月別アーカイブ: 6月 2017

【ジュネーブ便り】新しい組織にかける

世界エイズ・結核・マラリア対策基金
技術評価委員会事務局
シニア・コーディネーター
小松 隆一 さん

【小松さんのキャリアパス】

25歳 早稲田大学で修士号取得(心理学)
26歳 タイ赤十字社リサーチ・アソシエート
28歳 ハワイ大学で公衆衛生学の修士号を取得
31歳 国立社会保障・人口問題研究所研究員。
   以降、主任研究官、室長
37歳 グローバルファンド戦略情報専門官。
   以降、チーム・リーダー、
   シニア・マネージャーなどを務める
45歳 現職

(スワジランドで若者グループとHIV予防活動について話し合う)

 世界エイズ・結核・マラリア対策基金(略称グローバルファンド)は、21世紀以降の国際保健の潮流に変革を生みだす一つのきっかけとなった組織です。

 2000年に沖縄で開かれたG8サミットにおいて、日本は、HIV/AIDS、結核、マラリアの三大感染症のまん延による世界の危機的状況を、先進国の政治課題として提起しました。当時、HIV/AIDSの治療には一人当たり年間約100万円が必要でしたが、患者の多くは開発途上国で暮らしており、治療を受けることはできませんでした。特にアフリカでは、村や町で毎日のように葬儀が行われていたほどです。さらに、子どもと老人ばかりが残った各地のコミュニティーは崩壊しかかっていました。この状況を打開するため、援助の変革が必要なことは明らかでした。

 こうした中、02年に創設されたのが、グローバルファンドです。各国政府や民間財団、企業などから大規模な資金を調達する、革新的な官民パートナーシップの仕組みを有しているのが特長です。さらに、ドナー国政府と被援助国の政府、市民社会、そして患者たちの代表によって構成される理事会や国別の調整機関を持ち、効率の良い組織運営を図っています。

 私は、予防が可能であるにも関わらず、開発途上国の人々に大きな影響を与えるHIV/AIDSをどうにかしたいと思い、各所で関連の仕事に携わっていましたが、グローバルファンドの創設を知り、「HIV/AIDS問題を真に解決するには、これしかない」と思いました。創設間もない組織であり、すぐに失敗して解散となる懸念もありましたが、「この新しい組織にかけたい」と思い、04年に応募。採用されました。

 その後、世界中の成果を取りまとめる仕組みを一から立ち上げたほか、現場における感染症対策の事例収集、各国の事業の中間評価に取り組みました。世界保健機関(WHO)や国連合同エイズ計画(UNAIDS)と共同で、救われた命を推計する計量モデルの開発などにも携わりました。

 グローバルファンドの活動によって、これまで1,000万人が年間1万円以下のHIV治療を、また1,660万人が結核の治療を受けられるようになり、殺虫剤処理をした蚊帳は累計7億張以上が配布されました。これらにより、2,000万人の命が三大感染症から救われています。

 私は、12年から組織全体の技術評価に携わっています。当初、技術評価部門は十分に機能していませんでしたが、外部の技術評価委員長とともに改革を進め、全体の戦略・政策立案や改善につながる実績を残しています。

 17年からは、8カ国を対象に3,300万ドル規模の評価プロジェクトを3年掛かりで実施することが決まりました。グローバルファンドには、新たな挑戦の機会が溢れています。

(出典:『国際開発ジャーナル』2017年5月号)