国際開発ジャーナル


2020.05.01

PROJECT FOCUS ミャンマー

<有償資金協力>

老朽化した水路を整備し農業生産高と農家収入の増大を図る


 

ミャンマー
バゴー地域西部灌漑開発事業

 

コンサルティング:(株)三祐コンサルタンツほか

 
灌漑率はわずか6%

 農業は、ミャンマーにおいて国内総生産(GDP)の約3割を占める重要な産業で、食糧自給だけでなく輸出面でも大きく貢献している。同国政府は1980年代後半から235のダム灌漑施設を建設するなど、農業の生産性向上に努めて きた。だが、2014年時点の灌漑率は10%にとどまり、周辺の東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国の平均値である22%を下回っていた。この事態を重く見た同国政府は、2012年に策定した「第5次5カ年計画」のプログラムの一つに灌漑面積の拡大を掲げた。特に、最大都市ヤンゴンから約250km離れた同国南部のバゴー地域は、年間降水量が約1,100mm と少ないにもかかわらず、灌漑率は6%と国内でも低い水準にある。最大の原因は、老朽化により灌漑施設の機能が低下したことだ。中でも、本事業の対象となったバゴー地域西部は、同国政府が外国の援助機関向けプロポーザルにリストアップした「特に緊急の改修・整備が必要とされる灌漑地区」の一つでもある。

水利組合の設立も支援

 国際協力機構(JICA)は、1980年代からミャンマーの集約的農業支援に力を入れている。このうち灌漑セクターでも、日本の無償資金協力によって建設した灌漑技術センターを活用して政策立案、人材育成の支援などを行ってきた。そして、円借款を通じ実施された本事業では、バゴー地域西部のピィ郡の3地区(北ナウィン灌漑地区、南ナウィン灌漑地区、ウェジ灌漑地区)、およびタヤワディ郡のタウンニョ灌漑地区で、灌漑施設を改修・整備し、生産高の増大を図った。対象地域の面積は全部で約10万haに及び、現地の農家を中心として約11万7,000人が受益者となる。 具体的には、工事に必要な機材(掘削機、ブルドーザー、農機など)を調達し、幹線水路や二次水路、管理用道路など灌漑に必要な施設を改修・整備した。これにより、土水路がコンクリートで舗装され、水が無駄なく農地に行き渡った。水路を整備することで、これまで灌漑水が行き渡らなかった水田にも必要な時期に水が届くようになり、乾季の稲作もやりやすくなった。加えて、農家自身が水路を管理できるようにするため、現地で水利組合の設立も支援した。

農家の評判も上々

 2019 年6月24日、ウェジー灌漑地区で完工式が開かれた。来賓として同国の農業畜産灌漑大臣、JICAミャンマー事務所長などが出席し、記念碑の除幕を行った。本事業の対象となった地域では、農家の人々もこのプロジェクトを高く評価している。季節を問わず十分な水が農地に行き渡るようになったほか、水利組合ができたことによって灌漑水をめぐる争いがなくなった。「農家同士の結束力が強くなった」「政府の水資源管理局と密に連携できるように なった」などという声が多く聞かれた。農地の拡大や作付けの多様化などにより、今後は生産性や農家の収益が上がるとの期待は大きい。一戸当たりの農業の粗収益額は、2012年と比べて事業完成の2年後には約1.4倍になるとの試算もある。管理用道路が農作業、作物の運搬だけでなく子どもたちの通学や傷病者の搬送にも役立つなど、現地の人々の生活は早くも向上している。

 
『国際開発ジャーナル』2020年5月号掲載