プロジェクトの成果指標の設定や評価の仕方も変えていく必要がある。現在のJICA事業の評価は、コンサルタント企業に委託して実施しているが、費用はJICAの負担だ。そして、ほとんどのプロジェクトがおおむね成功したように書かれている。より独立した形で、定量的に評価することも必要だ。

=地元で政策を訴える神津氏

大綱改定に「現場の声」がない
 「選択と集中」で重要なのは、重視する分野などを世界一律に決めることではなく、その国の実情に合わせること、つまり現場主義だ。2022年4月、田中明彦氏がJICAの理事長になり、JICAが再び、「人間の安全保障」を打ち出していると感じている。人間の安全保障の基本は、相手国の尊重であり、現場主義だ。
 アフリカは、アジアと発展段階が違うだけでなく、発展の状況が国ごとに全然違う。地域でくくることさえ難しい。例えば東部アフリカを見ても、南スーダンはこれから発展していく国で、国民の生活を支えるためには、教育、保健、インフラと、フルスペックの協力が必要だ。一方でケニアは、地域で一番発展、成功している国で、相手国の成長だけではなく、日本の成長にもつながる協力が考えられる。日本の民間企業が入っていけるように汚職をなくすためのガバナンス支援なども考えられる。
 これまでの日本の協力も、現地の人に寄り添った現場主義で行われ、在外事務所の担当者の声を尊重するというところが強い。現場主義をさらに進めるため、例えばJICAのアフリカ部の機能はアフリカに移し、そこが東京の外務省とやり取りするようなことになってもいい。
 開発協力大綱の改定では、優秀な研究者が委員となって議論しているが、その一方で、現場で働いている人の意見が反映されていないように見受けられる。JICAや国連などで現場の長く働く人の声を入れるべきだ。
 今回の改定は、2015年の大綱制定から比較的短い期間で行われている。間違いがあれば見直すべきではあるが、この短期間で見直す必要はあったのか、疑問だ。ただ、もし変えるところがあるとすれば、人間の安全保障を重要視すべきだ。

「顔の見える援助」で友好国を
ロシアによるウクライナ侵攻で明らかになった大きな課題は、アフリカの中に「ロシアシンパ」が多いということだった。普通に見れば、明らかな侵略行為と判断するはずだが、ロシア、あるいは中国の側についてしまう状況があった。これは植民地時代に宗主国であった欧米諸国が、その後も世界を「支配」していることへの反発から来ていると考えている。
 開発援助の枠の中では、アフリカ諸国はお金を受け取る側なので、あまり声を上げないが、経済統合に向けた取り組みを進める中では「上から欧米のルールを押しつけても、アフリカで通じる訳ではない」「アフリカにはアフリカのルールややり方があるから、任せてほしい」という声を聞いた。
 日本は、アジアでは植民地を持ったが、アフリカでは宗主国になったことがない上、相手を尊重する日本のやり方は受け入れられやすい。
 こうした日本の特性を生かして日本の友好国を増やし、日本が万一の事態に陥ったときに、国連総会で日本の味方になってもらわなければならない。そのためには、日本の「顔の見える援助」が必要で、これから国連の分担金が減少していくのであれば、その資金を二国間援助に回していくべきだ。
 国際協力への国民の理解を深めるために、日本で働く技能実習生と地域との関わりを深めることも提案したい。私自身は政治活動の中で日本の友好国を増やす努力を重ねていく。そして何より、現地住民の思いや現場で活動する援助関係者の声を、国会議員として政府などに伝え、現場に寄り添った支援が継続・実現されるように努力を続けていく。

(※)2021年の日本のGDPの割合は「2021年度国民経済計算年次推計」による。他の年の数字は「選択する未来-人口推計から見えてくる未来像-」(「選択する未来」委員会、2015年)による。

 

本記事は『月刊 国際開発ジャーナル2023年4月号』に掲載されています。