【国会議員の目】衆議院議員 立憲民主党 中川 正春氏

人権外交の意思を明確に示せ
ミャンマー民主化勢力との信頼醸成も重要

衆議院議員 立憲民主党 中川 正春氏
1950年、三重県生まれ。米ジョージタウン大学外交学部卒。国際交流基金、三重県議会議員を経て、1996年、衆議院議員に初当選(現在9期目)。民主党政権で文部科学大臣、防災担当大臣、男女共同参画担当大臣、内閣府特命担当大臣(定住外国人政策担当)を歴任。「ミャンマーの民主化を支援する議員連盟」「『人権外交』を推進する議員連盟」会長、「日本語教育推進議員連盟」会長代行。

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※本記事は2022年8月号の掲載記事です

国内外で日本語教育を推進へ
 長年取り組んでいる課題が、外国人受け入れの問題だ。彼らにとっては働くことが目的であるにも関わらず、国際貢献のための技能実習生とか、日系ブラジル人が親戚に会うという名目の在留資格でしかない。単純労働が目的の外国人も受け入れることを考え、職業選択の自由や日本人と同等の賃金など、人権を保障するための法改正が必要だ。
 こうした点の合意がなかなか得られない中、できることから始めようと、国内外で日本語教育を推進する議員連盟を超党派でつくった。活動の結果、2019年に日本語教育推進法が議員立法で成立した。同法により、日本語学校の法制化や日本語教師の国家資格など、日本語教育の質を保障するため制度づくりが進んでいる。国内では、在日外国人や留学生の日本語習得の環境づくりが進められる。
 さらに今年、駐在員の子どもの教育拠点だった海外の日本人学校を「日本語の教育拠点」「日本文化の発展拠点」とするための議員立法も成立させることができた。日本式の教育を受けたいという希望や、日本にルーツを持つ300万人とも言われる在外の人々の母語としての日本語教育が進む。

必要な人に届く支援のしくみを
 ミャンマーの民主化支援にも長く関わっている。迫害を受けてきた少数民族の人々などの悲痛な叫びも聞いてきた。民主化勢力が躍進した2015年の総選挙では、選挙監視団として現地に入った。
 2021年のクーデター後、国会決議に向け動いた。衆参両院は「国軍によるクーデターは、民主化への努力と期待を踏みにじるもの」「民主主義を取り戻すために声を上げ、行動を続けるミャンマー国民と共にある」などと決議した。
 緊急支援では、国際機関への資金拠出にとどまらず、日本が直接、支援を行うことが求められる。今回のミャンマーのように、軍事政権と民主化勢力や少数民族が対立しているような状況で動きが取れないことが課題だ。支援物資を届けようとすると軍政側は、自分たちが受け取るか、指定した場所や団体に届けさせようとする。民主化勢力・少数民族と直接やり取りするチャンネルはあるが、日本政府は軍事政権に気を遣って、このチャンネルを直接使おうとしない。

ミャンマー和平への日本の役割
 人道支援などを通じ、軍政に反対する勢力とも信頼を醸成できれば、和平に向け日本が大きな役割を果たす可能性が出てくる。民間のNGOを活用し、政府がNGO活動をバックアップしていく手法を開拓する必要がある。周辺国からクロスボーダーで支援物資を届けることを可能にするには、周辺国政府との交渉も進めるべきだ。
 軍政を刺激しないということで軍政を抑え込んでいけるならいいが、実際はそうではない。外交カードとして使うのであれば、「民主化を進めないなら、日本も民主化勢力側につく」くらいのことを言う必要がある。人権に対する日本としての価値を明確に示し、「人権外交」をしっかり実践しなければならない。
 これまでの日本のミャンマー支援は、国民に対する支援として、一般国民からも民主化勢力からも非常に高く評価されている。軍政よりも国民の期待に応えることを基本に、政治が責任を持って動かなければならない。

 

本記事は『月刊 国際開発ジャーナル2022年8月号』に掲載されています。