国際開発ジャーナル


2020.03.01

PROJECT FOCUS ジャマイカ

<有償資金協力>

円借款事業、カリブ海に行く
~大漏水と塩水化へのチャレンジ~


 

ジャマイカ
キングストン首都圏上水道整備事業(ロット2A)

 

コンサルティング:日本工営(株)、モンゴメリー・ワトソン・ハルザー(UK)
施設建設:(株)安藤・間※現社名

 
本邦支援のカリブ地域水道事業

 紺碧のカリブ海に浮かぶ島国ジャマイカに向かう飛行機は、首都キングストンのノーマン・マンレイ国際空港に向け低空飛行での最終アプローチの時、キングストンの西約20km に位置するスパニッシュ・タウン上空を通過する。 その時、飛行機の窓から地上で銀色に光るものに気付く人がいるかもしれない。これが、これから紹介するキングストン首都圏上水道整備事業(ロット2A)で建設された、スパニッシュ・タウン浄水場内の貯水容量8,000m3の浄水タンクである。本事業は、本邦技術協力による1998年の事業化可能性調査に引き続き、2000年のSAPI (SpecialAssistance for Project Implementation)調査を経て、日本のODA有償資金協力事業として、2002年11月に詳細設計のためのコンサルタント・サービスが開始された。その後、2007年初頭より最初の工事が始まり、ロット2Aは2009年9月から18か月の工事契約で着工した。本事業は、総事業費約77億円、そのうち円借款額約66億円の都市水道整備事業である。

漏水と水質悪化へのチャレンジ

 事業対象地域は、現首都名を冠した「キングストン首都圏」であるが、実質的にはキングストンではなく、その西側に位置する首都圏の一部、スペイン統治時代の首都スパニッシュ・タウンとその周辺地域、並びにその南東部で海岸部に位置するセント・キャサリン地区である。事業対象地域での主要な問題の1つは、英国統治時代の1830年 代から整備が始まった水道管が、一部とは言え依然として使用されていた背景もあり、既存水道施設からの漏水による多量の無収水が発生していることであった。無収水量は1997年時点の推定で地域全体平均で約60%、地区によって は80%を超えるところも存在した。2つ目の問題は、事業対象地域内の水道水源の約85%は地下水であり、その内、事業開始時で総給水量の約15%を賄う井戸が、汲み上げ量の増加から塩水化の傾向が高まっていることであった。これらの井戸の汲み上げ量を減らし、代替水源を確保する必要があった。

事業内容

 ロット2Aの工事内容は、新規水源の井戸整備3か所(総揚水量23,000m3/日)、送・配水用コンクリート貯水池(1か所1,400m3)、既存浄水場内の送水ポンプ施設、送・配水本管布設(計22km、管径200 ~ 600mm)、及び浄水タ ンク(8,000m3ボルト留鋼製地上式タンク)である。ここで特筆すべきは、漏水(無収水)対策として、新規送・配水本管の布設と同時に多数の電磁流量計とバルブを据え付けDMA(District MeteredArea)を作ったことである。これ は給水網内に作られた小区画(DMA)単位で水の出入りを把握し、漏水箇所の特定につなげる対策である。漏水の大幅改善は、時として大規模な新規水源に匹敵する有効水量を生み出す。本事業を契機に対象地域の水道事情の安定的改善が期待される。最後に、カリブ海の印象とは裏腹に、この地の治安の悪さは世界屈指である。年間の殺人件数は 1万人を超していた。ロット2A工事でもこの影響は深刻であった。それにも拘わらず、当初の工期内での完了を見た。これは何より、施工企業、コンサルタントそしてジャマイカ側実施機関の良好な関係構築と、それぞれの立場で の合理的な事業運営の賜物であったと信ずる。

 
寄稿:日本工営(株)キングストン首都圏上水道整備事業 所長代理(当時)
現コンサルタント海外事業本部上下水道部 シニア・エンジニア 田辺 勲
『国際開発ジャーナル』2020年3月号掲載