国際開発ジャーナル


2020.04.01

コンサルタントの展望 vol.7
国際開発センターのトップに聞く

(株)国際開発センター 代表取締役社長 寺田 幸弘氏
慶應義塾大学経済学部卒業。(公財)日本生産性本部勤務を経て、バブソン経営大学院にて経営学修士(MBA)を取得。1994年(財)国際開発センター入職。2010年(株)国際開発センター専務取締役就任、2015年から現職

 

 
  

部を新設し自主事業にも注力 
-商品・サービスの開発に挑戦

  
 
連載「コンサルタントの展望」は、開発コンサルティング企業のトップに今後の戦略をはじめ、政府開発援助(ODA)への展望を語ってもらうリレー連載だ。第7回目はソフト案件のコンサル ティング事業と人材育成事業を手掛ける(株)国際開発センター(IDCJ)の代表取締役社長、寺田幸弘氏に今後の事業戦略を聞いた(聞き手:国際開発ジャーナル社 社長・末森 満)

 

企業向けサービスを強化

―事業の現状と課題は。

 当社は地域・経済開発計画の策定、行財政能力の強化、人材育成など、ソフト系の業務を受注してきた。当初は援助政策の策定に資する基礎調査、分野横断的な調査などが中心だったが、昨今は技術協力プロジェクトに参加する機会が増え、教育開発や農村開発などの分野別の調査やプロジェクト、評価業務へと軸足が移っている。以前は省庁の調査案件の比率が高かったが、今や当社の売上の9割が、国際協力機構(JICA)が委託するODA案件だ。だが、事業の安定性を考えると、単一クライアントへの依存はリスクを高めることになる。そこで、国際機関などからの受注を増やす努力をしている。最近ではアジア開発銀行(ADB)や日本赤十字社(JRCS)、非政府組織(NGO)などから仕事をいただくことが増えてきた。売上全体に占める割合はまだ1割ほどだが、取引するクライアントの数は増加傾向にある。平和構築やガバナンスなどを主題にしたテーマ型の仕事や、持続可能な開発目標(SDGs)関連の案件も増えている。 2018年には新たに「SDGs室」を設けた。同室は、企業による統合報告書の作成をサポートするほか、企業のSDGsへの対応について解説する企業向けセミナーを開催している。引き続き、こうした民間セクターとの連携にも積 極的に取り組んでいく予定だ。―2019年6月には、保健医療や評価などを手がけるグローバルリンクマネージメント(株)(GLM)から事業を引き継ぎました。事業継承によって、これまで実績が乏しかった保健分野を強化することができた。また、GLMには国際機関での勤務経験者が多く、国際機関の業務を熟知しているほか、人脈もある。GLMが有する見識やネットワークを継承することで、IDCJの業務により一層の広がりを持たせたい。

 

外部を束ねる能力を求める

―JICA案件の内容に変化はありますか。

 IDCJが対応している分野は大きく変わらないが、分野ごとに案件内容が多様化し、高い専門性を要求するものが増えてきている。その上、案件の指示書には要件が細かく記載されるようになり、解決策をコンサルタントが提案する従来型の案件はなくなってきているのが現状だ。JICAは、案件の詳細を自身で考えたいのではないか。実際、JICA内部で考え出した案件を外部に発注しているように思える。指示書で詳細を指定していても、業務開始後、現場の実態が明らかとなり、計画が変更となることも多く、さまざまな面で非効率だ。もう少し、計画の策定段階からコンサルタントによるインプットを増やしても良いのではないか。

―案件の多様化・細分化には、どのように対応していきますか。

  JICAが提示する指示書には、例えばデジタル技術やモノのインターネット(IoT)など、高度な技術を要する要望も多い。当社内には知見が限られる上、業務量の面から自前で人を雇用するのも難しく、対応するには他社の力を借りなくてはいけない。重要なのは、外の人を上手く動員し、業務を円滑に回すマネジメント能力だ。業務に携わる人月数も限られる中、上手く綱渡りしながら高い評価を得られるように実績を残さなくてはいけない。それができる人材を確保することが重要だ。現在、当社には研究員が数多く在籍しているが、こうした現状を踏まえて、研究員には各分野の専門性とともにマネジメント能力も求めている。専門分野一本で勝負していきたいコンサルタントにとっては厳しい時代といえる。

 

ビジネス人材による新規事業も

―開発業界で生き残るための方策は。

 自社の強みを明確に説明できることだ。そうでなければ、誰もわれわれと組んでくれなくなる。案件が多様化していることを考えると、同業者とだけ連携すれば良い時代ではなくなっている。海外経験はないが高い技術を持つ企 業などとも協力する必要がある。今後ますます、こうした企業との関係構築が重要になる。また、常に受け身で提示された問題を解決するだけでは、根無し草のコンサルタントになってしまう。パートナーとして発注元と対等に仕事をしていくためには、自前の事業も持つことで、自らの強みを活かしてよりプロダクトアウトな形で仕事が出来るようにならねばならない。

―2019年の「ビジネスコンサルティング部」の新設も、自前の事業を行っていくためでしょうか。

 同部は、ビジネスコンサルティングの受託ももちろんだが、独自で商品やサービスを開発・提供することを目指している。受託コンサルティング事業は自主事業に比べ投資も少なくリスクが低い。しかし、それだけでは業界の外にアピールできる特徴を持ちにくい。一つでも自前で事業を立ち上げ実施すれば、独自のビジネスノウハウが得られ、それが他社との協業に向けたアピールポイントにもなる。また、顧客の要求に直に触れ、認識する機会となる。  社会が抱える課題の解決は重要だ。解決にかかるコストが低ければなお良い。一方で、どうしても欲しいものや憧れているものを手に入れるためには、人は出費がかさんでもお金を払う。そのような商品やサービスを生み出すことが経済の発展につながる。当社は「憧れの創造」に知恵を絞りたい。

―新規事業を担う人材の確保は。

 ビジネスコンサルティング部では、ビジネス経験が豊富な人材を数名採用した。“国際協力”や“開発協力”という括りにとらわれない、柔軟な発想とビジネスを形にする力を期待してのことだ。現在、彼らの提案から新規事業が生まれつつある。「この仕事を手掛けるなら、こんな人が必要だ」といった話も今後、具体的に出てくるだろう。もちろん若手の人材も求めていく。しかし、コンサルタントは経験が勝負だ。コンサルタントを目指すのであれば、まずは数年間、地に足のついたビジネス実務を経験していただきたい。その上でお越しいただければ、当社でも活躍していただけるだろう。

『国際開発ジャーナル』2020年4月号掲載
#コンサルタントの展望 #国際開発センター