キャリアガイド


あなたの使命をみつけよう

国際協力業界のキャリア情報誌を25年間制作してきたノウハウを生かし、
国際協力の世界で自分だけの使命をみつけるためのリアルな情報をお届けします。

撮影:重野 友紀
国際協力の仕事を行っている国際機関から政府機関、企業、NGOなどの実務者たちの声を掲載。
それぞれの国際協力への思いから、仕事のやりがい、開発途上国の現場で体験した面白い異文化体験、学生時代に取り組んだことなど、国際協力の仕事を志している人を後押しする情報をお届けします。
さらに、各企業・団体のトップインタビューなど国際協力の世界でキャリアを考えるのに必要な情報もお届けします。

キャリア情報 / information


#パシフィックコンサルタンツ #社長インタビュー
パシフィックコンサルタンツ(株)
代表取締役社長 重永 智之氏

1981年大阪大学工学部造船学科卒。
メーカー勤務を経て、87年5月パシフィックコンサルタンツ入社。
取締役事業開発室長、事業開発本部長などを歴任し、2016年12月常務、17年10月専務。
18年10月から現職

日本もグローバル市場の中の一つ

パシフィックコンサルタンツ新社長の重永智之氏に聞

建設コンサルティング企業として成長するパシフィックコンサルタンツ(株)の新社長に、昨年10月付で重永智之氏が就任した。海外事業の基盤と体制の再構築を目指す重永社長に、今後の経営ビジョンを聞いた。(聞き手:国際開発ジャーナル社社長・末森満)

グローバル事業本部を設立

―まず、経営に当たっての抱負からお聞かせください。

パシフィックコンサルタンツ(PCKK)はもともと1951年に米国法人として誕生し、54年に日本法人として設立された。この間、順調に社業が伸びてきたわけではなく、近年では承知のとおり、海外部門の譲渡を余儀なくされるなど苦しい時期があった。東日本大震災に伴う復興需要や東京オリンピック関連の事業などもあり、現在は順調な推移を見ているものの、今後の国内の市場動向を見据え、国際部門を一から立て直していくことが大きな経営課題である。そのため、実施体制を含め基盤を再構築していく取り組みをまさに今、強化しているところだ。海外拠点の拡充については数年前から進めており、すでにシンガポール、ジャカルタに設置済みで、現在はマニラに追加するべく準備を進めており、今後も東南アジアを中心に展開を図っていく方向だ。


―組織体制では「グローバル事業本部」を立ち上げられている。

社長に就任した時、従来の国際事業本部を大幅に拡充し、グロー。バル事業本部を立ち上げた。鉄道、設備、航空、建築の各部門を統合し、情報の共有など、横断的で風通しの良い体制作りに留意した。単に「国際」という視点で切るのではなく、世界全体をグローバルな視点で捉え、日本もその中の一つのマーケットに位置付けていく、今回の組織再編の大きな狙いはこうした営業アプローチの確立にある。

グローバル事業本部の陣容は、派遣、アルバイトも含め現在360人。前身の国際事業本部の130人に国内事業本部を加え、同じグローバル事業本部として一体にする形で思い切って拡充した。国内の仕事だけをしていると、海外業務に対して構えてしまう傾向が見られる。国内、海外の垣根を一切取り払い、日本のマーケットもグローバル市場の一部なんだという考え、姿勢を徹底して浸透させていきたいと考えている。

高松空港の運営に参画

―「質の高いインフラ輸出」政策に伴い、政府開発援助(ODA)分野でも特に鉄道系の大型プロジェクトが注目を集めています。

当社の海外部門の50%強は鉄道分野が占めている。インド、フィリピン、インドネシアなどの大型軌道系プロジェクトに参画している状況だ。今後は、ハード的な整備に加え、駅を起点とした沿線開発に着目しており、いわゆる“結節点”周りの開発事業にも注力していく方向だ。アジアを主体に、こうした開発需要は一層膨らんでいくと見ており、是非とも参画していきたい。グローバル事業本部に建築部門を置いた背景もこの点にある。


―官民連携分野など新しい事業領域への取り組みは。

サービスプロバイダー業務の経験、ノウハウを少しずつ積み上げている。国内では、昨年4月から事業者側の一員として高松空港の運営に参画しており、私たちは豊富なコンサルティング業務の経験を生かし、空港を基軸にした地域開発や活性化にサービスとアイデアを提供していきたいと考えている。空港ビルではモノが売れる。そこでどう稼いでいくか。こうした商業系の領域は私たちの得意とするところだ。

海外では、民間が空港運営にあたるのが当たり前のようになっており、国内でノウハウを磨き、開発途上国の運営事業などに対しても積極的に参画していきたい。サービスプロバイダーと計画系を統合して「社会イノベーション事業本部」を立ち上げており、この部門を主体に官民連携領域の拡大に取り組んでいく。

ただ、着実に利益を上げていく構造までいっていないのも事実であり、基幹となる交通基盤系や構造基盤系部門がしっかり支えていくことが必要である。広がる海外提携ネットワーク―実施体制の整備と人材の確保は不可分の課題です。円滑な海外展開には人的な拡充も欠かせない。

一番時間がかかるし、頭を悩ます課題だ。私たちの仕事にとって情報はきわめて重要なものであり、どうしても現地でないと収集できないという情報がある。しかも、そうした情報は重要なものが多い。当社は、例年3~4人ほどのペースで外国籍の人材を採用しているが、彼らの母国を含め、やはり現地に強い人材の確保という目的がある。ちなみに、今年度の新卒採用者は58人で、うち20人が女性、外国籍は3人という状況だ。グローバル事業本部では20人強が外国籍人材になっている。


―M&Aについては。

当然、視野に入れながら取り組んでいくことになると思う。他方、海外コンサルティング企業とのアライアンスは増えており、人材の派遣など提携関係は広がっている。最近では、中国最大のコンサルタント「中国国際工程諮詢有限公司」と協力覚書(MOU)を結び、

第三国におけるインフラ整備に協力し合いながら取り組んでいく。MOUを結んでいる海外コンサルタントは、欧米系のほか、韓国、中国、フィリピン、インドネシア、タイの計6社で、今後ともアジアを中心に、連携協力のネットワークを広げていきたいと考えている。

創業以来のDNA

―売り上げ目標を教えてください。

業績的には、ようやく500億円に届こうかというところまで来た。これを2030年には1,000億円にすることを目標に掲げている。ただ、現在はまったく先の見えない時代であり、中期経営計画を策定したとしても、わずか1年先の見通しが立たないこともある。

これだけグローバル化やICTが進展してくると、社会や市場環境はあっという間に変貌する。若い社員には、車が空を飛ぶようになったら道路構造はどうなるか、考えておけと話しているが、こうしたことを少しでも考えている人材がいるかどうかで会社の活力はかなり変わってくる。臆せず「新しいことにチャレンジ」し、「国家的プロジェクト」に中心的に関わっていくことは、創業以来のわが社のDNAだ。PCKKの存在意義もそこにあると考えている。

※掲載
『国際開発ジャーナル』2019年1月号

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#パスコ #社長インタビュー

創造性を高めて「利益体質」に

創造性を高めて「利益体質」に

測量業界最大手の(株)パスコの新社長に、6月付で島村秀樹氏が就任した。東京オリンピック後の国内事業の停滞が懸念される中、同社の舵をどのように取るのか、島村社長に聞いた。(聞き手:(株)国際開発ジャーナル社社長・末森満)

新たな事業領域に挑戦

―パスコの新社長として今後の抱負を教えてください。

パスコグループは、今年、「中期経営計画2018-2022」を策定し、グループ連結営業利益額の倍増を目標に掲げた。とりわけ、2020年の東京オリンピック以降は、公共事業の受注が伸び悩むと見込まれるが、そうした中でも安定的に成長できる利益体質の会社を目指したい。

そこで、第一の方針として「データ流通社会の到来に向けた事業戦略の転換」を図る。パスコは創業以来、地図づくりや航空写真・衛星画像の提供を軸としてきたが、今後は地図や写真から得られる知見を分析・可視化・流通する新たなサービスにシフトする。

例えば、2016年に官民データ活用推進基本法が施行され、今後ますます国や自治体のオープンデータ化が進むと見られるが、パスコはそこから新たな官民連携のビジネスを生み出していきたい。現在、自治体のオープン化された各種データを集約しワンストップで用者に提供するサービスなどを検討している。

中期経営計画では、このほかにも公共・民間・海外・衛星事業の相互連携による事業開や、既存事業のさらなる深化、継続契約型ビジネスの加速なども盛り込んでいる。ビジネスモデルの転換を図りながら、新たな事業領域に挑戦していきたい。


―パスコは人工知能(AI)をはじめとする先端技術の活用が進んでいます。

中期経営計画では、もう一つの方針として「新たな空間情報の活用を見据えた将来への投資」を掲げている。

例えば、インフラ施設の老朽化を調べるには、地図や写真の提供だけでなく、空間情報の「変化」を抽出することが重要だ。そこにAIなどの自動化技術を使えば、そうした変化をリアルタイムで抽出・解析する効率的で付加価値の高いサービスを提供できる。

他方、生産ライン上のさまざまな業務にも、こうした自動化技術を積極的に組み込み、原価低減を図る。サービスの拡張とコスト削減の両面から自動化技術を活用していきたい。

3次元地図で業界をリード

―海外事業のビジョンを教えてください。

東京オリンピックまでの2年間は日本国内の事業が順調と見られるが、それ以降は海外事業の拡大に比重を置きたい。

その際に、日本国内での事業経験をいかに海外に展開できるのかがカギを握る。海外でも、従来のような「基本図」をつくる事業は今後伸びないと見られるため、例えば、土地評価やインフラ整備・維持のための地図など、使用目的に合わせた地図づくりを仕掛けていきたい。

また、パスコは日本の物流企業などに対して、地理空間情報を活用した配車計画・移動体管理のソリューションを提供している。こうした企業の海外物流にもソリューションを提供できるのではないかと考えている。


―具体的にはM&Aなどで海外展開を図る方針でしょうか。

もちろん、現地企業とのM&Aが有効なケースもあるが、やはり単なる地図づくりなどでは相手企業とシナジーも生み出しにくく、現地市場で競争力を確保することが難しいのが現状だ。

そこで、パスコは親会社のセコム(株)の「技術供与型モデル」を参考にしながら、新たなビジネスモデルの検討も進めている。パスコの技術を求める現地企業に対して出資や人材派遣、ソフトウェアの提供などを行い、その対価を得るといった柔軟なビジネス展開を図りたい。


―測量業界全体の国際競争力を高めるには、どうすればよいでしょうか。

日本国内ではこれまで2次元地図が主流を成しているが、既に3次元地図のニーズが高まっている。例えば、自動車の自動走行には道路の形状を正確に把握できる3次元地図が有用であるが、日本国内ではまだまだ標準地図が作られていない。

この点、パスコは自動走行用の3次元地図の整備を行う「ダイナミックマップ基盤(株)」に、2016年の立ち上げ当初から、測量会社として唯一出資している。パスコが3次元地図づくりで測量業界全体をリードし、将来的には、この経験を海外展開につなげていきたい。

「しなやかマインド」を培う

―グローバル人材の育成も各社の大きな課題となっています。

パスコでは、これまで「PASCO大学」と銘打ち、中堅社員を対象とする幹部育成プログラムを実施してきたが、より未来の事業創出を担う若手人材の育成に軸足を移すべく、2018年に「PASCO大学若手育成塾」を開設した。初回は約30人が参加し、パスコが実際に抱える課題への解決策を検討してもらっている。この中で、将来を担うグローバルな人材やイノベーティブな人材を育てる。

また、今後は、海外事業の中枢を担う人材に博士号などのタイトルも必要だと考えている。私自身も1990年代前半にかけて海外事業に携わる中で、私費で博士号を取得した経歴がある。海外市場では博士号取得者が多く、パスコの技術に対する信頼を獲得するためにも博士号取得者の積極的な活用を検討していきたい。


―新たな事業に挑戦するためにはイノベーティブな人材の力も必要不可欠だと思います。

パスコの強みは、まじめで実直な技術力と顧客から圧倒的な信頼を得ている営業力、そしてそれらを地道に支える本社組織だ。

だが、「まじめで実直」というのは、裏を返せば「頭が固い」一面があるということでもある。今後、パスコがさらなる成長を遂げるには、社員一人一人が専門領域を磨き上げると同時に、新たな分野に失敗を恐れることなく挑戦することが必要で、そのためにも社内全体で「しなやかマインド」を養うことが重要だ。創造性と活力に満ちた企業に育てていきたい。

※掲載
『国際開発ジャーナル』2018年9月号
(株)パスコ
代表取締役社長 島村 秀樹氏

1980年に千葉大学大学院工学研究科修士課程を修了後、パシフイック航業(株)(現・(株)パスコ)に入社。
システム・コンサル事業部長などを経て2010年に取締役に就く。14年に中央事業部長、17年に常務取締役などを経て、現職。
東京都出身、64歳