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【大学の国際化最前線】三重大学 医学部

国内地域と世界を見据えた医療人材を育成

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(ザンビアで実施された海外臨床実習の様子)

【国際標準を踏まえた教育】

 医療サービスを海外展開したり、外国人患者を受け入れることに対して消極的な医療関係者をはじめ、とかく「内向き」だと言われる日本の医療業界。そんな業界文化に風穴を開ける取り組みが、三重大学医学部で進んでいる。
 同学部は、1980年代から国際協力機構(JICA)の保健医療プロジェクトに数多く関わってきた。そこで培った海外の大学や医療機関とのネットワークを生かし、2007年には海外で診療体験などを行う6年生向けの「海外臨床実習」を、09年には海外の医療プロジェクトを視察する1~4年生向けの「海外早期体験実習」を開始した。前者のプログラムには、これまで累計約400人、後者は約200人以上が参加しており、うち約半数は欧米に、残りの半数はアフリカなど開発途上国へと派遣されている。国際交流担当副学長の堀浩樹教授は、こうした海外実習の狙いについて、「世界に通用する医療人材を育てること」だと指摘する。

 この背景には、グローバル化の進展に伴い、外国で治療を受ける医療ツーリズムの盛り上がりや、医者が海外で医療を行うケースの増加が挙げられる。こうした状況に対応するため、欧米では近年、医学教育の国際標準化や高度化に向けた動きが進んでいる上、新興国や開発途上国の大学でも、欧米などにならって医学教育の強化に取り組んでいる。その一方で、日本では日本語の教科書をベースにした医学教育が行われており、英語の教科書で授業が行われている世界の医学教育に追い付いていないのが現状だ。前出の堀教授は、「海外実習プログラムを通じて世界の医学教育や医療現場の現状に触れることで、学生たちは自分がどんな力を身に付けるべきか、考えるきっかけになる」と話す。

【学生と教員の意識を変える】

 さらに堀教授は、「現在の学生たちは、20~30年後には日本の医療を担う人材になる。彼らの意識を変えることが、将来的に日本の医療業界の変革につながる」とも指摘する。現在、大学院の医学研究科では将来的に現地の医療業界の指導者になる人材との関係を強化するために、アフリカなどから多くの留学生を受け入れているが、彼らの存在は、学生だけでなく教員に対しても、国際化に向けた意識付けを図る良いきっかけになっているようだ。

 医療人材の不足などの問題を抱える日本の地域医療も、開発途上国の医療現場が抱える問題点と多くの共通点があるという。「開発途上国で海外実習を行えば、日本の地域医療の改善につながる知見も得られるはずだ」。

 日本の医療業界の文化は一朝一夕では変わらない。しかし三重大学は、長期的展望の下で着実に歩み続け、変革の風を起こそうとしている。

(出典:「国際開発ジャーナル」2015年9月号)

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