ODAで大学・研究機関間の共同研究プロジェクトなどを実施[2008.5.10]

[外務省/文部科学省/国際協力機構(JICA)]

科学技術協力で課題解決を促進

 文部科学省/科学技術振興機構(JST)と外務省/国際協力機構(JICA)は、環境・エネルギー問題など開発途上国における地球規模課題の解決と科学技術分野の人材育成等のために、2008年度から、「地球規模課題に対応する科学技術協力」として、大学・研究機関間の共同研究や研究者の派遣を通じた新たな協力の枠組みである「地球規模課題対応国際科学技術協力」と「科学技術研究員派遣」の2つの制度を新規で立ち上げることになった。

 前者の制度は、日本と途上国の大学・研究機関などが組んで行う共同研究による課題解決を図るもの。本邦の大学・研究機関などとJICA の共同事業として、途上国で必要な経費はODAとしてJICAが負担し、日本で必要な経費は文科省からJSTを通じて支援する。事業は途上国においてJICAの技術協力プロジェクトの形で行われ、研究活動の進捗管理はJSTが支援する。対象となるのは、ODAの技術協力の対象国で、分野は環境・エネルギー、防災、感染症対策。

 後者は、途上国のニーズに基づき、日本から科学技術分野の研究者を専門家として派遣する。途上国側のニーズと日本側研究者のニーズをマッチングさせるためのシステム開発の経費を文科省が負担し、日本側研究者の派遣中に必要な現地での共同研究活動に必要な経費をJICAが支援する。対象はこれもODAの技術協力の対象国となっていることが前提となる。

 両制度とも、研究を実施する日本側の大学・研究機関等や研究者は公募により選定される。地球規模課題対応国際科学技術協力のプロジェクトについては、初年度は10件程度の採択を予定しているという。

 日本がもつ科学技術の経験やノウハウを途上国支援に活用しようという動きは、近年注目を集めつつある。昨年6月に閣議決定された「イノベーション25」では、科学技術外交強化の一環で、途上国との共同研究・人材育成を強化する旨が謳われた。また、昨年4月に「総合科学技術会議」の有識者が提出した提言「科学技術外交の強化に向けて」でも、ODAを活用した科学技術協力の強化の必要性が強調された。

 今回の施策は、こうした政策的提言を背景として、日本の強みといわれる科学技術分野において、日本の大学などが持つ経験やノウハウを活用し、科学技術の分野で日本が世界的な課題に貢献していく試みとなる。

 日本の研究機関、とくに大学では、ODAプロジェクトへの参画が独立法人化以降活性化しており「大学側の研究などを通じた協力関係をODAでより進化させたい」という大学側の意向は強くなっていた。一方、途上国側でも、日本のもつ科学技術の経験を活用したいという声があるという。「科学技術分野における途上国側のニーズがでてきた。成長を通じた貧困削減に科学技術が果たす役割が大きいとここ数年で感じられるようになった」と、今回の事業を担当するJICA関係者も話している。

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『国際開発ジャーナル』2008年5月号掲載記事