特集 官民連携の新しい形とは[2008.4.16]

民間と援助機関と途上国がwin-win-winの関係に

 世界ではすでに当たり前のように行われている「官民連携」。国連が2000年に「グローバルコンパクト」として企業との連携による世界の課題への取り組みを表明して以来、援助機関のみならず、民間のアクターも連携して開発問題に取り組む動きは活性化している。アメリカやイギリスの援助機関では、具体的に民間企業や財団と組んでプロジェクトも始まっている。

 日本でも減り続けるODA予算に対して、民間団体などの資金やノウハウを期待する声や、企業のCSR活動の活性化など、企業など民間団体と援助機関など公的機関との連携の環境ができあがりつつある。日本で進められようとしている「官民連携」とはどのような形が想定されるのだろうか。

新しい連携の形

 外務大臣の諮問機関であるODA有識者会議(議長:渡辺利夫・拓殖大学学長)が、今年2月に当面のODAの課題などについて公表した「中間報告」では、官民連携について1つの章が割かれている。そのなかでは、「連携」あるいは「同盟」の考え方として官民が「対等の立場でお互いの英知を持ち寄り、それぞれの得意とする分野と手法を用いて共通目標の達成をめざすものである」としている。その上で官民連携が期待される事業形態として、以下8つのポイントを挙げる。なお、ここでいう「民間」には企業のほかに大学、NGOなど幅広いアクターが含まれる。

(1)民間投資の周辺インフラ(ハードならびにソフト)整備
(2) 官民パートナーシップ(PPP)による具体的案件の実施
(3) 政策対話等による貿易投資環境の整備
(4) 新たな開発協力としての投融資機能の創設
(5) 民間企業の参画意欲を高める制度的枠組みの検討
(6) 市場志向にもとづく官民連携
(7) CSR活動との協業
(8) 企業人材・ODA人材の相互乗り入れ

 このうち、(1)、(2)、(3)に関しては、これまでにも日本政府のODAなどによる取り組みがみられたところである。たとえば、メコン地域においては、ODAによる第2東西回廊の道路建設により、ラオスやベトナムにおける交通インフラが整備されたことで物流環境が改善され、企業による投資活性化が期待されている。PPPの事例でいえば、建設会社やメーカーなどを中心とした企業がPPPに関する検討会が立ち上げ、ODAではないものの、経済産業省や国土交通省が支援して議論と具体化が進んでいる。政策対話を通じた貿易投資環境の整備については、ベトナムに対して民間投資を促進するための制度改善などの政策支援をODAで行った経験がある。

 また、(4)については、過去、JICAや国際協力銀行(JBIC)で実施されてきた「海外投融資業務」を、今日にあう形にして再活性化しようという議論もなされている。

官民連携概念図

続きは『国際開発ジャーナル』2008年4月号「特集 官民連携」(P25-30)に掲載!