経団連・国際協力に関する提言を公表[2008.6.8]

[(社)日本経済団体連合会]

官民連携の強化など盛り込む

日本経団連は、4月15日に「今後の国際協力のあり方について―戦略的視点の重視と官民連携の強化―」と題した提言書を公表した。ODAの減額が続く一方、「第四回アフリカ開発会議」(TICAD IV)や北海道洞爺湖サミットなど、国際協力をめぐる大きなイベントを控えたこの時期に、官民連携の強化などを打ち出した内容となっている。民間企業から出された意見の取りまとめに当たった国際第二本部の讃井暢子本部長に話を聞いた。

―今回の提言の背景は
 今年は日本でTICAD IVやサミットが開催され、ミレニアム開発目標の達成までの中間年にも当たる。日本の援助機関である新JICAも誕生する。日本の国際協力について総括してもいいタイミングだ。
1990年代は世界一の援助量を誇っていた日本であるが、その後予算は減り続け、他の援助国が援助額を増やしているのとは対照的だ。2007年は日本のODAは5位にまで転落した。国際社会で日本の存在感が希薄になっているという強い危惧を抱いている。グローバル化した世界では単独ではやっていけないわけだし、日本が経済力にふさわしい発言力を確保するためには、通商政策などとともに国際協力も重要な手段であると考える。
 一方、援助の考え方に関しては、90年代は貧困削減の考え方が主流であったが、その後は日本が主張しているように途上国の自立的な発展には経済成長が不可欠であると再認識されてきている。国際協力の目的が、世界の平和や発展に貢献するということは当たり前だが、日本が援助する以上、日本にとっての国益を反映した援助のあり方も考えなければならない。

―提言では官民連携についてどのように捉えているか
 途上国への資金の流れをみると、企業の直接投資など民間資金が7割を占め、ODAの額をはるかにしのいでいるという現状を考えても、ODAだけで途上国の問題すべてが解決されるわけでないことは明らかだ。その意味で、国際協力の担い手としての民間企業の役割に光が当たりつつある。ODAと民間活動が相互補完的に活動し、相乗効果を出していくことが必要だ。
 4月18日に外務省も官民連携に関する提言を公表したが、国際協力に関わる人たちが、官民のパートナーシップによる援助に理解を示していることを実感しているし、政府もそうした声を無視できなくなっている。
 当面は、官民連携を進めるためのスキームとして、案件形成の段階から民間企業の提案を受け付ける。定期的な政策対話も行う。これは日本でも現地でも同じで、現地では「ODAタスクフォース」に民間企業から参加する。こうして民間企業の参画を制度として位置付けることの意義は大きい。

―連携は特定企業への支援につながるとの懸念もあるが
 特定の企業を支援するためのODAということではなく、企業の活動とODAがいっしょにやることで相乗効果を生み、地域のコミュニティーに貢献し、さらには国全体の発展に貢献する、という視点が大切だ。目的は途上国の成長にあり、そのために官民が連携するということだ。
当面注目されているアフリカに関しては、援助を全体的にばら撒いても効果が見えづらい。重点地域・国を決めて、民間企業の進出先なども考慮して援助を行う方が、より効果が高いのではないか。具体的な連携のやり方については、透明性・公正性の高い制度をしっかり構築していかなければならない。連携に当たっては官民のスピード感の違いも課題だが、まずは具体的なモデルケースがあればはずみがつくだろう。

『国際開発ジャーナル』2008年6月号掲載記事