TICADⅣ 「横浜宣言」を採択[2008.7.9]

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TICADⅣの成果をG8サミットへ

5月29日から3日間の日程で開催されていたTICADⅣ(第4回アフリカ開発会議)が30日、横浜宣言を採択し閉幕した。同会議は、40名の国家元首・首脳級を含むアフリカ51カ国、34カ国の開発パートナー諸国およびアジア諸国、75の国際機関や地域代表、民間セクターやNGOなど市民社会の代表が参加した「史上類を見ない大規模な国際会議」(福田首相)となった。

各課題に対し具体的な支援額を提示

 「元気なアフリカ」を掲げて開催されたTICADの開会式演説のなかで福田首相は、今世紀を「アフリカ成長の世紀」と称し、「日本はアフリカとともに肩を並べて歩んでいきたい」と、日本のアフリカ諸国に対する基本的な姿勢を示している。その上で、「アフリカの成長が勢いを増していくためには何よりインフラが重要」との考えのもと、今後5年間で最大40億ドルの円借款の供与を表明。またインフラ整備とあわせて、「日本企業の直接投資が進めば、技術や経営ノウハウの移転も進む」との認識に立ち、「アフリカ投資倍増支援基金」を国際協力銀行に新設、この基金を含む対アフリカ金融支援を今後5年間で25億ドル規模とすることを約束、アフリカ向け民間投資の倍増を目指すことになった。

 近ごろ急騰する食料価格に対しては、1億ドル相当の「緊急食糧支援パッケージ」のうち、相当部分をアフリカ向けにすることを約束。また、これとは別に飢餓層に対する追加救済策も検討中であることを明らかにした。さらに、アフリカ諸国で大きな社会問題となっている感染症対策を含む保健対策については、HIV/エイズ、結核、マラリアとの闘いを支援するため、世界基金に対して2009年以降、当面5.6億ドルの資金拠出を決定したことを報告。 また、「さまざまな施策を実現するためには、ODAで思い切った手当が必要」との考えを示し、40億ドルの円借款とは別に、無償資金協力・技術協力でも、「5年後の2012年までに2倍にする」ことを約束した。

成長目指した包括的支援

 TICADⅣの成果文書として採択された「横浜宣言」では、対アフリカ支援の重要分野として、「成長の加速化」、「ミレニアム開発目標の達成-人間の安全保障の経済的側面」、「平和の定着とグッド・ガバナンス-人間の安全保障の政治的側面」、「環境・気候変動問題への対処」、「パートナーシップの拡大」が挙げられ、今後、この分野に対する取り組みが強化されることになった。

 特に「元気なアフリカ」を確実なものとするために重要となる「成長の加速化」では、科学分野での人材育成、国境を跨ぐ広域インフラの開発、水資源の開発、食料安全保障や貧困削減を視野に入れた農業・農村開発に重点が置かれた。また、「観光はアフリカの肯定的なイメージ形成に役立つ」との観点から、エコ・ツーリズムを視野に入れた観光振興の重要性も盛り込まれている。成長を担う民間セクターの役割については、アフリカ大陸の天然資源の効率的な開発、工業、エネルギーおよび鉱業、農業、金融およびその他のサービスセクターの発展を通じた持続的な経済成長にとって重要であることが確認され、貿易・投資の促進を通じた官民パートナーシップの強化に向けた日本のイニシアティブが評価された。

「行動計画」と「フォローアップ・メカニズム」で実効性を担保

 一方、今回採択された「横浜宣言」に沿った形で、TICADプロセスが今後5年間でどのようにアフリカの成長と発展を支援していくかを具体的に示した「TICADⅣ横浜行動計画」が発表されている。この行動計画の別表には、今回のTICADで提示された支援策ごとに、実施主体や数値目標・支援額なども含んだリソースが明記された。

 また、TICADⅢが開催された際に複数のアフリカ首脳から「10年を迎えたTICADプロセスには恒常的なモニタリング機構が必要」との指摘を受けたのを機に、テーマ別の閣僚級会議が毎年開催されてきた経緯を踏まえ、今回新たに「TICADフォローアップ・メカニズム」が創設されている。
この「行動計画」と「フォローアップ・メカニズム」により、TICADプロセスや今回出された「横浜宣言」の実効性が担保される形となった。

 今後、7月に開催されるG8洞爺湖サミットで議長国を務める日本は、TICADⅣの成果をサミットでの議論につなげていくことが期待されている。

『国際開発ジャーナル』2008年7月号掲載記事