月別アーカイブ: 1月 2017

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【ジュネーブ便り】NGOの経験生かして緊急支援に情熱注ぐ

国際移住機関(IOM)本部
緊急オペレーション局
プロジェクト・サポート・オフィサー
上田 はるか さん

【上田さんのキャリアパス】
23歳 青山学院大学卒業(法学士)
25歳 神戸大学大学院国際協力研究科(法学修士)
26歳 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)
   本部(ジュネーブ)でインターン
27歳 「障害に関する特別報告者」の
   リサーチアシスタント(南アフリカ共和国で勤務)
28歳 (特活)ピースウィンズ・ジャパンで勤務
   (本部、ケニア、トルコ、イラク駐在)
32歳 外務省のJPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)
   として現部署に勤務
33歳 現職

 


(イラク北部国内避難民キャンプでの事業視察(NGO勤務時))

 

 国際移住機関(IOM)は、「正規のルートを通じて人としての権利と尊厳を保障する形で行われる移動は、移民と社会の双方に
利益をもたらす」という基本理念の下、移民個人への直接支援から、関係国への技術支援、政府間の意見交換や経験の共有、国際的な協力関係の促進にいたるまで幅広い活動を実施しています。

 私が所属している部署では、特に紛争や自然災害、気候変動などによって引き起こされる人の移動を扱っています。その中でも、私はシェルター建設や物資配布、水・衛生状況の改善について技術的な助言や事業申請書のレビュー、研修の実施、ガイドラインの作成などを行っています。

 ジュネーブ本部から間接的に支援するだけでなく、短期出張を通じて、現地の支援に直接携わることもあります。今年10月には、ハリケーン・マシューで大きな被害を受けたハイチを訪れました。

 さまざまな機関やNGOの支援が入る現場の場合、それぞれの支援の重複をなくし、より多くの人に適切に支援が届くよう調整することが重要です。ハイチではIOMがシェルターと物資配布に関する支援の取りまとめ役として効率的な支援を目指しました。

 私は、1995年の阪神・淡路大震災を経験したことがきっかけで、「いつか自分も支援活動に取り組みたい」と思うようになり、大学院やインターンなどを通じて国際法や緊急支援、人権分野の経験を積みました。

 その後、ピースウィンズ・ジャパンの職員として、約4年間、ケニアのダダーブ難民キャンプや、トルコ側からのシリア北部への支援、イラクにおける国内避難民やシリア難民への支援に携わりました。経験豊かな先輩職員に恵まれ、事業の立ち上げから実施、会計・人事といった総務関連、治安悪化の際の対応まで、緊急支援に関する一連の業務を経験しました。治安状況の悪い地
域での駐在だったため、頻繁に現場に行くことができず、事務所内での仕事が多かったのですが、厳しい環境下でいかに効率的に支援を届けるかについて考え、実践する日々でした。

 また、国際機関と共同で事業を実施したことで、さまざまな事業運営の形を学びました。これらの経験は、現在の仕事の礎になっています。

 IOMの緊急支援分野では、法律や国際関係、紛争分野のバックグラウンドを持つ職員のほか、エンジニア、IT関連、人事、会計など、さまざまな専門を持つ職員が活躍しています。

 緊急支援に携わるということは、悲劇的な状況を常に目の当たりにしなければならない、ということでもあります。残念ながら、紛争や自然災害により避難生活を余儀なくされる人は年々増える一方です。こうした人々の支援に情熱を燃やすIOMの一員として働けることに大きな魅力を感じています。

 

(出典:『国際開発ジャーナル』2016年12月号)

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【大学の国際化最前線】麗澤大学

PBL教育を通じて学生の自発性を育てる


(ミクロネシアでの環境教育の様子)

 

【「海外に連れて行くだけでは意味がない」】

 国際人の育成を目指して1935年に設立された「道徳科学専攻塾」を起源とする麗澤大学。千葉県柏市にあるキャンパスは、約2,500人の学生のうち留学生が約400人を占め、国際色が豊かな雰囲気にあふれている。また、71年に(一財)麗澤海外開発協会を立ち上げ、タイやネパールなどの開発支援を実施するなど、早い時期から国際化に向け独自の取り組みを進めてきた。

 こうした同大学が、近年力を入れているのが、開発途上国での課題解決型学習(PBL)だ。 

 この取り組みはミクロネシアで2013年に始まった。主催者である成瀬猛教授は、「学生をただ海外に連れて行くだけではなく、彼らの自発性を育てる企画にしなければ真に役立つ教育にはならない。人口も国土も小さいミクロネシアであれば、学生自身で現地の課題の全体像を把握することができ、主体的にプロジェクトを実施しやすいと考えた」と振り返る。

 このプログラムに参加を希望する学生たちに対しては、必要に応じて助言は行っても、現地での活動内容やアポイントメントの調整は基本的に学生に一任した成瀬教授。学生たちが試行錯誤の末にミクロネシア短期大学の学生と協力してごみ削減のための環境教育プロジェクトに取り組むことを決めたことに触れ、「彼らの熱心な取り組みにより、その後、両大学では交換留学協定の締結にまで至った」と目を細める。

 ミクロネシアから帰国した学生たちの充実した表情に触発されたのか、他の学生からも参加を希望する声が相次いで寄せられ、その後、ネパールの地震被害者への減災対策教育や、カンボジアにおける交通事故防止教育などの取り組みが、学生自身の発案で立ち上げられた。これらの事業は今、「自主企画ゼミ」として実施され、単位認定も受けられるようになっている。

 

【協力隊訓練所に体験入所】

 こうした成果を踏まえ、成瀬教授が一昨年より新たに始めたのが、長野県と福島県にある国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊の訓練所への2泊3日の体験入所プログラムだ。これまで約30人が参加し、隊員候補生と一緒に講義を受けたりしている。「さまざまな社会経験を持っている候補生たちと交流し、彼らの人生や夢について話を聞くことで、学生たちは大きな刺激を受けるようだ」と手応えを感じている。

 「日本の中小企業も開発途上国に進出しなければ生き残ることが難しい時代だからこそ、こうした分野で活躍できる人材を麗澤大学から輩出し、日本の国際化の裾野を広げたい」と語る成瀬教授。今後も、海外に拠点を置く日系企業へのインターンシップ派遣など、さらなる取り組みを続けていく予定だ。

 

【Access】
〒277-8686
千葉県柏市光ヶ丘2-1-1
URL:http://www.reitaku-u.ac.jp/

 

(出典:「国際開発ジャーナル」2016年12月号)

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【ジュネーブ便り】官民の長所を生かしてワクチンの接種を普及

Gaviワクチンアライアンス
資金調達・官民パートナーシップ部
上級資金調達官
北島 千佳 さん

【北島さんのキャリアパス】

22歳 津田塾大学を卒業後、(株)日立製作所に入社
25歳 米国デンバー大学で修士号取得(国際開発)
28歳 国連地域開発センター(UNCRD)で勤務
32歳 外務省のジュニア・プロフェッショナル・オフィサー
   (JPO)として国連児童基金(UNICEF)ジンバブエと
   ベトナムのホーチミン事務所で勤務。
   その後、正規職員としてUNICEFハノイ事務所に配属
37歳 国連ボランティア計画(UNV)の信託基金
   およびパートナーシップ管理官として
   ドイツのUNV本部に勤務。
   九州大学で博士号取得(コミュニティー開発)
45歳 現職


(Gaviのダグフィン・ホイブローデン理事長(当時)が2015年に来日した際のワクチン議員連盟との会合)

 Gaviワクチンアライアンスは、世界で最も所得の低い73カ国を対象に、命に関わる感染症から子どもたちを守ろうと2000年に設立された、各国政府や企業、国際機関などによる官民パートナーシップです。スイスのジュネーブに本部を、米国・ワシントンDCには資金調達のための商品を形成する金融専門集団を擁する事務所を置いています。

 主な活動は、予防接種の推進と、各国の保健システムの強化に必要な資金の調達です。また、各国のワクチン需要を取りまとめ、一括発注することで価格を下げたり、長期的なワクチン需給を予測したり、各国政府に資金保証も提供したりしています。ワクチンを製造する製薬会社と予防接種を実施する各国政府の双方が、長期的なビジョンの下で投資できるようにするためです。こうした活動を通じ、Gaviは世界の小児向けワクチン接種の60%以上を何らかの形で支援していることになります。

 Gaviは、官民連携組織の特長として、効率性を重視しています。Gaviの活動費は、日本を含むドナー国政府、財団、企業からの寄附でまかなわれています。これらパートナーからの投資が最大の効果を発揮されるよう、間接費を徹底的に抑えるとともに、活動の優先順位を明確にし、他の組織の活動との重複を避けることで、いまや投資の97%がワクチンや保健システム強化などコアの活動に使われています。

 私は、本部の資金調達部で日本と韓国を担当し、両国の政府やNGO、研究機関、製薬会社などと交渉を行っています。結果が数字で明確に表れるため苦しい時もありますが、やりたいことを自由にやらせてもらっているのでやりがいがあります。

 多様な文化が共存する国際機関では、意思疎通や合意形成の苦労も少なくありません。また、国連機関から今のGaviに転職した当初は、組織文化の違いにも大変驚きました。国連では結果とそれに至るまでのプロセスの双方が重視されますが、企業出身者が多いGaviでは、効果と効率が常に同時に求められます。

 私自身は、互いの長所を学ぶことによって視野が広がったと感じています。配属先の文化に盲目的に合わせるのではなく、自らの経験を生かし、組織に新しい視点を持ち込もうという態度が必要だと思います。

 Gaviは、予防接種という特化した分野で、常に新しいビジネスモデルを追究しているため、保健や開発に加え、金融、法務、財務、資金調達、ワクチン市場の分析など、さまざまな経験の持ち主を募集しています。

 Gaviは、民と官の良い部分を同時に経験でき、若い方にどんどんチャンスが与えられる組織ですが、日本人職員は、私を含めてまだ2人しかいません。こうした分野で専門性をお持ちの方は、ぜひご応募ください。

(出典:「国際開発ジャーナル」2016年11月号)