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青山学院大学 地球社会共生学部

2050年の社会を見据えて

 近年、欧米などの先進諸国が不況に苦しむ一方、新興国や開発途上国は急速な経済成長を遂げている。実際、2050年までに、アジアの国々のGDPの総額は世界のGDP総額の5割以上に達すると言われている上、アフリカ諸国のGDP総額も約2割に成長すると見込まれている。しかし、これらの国々では、貧困や紛争、環境破壊など、多くの課題が山積しているのも事実だ。
 青山学院大学は、新興国や開発途上国の人々と共に働き、世界の共生と発展に貢献する人材の育成を目指し、2015年4月、「地球社会共生学部」を新設した。

4つの領域で実践力培う

  昨年、開設65周年を迎えた青山学院大学。設立当時から英語教育に注力し、1982年には国際公務員の養成を目指す「国際政治経済学部」を設立するなど、常に先駆的な取り組みを進めてきた同大学が、新たな挑戦に踏み出した。「社会科学系のグローバル人材育成」を掲げる「地球社会共生学部」の新設だ。学部長の平澤典男教授にその狙いを聞いた。

成長地域と共に  

 日本では近年、少子高齢化の進展を受け、新たな労働力として女性や高齢者の活用を進めている。だが、現在の大学生が社会の牽引役となる2050年頃には、総人口自体が減少するため、市場や労働人口の縮小は避けられない。こうした中でも日本の国力を維持するためには、今後の成長が見込まれる新興国や開発途上国の人々の活力を日本に取り込み、彼らと共ビジネスを行うことが必要となる。
 さらに、日本全体にグローバル化の波が押し寄せる中、今後は国内勤務か海外駐在かを問わず外国人と共に働く可能性が高い。こうした状況を見据え、外国人と共に働く力を持った人材を育てることが、今回の新学部設立の狙いだ。  しかしながら、すでに多くの大学がグローバル人材の育成に取り組んでいる。さらに青山学院大学としてもこれまで長年にわたり英語教育に注力してきたことから、「今さらなぜグローバル人材の育成に特化した学部を新設する必要があるのか」と疑問に思う人もいるかもしれない。
 そうした疑問の声に対しては、「地球社会共生学部で目指すのは社会科学に通じたグローバル人材の育成だ」と強調したい。新興国や開発途上国で問題を解決し事業を営むためには、その国の政治や法律、経済に対する深い理解が必要だ。青山学院大学は、戦後以来、社会科学分野で多くの人材を輩出してきた。この歴史の中で培われた力を生かし、新学部ではグローバル人材にとって最も重要な社会科学の力を習得してもらうことを目指す。これにより、日本全体が抱えるグローバル人材の層も厚くなることが期待される。

世界の開発課題に対応  

 新興国や開発途上国は、急速に経済成長を遂げつつある一方、貧困や差別、紛争、情報格差、環境問題などの開発課題が未解決のまま残されている。こうした問題を現地の人々と共に解決していくことこそ、現地と日本が共に繁栄し、地球全体の共生の実現につながる方策だ。
 地球社会共生学部では、次の4つの領域を設け、新興国などの開発課題に対応できる人材を育成している。国際協力論や貧困問題などを学ぶ「コラボレーション領域」、国際経済学やアジアの都市インフラの課題などを学ぶ「ビジネス領域」、ジャーナリズム論や地理情報システム(GIS)をはじめとする空間情報の利用について学ぶ「メディア/空間情報領域」、そして社会学全般を学ぶ「ソシオロジー領域」だ。
 学生は、1年次に各領域の基礎を修得した上で、2年次以降は自身が特に強い関心を持っている分野を深め、社会科学の視点から開発課題を多角的に考える力を身に付ける。

留学は必須

 さらに、地球社会共生学部では、2年次後期か3年次前期のどちらかで、タイやマレーシアなどにある協定校への「フィールドワーク型留学」を必須としている。学生は、留学前に現地の社会課題の中から1つテーマを選んで調査を企画し、留学中にフィールドワークを行い、帰国後にその結果を報告することが求められる。こうした取り組みを通じて、彼らはビジネスなどの現場で応用可能な実践力を身に付けることができるのだ。
 一般的に日本の大学は、同じ社会科学系であっても「経済学部」「法学部」という具合に縦割りになっていることが多い。しかし、地球社会共生学部では、社会科学系のすべての学問を修めることができるため、学生はさまざまな可能性を試すことができる。ぜひ、一人でも多くの若者にこの新学部で学んでもらい、2050年の世界を見据えつつ多様な分野でグローバルに活躍してほしいと思う。

【School Data】

<学部概要>
入学定員:190人
就学キャンパス:相模原キャンパス(1~4年次) 
学位:学士(学術)
<養成する人物像>
1、語学力に裏打ちされたコミュニケーション能力
2、主体性、積極性、協調性、リーダーシップなどの能力
3、自己アイデンティティーを土台にした異文化共感力
4、社会科学の幅広い素養に基づいた専門的能力
5、地球上の人たちに貢献したいと思う「こころ」
<留学協定校>
チュラロンコン大学(タイ)、タマサート大学(タイ)、カセサート大学(タイ)、チェンマイ大学(タイ)、ほか
学部に関する最新情報は地球社会共生学部のWebサイト http://www.gsc.aoyama.ac.jp/をご参照ください

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【大学の国際化最前線】愛知大学・現代中国学部

中国の「今」を専門的に学べる日本唯一の学部

【徹底した現地主義教育】

 日本初の海外高等教育機関として1901年に中国・上海に設置された東亜同文書院を前身とする愛知大学は、1946年の建学以来、国際的教養と視野をもった人材の育成に注力してきた。

 中でも注目されるのが、1997年に創設された「現代中国学部」の取り組みだ。1980年代より急速な経済発展を続けている中国と日本の交流促進が、今後ますます重要になるとの展望の下、東亜同文書院時代から脈々と培ってきた現地の大学との太いパイプを生かしつつ、中国の「今」を専門的に学べる日本で唯一の学部として設立された同学部は、これまで両国間のビジネスなどで活躍する多くの人材を輩出してきた。

 同学部の最大の特長は、「現地主義教育」の徹底だ。同学部では、まず、すべての学生が2年次に中国の提携中国・天津の南海大学に4カ月にわたる短期留学を行い、中国語や中国文化を学ぶ。また、3年~4年次には、中国各地でフィールドワークを行ったり、中国に進出している日系企業でインターンシップに参加することが推奨されている。さらに、卒業までに半数以上の学生が漢語水平考試(HSK)5級(中国の大学に本科生として留学できる水準)に合格することが目標に据えられており、中国人教授による中国語の専門講義など、レベルの高い語学教育も行われている。同学部から中国をはじめ海外の大学に短期・長期で留学する学生数は、年間延べ300人を超すという。

 こうした取り組みが評価され、同学部は2012年度文部科学省の「グローバル人材育成推進事業(特色型)」に採択された。4年間の在学で日本・中国など双方の大学の学位が取得できる「ダブル・ディグリー・プログラム」の創設や、日本からの留学生をサポートするための常設の上海などに現地事務所の開設も予定されており(天津事務所は2013年度開設済み)、これまで以上に「現地主義教育」を強化していく。

中国への短期留学中に現地の大学生と交流する日本人学生

【日本理解・発信力も重要視】

 加えて、同学部の新たな試みとして注目されるのが、今年度から開始された「さくら21プロジェクト」(日本理解・発信力養成プロジェクト)だ。

 砂山幸雄副学長は、「グローバル化が進む現在、異なる文化的背景を持つ人々と交流する上で重要となるのは、日本語であれ、外国語であれ、“何を語るか”“どのように伝えるか”ということだ」とした上で、「語学力養成・異文化理解に加え、自国理解と発信力を養うのが当プロジェクトの目的」だと話す。そのため、同プロジェクトでは、日本人学生が自国の社会・歴史・文化などを改めて振り返り、理解を深め、学生自らワークショップの運営に取り組んだり、提携校の中国人学生に対して日本を紹介するイベントを行うなど、学生が主体的に思考・発信する「アクティブ・ラーニング」を積極的に取り入れている。

 同学部の取り組みをモデルケースとして、同大学では今後、全学的にさらなるグローバル人材育成の取り組みを展開していく予定だ。

 領土・歴史問題をはじめ、難しい局面が続く昨今の日中関係だが、「現地主義教育」に基づき中国と日本の両国に対する深い理解を併せもった人材育成に注力する同学部の取り組みが、今後、どのような成果をもたらすか。今後の展開が期待される。