ジュネーブ便り」カテゴリーアーカイブ

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【ジュネーブ便り】さまざまなアクターとポリオ撲滅に取り組む

世界保健機関(WHO)
ポリオ根絶イニシアティブ
チームリーダー(製品開発・イノベーション担当)
岡安 裕正 さん

【岡安さんのキャリアパス】

24歳 慶應義塾大学医学部卒業
25歳 在沖縄米国海軍病院インターン
26歳 マッキンゼー・アンド・カンパニー
   東京オフィス勤務
31歳 スタンフォード大学経営大学院留学
   (経営学修士)を取得
   マッキンゼー・アンド・カンパニーの
   米国ニュージャージーオフィス勤務
34歳 世界保健機関(WHO)ポリオ根絶
   イニシアティブ医官
39歳 現職


(パキスタンでポリオの予防接種キャンペーンに取り組む)

 世界保健機関(WHO)は、「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目指して、1948年に設立された国連の専門機関です。感染症や生活習慣病、保健システムの改善など多様な課題に取り組んできたWHOですが、中でも80年に達成した天然痘の撲滅は、大きな功績として挙げられます。

 WHOは現在、国連児童基金(UNICEF)や米国疾病予防管理センター(CDC)、国際ロータリーと共に、官民パートナーシップ組織「世界ポリオ撲滅イニシアティブ(GPEI)」を立ち上げ、ポリオの根絶に注力しています。

 私は現在、WHOのポリオ部局に所属し、新しいポリオワクチンの研究開発や、針を使わないワクチン投与器具の開発、携帯電話や地理情報システム(GIS)を予防接種活動に活用するプロジェクトなどに携わっています。

 私は大学の医学部を卒業後、経営コンサルティング企業に就職しました。その後、休職し米国に留学した際に出会った友人の影響を受け、移民向け無料クリニックの支援活動に参加したり、ペルーのスラムで活動するNGOを訪問したりする機会がありました。その際、世界には基本的な医療サービスを受けられない人が大勢いるのだと知ったことが、国際保健に関心を持ったきっかけです。

 その後、WHOで短期インターンをする機械を得て、10年間の抗結核薬の需給予測と、薬の安定供給を行うための提言を作成しました。自分が今まで培ってきたビジネス経験が国際保健にも生かせることを知り、WHOの職員を目指すことを決意しました。

 WHOで働き始めてはや8年が過ぎましたが、医学以外にも統計学や経営学など多様な知識を仕事に生かせたり、最先端の知識と技術に触れたりできる点は、とても魅力的だと思います。

 また、開発途上国の保健衛生を改善することは、多くの人が共感できる目標であるため、仕事を通じて外部のさまざまな人とつながりができ、一緒に事業に取り組めることが嬉しいです。例えば、以前、ナイジェリアでワクチン接種率を向上するため、ソーシャルマーケティングの専門家にアドバイスを求めたことがありましたが、この時の議論がきっかけで、地理情報システム(GIS)を活用した予防接種活動の改善事業を実現するに至りました。さらに、米国やオーストラリアの企業とも共同で、湿布のように貼るだけで薬剤を投与できる「貼るワクチン」の開発事業も立ち上げました。

 さまざまな価値観やバックグラウンドを持つ同僚が集まる国際機関では、自分の強みは何か、組織が掲げる目標に対してどう貢献できるのか問われる機会が多くあります。国際機関への就職を目指す
方は、そうした点を常に意識し、明確にしておくことが大切ではないかと思います。

(出典:『国際開発ジャーナル』 2017年4月号)

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【ジュネーブ便り】自分の力をフルに生かせる職場

国際電気通信連合(ITU)
電気通信標準化局(TSB)
スタディーグループアドバイザー
太田 宏 さん

【太田さんのキャリアパス】
24歳 京都大学で電子工学の修士号を取得。
   日本電信電話(株)(NTT)に入社し、
   広帯域ネットワークの研究開発に従事
30歳 ITUの標準化会議に初めて参加
37歳 京都大学で工学の博士号を取得
46歳 ITUに出向
49歳 ITUに転職


(2015年には、トルコのイスタンブールで開催された通信の国際標準に関するワークショップに登壇した)

 国際電気通信連合 (ITU) はもともと万国電信連合として1865年に設立され、1947年に国連の専門機関になりました。現在は、無線通信に使用する電波の周波数を管理したり、電気通信に関する国際標準を作成したりするほか、開発途上国の電気通信分野の発展を支援しています。

 私は、電気通信標準化局(TSB)において、光ネットワークなどの通信インフラに関する標準規格を作成する研究グループのアドバイザーとして、電気通信分野における重要課題の標準化を促進したり、他の標準化団体との連携を強化したりしています。また、各国の関係者を招集して約9カ月に一度開催される標準化会議では、議長をサポートしたり、議論が紛糾した際に関係者を集めて解決策を見出したりしながら、業界に求められる標準規格のタイムリーな作成に努めています。そのほか、小規模な中間会合や電話会議なども支援しています。

 通信規格が標準化されれば、共通の通信装置や端末を世界中で使えるようになり、国際間の通信コストを抑えられます。また、情報の行き来が容易になれば、開発途上国の産業発展や教育改善などにもつながります。そのため、私たちは各国でワークショップを開催し、知識の普及や、標準化会議への参加促進にも取り組んでいます。

 私は大学卒業後、NTTに入社し、広帯域(ブロードバンド)ネットワークの構築に携わりました。自分たちの開発した技術を国際的な標準規格に盛り込むために、ITUなどの標準化会議に参加したこともあります。

 2009年からはITUに出向し、標準化会議の運営業務などに携わりましたが、多様な国の人たちと協力して業務を遂行する中で、「こここそが自分の技術的知識や語学力、標準化に関する経験をフルに生かせる職場だ」との思いを強くし、転職を決意。11年にITUの正職員となりました。

 多様な国籍、経験を持つ人々が働く国際機関では、戸惑うことも多々あります。私自身、ワークショップを企画開催する際、最初は関連組織の事情などでなかなか準備が進まず、いらだったことが何度もありました。しかし、最後は各人が個性や強みを生かして持ち場で貢献し、予想以上に優れたイベントとなり、高い評価をいただいた経験がたびたびあります。状況にもよりますが、関係者を信頼して任務遂行に当たることで、良い結果が得られると感じています。

 もっとも、近年はインターネットが発展し、友人と連絡を取ったり、情報や物品を入手したりすることも含め、外国暮らしもかなり楽になっているように思います。

 ITUを含め、国際機関へ就職するには、厳しい競争をくぐり抜ける必要があります。採用されるためには、出向やインターン、外務省のジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)などの枠組みを活用し、就職したい組織で有期雇用の形で働くなど、自分を知ってもらうことも有効です。

(出典:『国際開発ジャーナル』2017年3月号)

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【ジュネーブ便り】経験を糧に文化の壁を乗り越える

国際貿易センター(ITC)アジア・太平洋部
ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)
齋藤 美穂子 さん

【齋藤さんのキャリアパス】
22歳 国際基督教大学を卒業
24歳 東京大学公共政策大学院を修了後、
   (株)三菱総合研究所の海外事業研究センターに勤務
30歳 外務省専門調査員の試験に合格。
   在ジュネーブ日本政府代表部に派遣
33歳 JPOとしてITCに赴任
34歳 現職


(モザンビークの中小企業支援庁で協議を実施)

 

 国際貿易センター(ITC)は、開発途上国の中小企業の貿易促進を支援する国連機関で、約300人の職員が、開発途上国の中小企業の能力強化および貿易促進支援などに携わっています。

 現在、私はITCのアジア・大洋州部に所属し、カンボジアやラオス、ミャンマー、ネパールなどの中小企業の支援や、アジアの対アフリカ投資拡大に向けた事業を担当しています。

 例えばカンボジアでは、伝統的に農村の女性たちが繭を育て、絹を織ってきました。最近では、その高い技術と品質を強みとして絹の輸出を目指す女性起業家も増えています。ITCでは、彼女たちと連携し、輸出先の開拓や市場調査、ブランド化、貿易展示会への出展などに向けた支援を行っています。

 また、対アフリカ投資拡大支援プロジェクトでは、各国の政府機関との貿易・投資促進関連の協議や、アフリカ企業とアジアの投資家のマッチング、投資視察ミッションなどを企画・運営しています。

 私は、小・中学生時代を香港で過ごしたことがきっかけで海外に携わる仕事をしたいと考えるようになり、高校生の時に特に多様性を推進する組織である国連に関心を抱くようになりました。

 大学院を出た後、民間のシンクタンクで約6年間、主に海外プロジェクトに携わりましたが、国際機関で働く夢を実現するため、退職を決意。外務省の専門調査員試験に合格し、在ジュネーブ日本政府代表部に派遣されました。

 ここでは経済班に所属し、国連と世界貿易機関(WTO)における貿易・開発関係の業務を担当しました。毎日のように国連欧州本部やWTOの会議場に行っては、世界中から集まった外交官に囲まれながら日本政府の立場を発信し、各国の動向をフォローしました。

 この経験を基に、2015年からJPOとしてITCで勤務しています。日本社会で「和を重んじる」ことに慣れていた私にとって、国際機関であるITCでの仕事は、カルチャーショックの連続でした。

 まず、同僚の自己主張の強さに圧倒されました。会議で黙っていると貢献していないと見なされるため、事前に自分の意見をまとめることが必要になりました。また、英語の微妙なニュアンスで誤解を招かないよう、メールや議事録の作成にも時間がかかりました。

 しかし、一つ一つの仕事にしっかりと向き合い地道な成果を重ねることで、徐々に周囲から信頼を得ることができ、現在は大きなプロジェクトも任されています。

 周りには、貿易実務やマーケティング会社、金融機関などさまざまな経験を経て国連に転職してきた人が多くいます。私にとっても、日本で働いた6年間は、社会人としての心構えや仕事の進め方を身に付ける上で重要でした。これから国際機関を目指す人は、まずは自国の政府機関や民間企業で働いてみることをお勧めします。

 今後も国連機関に残れるよう、貿易・投資分野の専門性を高めたいです。また、英語に磨きをかけると同時に、第二外国語としてフランス語の習得にも励みます。

(出典:「国際開発ジャーナル」2017年1月号)

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【ジュネーブ便り】NGOの経験生かして緊急支援に情熱注ぐ

国際移住機関(IOM)本部
緊急オペレーション局
プロジェクト・サポート・オフィサー
上田 はるか さん

【上田さんのキャリアパス】
23歳 青山学院大学卒業(法学士)
25歳 神戸大学大学院国際協力研究科(法学修士)
26歳 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)
   本部(ジュネーブ)でインターン
27歳 「障害に関する特別報告者」の
   リサーチアシスタント(南アフリカ共和国で勤務)
28歳 (特活)ピースウィンズ・ジャパンで勤務
   (本部、ケニア、トルコ、イラク駐在)
32歳 外務省のJPO(ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー)
   として現部署に勤務
33歳 現職

 


(イラク北部国内避難民キャンプでの事業視察(NGO勤務時))

 

 国際移住機関(IOM)は、「正規のルートを通じて人としての権利と尊厳を保障する形で行われる移動は、移民と社会の双方に
利益をもたらす」という基本理念の下、移民個人への直接支援から、関係国への技術支援、政府間の意見交換や経験の共有、国際的な協力関係の促進にいたるまで幅広い活動を実施しています。

 私が所属している部署では、特に紛争や自然災害、気候変動などによって引き起こされる人の移動を扱っています。その中でも、私はシェルター建設や物資配布、水・衛生状況の改善について技術的な助言や事業申請書のレビュー、研修の実施、ガイドラインの作成などを行っています。

 ジュネーブ本部から間接的に支援するだけでなく、短期出張を通じて、現地の支援に直接携わることもあります。今年10月には、ハリケーン・マシューで大きな被害を受けたハイチを訪れました。

 さまざまな機関やNGOの支援が入る現場の場合、それぞれの支援の重複をなくし、より多くの人に適切に支援が届くよう調整することが重要です。ハイチではIOMがシェルターと物資配布に関する支援の取りまとめ役として効率的な支援を目指しました。

 私は、1995年の阪神・淡路大震災を経験したことがきっかけで、「いつか自分も支援活動に取り組みたい」と思うようになり、大学院やインターンなどを通じて国際法や緊急支援、人権分野の経験を積みました。

 その後、ピースウィンズ・ジャパンの職員として、約4年間、ケニアのダダーブ難民キャンプや、トルコ側からのシリア北部への支援、イラクにおける国内避難民やシリア難民への支援に携わりました。経験豊かな先輩職員に恵まれ、事業の立ち上げから実施、会計・人事といった総務関連、治安悪化の際の対応まで、緊急支援に関する一連の業務を経験しました。治安状況の悪い地
域での駐在だったため、頻繁に現場に行くことができず、事務所内での仕事が多かったのですが、厳しい環境下でいかに効率的に支援を届けるかについて考え、実践する日々でした。

 また、国際機関と共同で事業を実施したことで、さまざまな事業運営の形を学びました。これらの経験は、現在の仕事の礎になっています。

 IOMの緊急支援分野では、法律や国際関係、紛争分野のバックグラウンドを持つ職員のほか、エンジニア、IT関連、人事、会計など、さまざまな専門を持つ職員が活躍しています。

 緊急支援に携わるということは、悲劇的な状況を常に目の当たりにしなければならない、ということでもあります。残念ながら、紛争や自然災害により避難生活を余儀なくされる人は年々増える一方です。こうした人々の支援に情熱を燃やすIOMの一員として働けることに大きな魅力を感じています。

 

(出典:『国際開発ジャーナル』2016年12月号)

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【ジュネーブ便り】官民の長所を生かしてワクチンの接種を普及

Gaviワクチンアライアンス
資金調達・官民パートナーシップ部
上級資金調達官
北島 千佳 さん

【北島さんのキャリアパス】

22歳 津田塾大学を卒業後、(株)日立製作所に入社
25歳 米国デンバー大学で修士号取得(国際開発)
28歳 国連地域開発センター(UNCRD)で勤務
32歳 外務省のジュニア・プロフェッショナル・オフィサー
   (JPO)として国連児童基金(UNICEF)ジンバブエと
   ベトナムのホーチミン事務所で勤務。
   その後、正規職員としてUNICEFハノイ事務所に配属
37歳 国連ボランティア計画(UNV)の信託基金
   およびパートナーシップ管理官として
   ドイツのUNV本部に勤務。
   九州大学で博士号取得(コミュニティー開発)
45歳 現職


(Gaviのダグフィン・ホイブローデン理事長(当時)が2015年に来日した際のワクチン議員連盟との会合)

 Gaviワクチンアライアンスは、世界で最も所得の低い73カ国を対象に、命に関わる感染症から子どもたちを守ろうと2000年に設立された、各国政府や企業、国際機関などによる官民パートナーシップです。スイスのジュネーブに本部を、米国・ワシントンDCには資金調達のための商品を形成する金融専門集団を擁する事務所を置いています。

 主な活動は、予防接種の推進と、各国の保健システムの強化に必要な資金の調達です。また、各国のワクチン需要を取りまとめ、一括発注することで価格を下げたり、長期的なワクチン需給を予測したり、各国政府に資金保証も提供したりしています。ワクチンを製造する製薬会社と予防接種を実施する各国政府の双方が、長期的なビジョンの下で投資できるようにするためです。こうした活動を通じ、Gaviは世界の小児向けワクチン接種の60%以上を何らかの形で支援していることになります。

 Gaviは、官民連携組織の特長として、効率性を重視しています。Gaviの活動費は、日本を含むドナー国政府、財団、企業からの寄附でまかなわれています。これらパートナーからの投資が最大の効果を発揮されるよう、間接費を徹底的に抑えるとともに、活動の優先順位を明確にし、他の組織の活動との重複を避けることで、いまや投資の97%がワクチンや保健システム強化などコアの活動に使われています。

 私は、本部の資金調達部で日本と韓国を担当し、両国の政府やNGO、研究機関、製薬会社などと交渉を行っています。結果が数字で明確に表れるため苦しい時もありますが、やりたいことを自由にやらせてもらっているのでやりがいがあります。

 多様な文化が共存する国際機関では、意思疎通や合意形成の苦労も少なくありません。また、国連機関から今のGaviに転職した当初は、組織文化の違いにも大変驚きました。国連では結果とそれに至るまでのプロセスの双方が重視されますが、企業出身者が多いGaviでは、効果と効率が常に同時に求められます。

 私自身は、互いの長所を学ぶことによって視野が広がったと感じています。配属先の文化に盲目的に合わせるのではなく、自らの経験を生かし、組織に新しい視点を持ち込もうという態度が必要だと思います。

 Gaviは、予防接種という特化した分野で、常に新しいビジネスモデルを追究しているため、保健や開発に加え、金融、法務、財務、資金調達、ワクチン市場の分析など、さまざまな経験の持ち主を募集しています。

 Gaviは、民と官の良い部分を同時に経験でき、若い方にどんどんチャンスが与えられる組織ですが、日本人職員は、私を含めてまだ2人しかいません。こうした分野で専門性をお持ちの方は、ぜひご応募ください。

(出典:「国際開発ジャーナル」2016年11月号)