体育・健康・スポーツ」カテゴリーアーカイブ

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【大学の国際化最前線】日本体育大学 スポーツ文化学部スポーツ国際学科

新学科を創設 スポーツ通じた国際貢献目指す

(「伝統文化交流実習」で、シンガポールで実施されたワークショップの様子)

【協力隊派遣の協定を締結】

 1891年に創設された日本体育会を起源に持ち、125年以上の歴史の中で、多くの体育教員やスポーツ選手を輩出してきた日本体育大学。日本の体育教育の中核とも言えるこの大学で、近年、
急速に国際人材育成の動きが進んでいる。

 2014年4月に、まず学生の海外留学を推進する組織として国際交流センターを設立。同年8月には、国際協力機構(JICA)との間で学生の青年海外協力隊への派遣に関する協定も締結した。そして今年4月には、スポーツを通して国際貢献できる人材の育成を目指し、スポーツ文化学部スポーツ国際学科を新設した。

 日体大では、体育教師を目指す学生が8割を占めるが、近年は、国際教育に取り組む小学校や中学校が増えている。また、地方自治体でも、スポーツを通じた海外との交流が増えつつあるなど、体育やスポーツ分野で国際的な視野を持つ人材へのニーズが高まっている中、新学科の募集では、100人の定員に対して7倍近い学生が殺到したという。

【開発途上国で役立つユニークな授業】

 海外、特に開発途上国で役立つスキルや、異文化理解力を身に付けるため、新学科ではユニークな科目が用意されている。
 例えば、開発途上国のスポーツを学ぶ「エスニックスポーツ実技」では、皆でミャンマー語を話しながら「チンロン」というミャンマーの伝統球技を習得する。

 また、運動用具も不足しがちな開発途上国では、現地の人々に、どのように運動の意義や楽しさを伝えるかが問われる。そのため、「スポーツ国際実習」では、英語で会話しながら、道具を使わずにスポーツを指導する技術を学ぶ。

 さらに、長期休暇を利用した海外でのボランティア活動も予定されている。

 日本体育大学では、オーストラリアやドイツ、ハワイ、シンガポールなどで、武道や日本の伝統芸能に取り組む若者と交流する「伝統文化交流実習」を2003年から実施してきた。その引率を担当し、今年からスポーツ文化学部長を務める八木沢誠教授は、「海外で日本の武道に取り組む人々は、武道の中に込められた、相手への思いやりや礼儀などの日本的精神を真摯に追求している」とした上で、「こうした人々に触れることは、日本の学生たちにとって、自国の文化を見つめ直し、国際人として成長する上でいい刺激となる」と強調。新学科で海外経験をする学生が増えることに期待を寄せる。

 日本政府は現在、2020年に開催予定の東京五輪に向け、官民を挙げて開発途上国にスポーツ分野で貢献することを目指すイニシアチブ「スポーツ・フォー・トゥモロー」を推し進めている。こうした中、新学科がどのような花を咲かせるか、今後が楽しみだ。

【Access】

東京・世田谷キャンパス
〒158-8508
東京都世田谷区深沢7-1-1
URL http://www.nittai.ac.jp/

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【私のキャリアパス】住化のマラリア対策をけん引 NPO設立しアジアで啓発活動

Malaria No More Japan
専務理事
水野 達男 さん

【水野さんのキャリアパス】
22歳 北海道大学農学部卒業後、米系化学会社に入社。営業や企画業務に携わる
32歳 米薬品会社に転職。マーケティング・マネージャーに。その後、営業本部長や役員などを経験
44歳 住友化学(株)に入社。南北米州の海外部門や国内園芸会社の役員などを担当
52歳 同社生活環境事業部ベクターコントロール部長に。翌年、同部の事業部昇格に伴い、初代事業部長に就任
57歳 マラリア・ノー・モア・ジャパンを設立。専務理事に就任

【アジアに特化】

 住友化学(株)で「オリセットⓇネット」をアフリカ展開するなど、マラリア感染症の予防・対策に取り組んできた水野達男さん。昨年10月に同社を離れ、特定非営利活動法人「マラリア・ノー・モア・ジャパン」を立ち上げた。今後は日本をはじめとするアジア地域で、マラリア根絶を目指す活動に取り組んでいく考えだ。
 水野さんは「これまでアジア地域に特化したマラリア対策に取り組むNPO法人はありませんでした」と話す。

 日本で暮らしていても、今ではマラリアの恐怖に触れることはほとんどなくなった。しかし現在でもなお、世界人口の約半分がマラリア感染の脅威にさらされている。世界保健機構(WHO)の調査によれば、2010年には約65万人が犠牲に。このうち、9割がサブ・サハラ以南のアフリカで発生し、その多くは5歳以下の子どもたちだった。1分弱の間に1人の子どもが犠牲になっている計算であるという。

 水野さんは「マラリアは、実は治療法や予防法が比較的確立された感染症です。そのため、防虫加工を施した蚊帳を吊るすなどしっかりと予防するとともに、早期の正確な診断、適切な治療を実施することで、たとえ現在置かれた栄養状態が悪くても、犠牲者を減らすことができるのです」と強調する。

 例えば100円あれば、診断キットと治療薬6錠を購入できる。“ワンコイン”で子ども一人に十分で適切な初期治療が可能な計算だ。
 実際に、これまで国連機関など国際社会全体でこうした蚊帳や治療薬を提供するといった取り組みに力を注いできたことが功を奏し、2000年からの10年間でマラリアによる世界の死亡率は20%以上も減少したという。

 とはいえ、命を落としてしまう感染者がアフリカ地域で依然として多いのは、予防や治療のための体制や環境が整備されていないことが理由。アジアでも、実は感染する人の数はアフリカに次いで多いという。

【初代事業部長】

 そうした状況にあるマラリアだが、予防にあたって特に有効な手段の一つが、水野さんも手がけてきた蚊帳だ。マラリアを引き起こすマラリア原虫を媒介する“ハマダラカ”は夜行性であるため、睡眠時に蚊帳を張っておけば予防効果も大きい。
 取り分け、住友化学のオリセットネットはポリエステル製の蚊帳の糸に防虫剤を練り込んだもので、今では1つ当たり3ドル50セント前後と比較的安価。防虫効果も5年以上も続くなど、マラリア感染予防にあたって「まさに理にかなった技術」(水野さん)なのだ。

 水野さんが住友化学に入社したのは、1999年。当初、南北米州の海外部門に所属した後、同社が買収した国内園芸会社の役員を務め肥料や農薬を販売するなど、主に農業部門を担当してきた。

 その後、2007年にオリセットネットを扱う生活事業部ベクターコントロール部に異動。そしてその翌年には同部の事業部昇格に伴い、初代事業部長に就任し、タンザニア・アルーシャ工場の立ち上げから昨年10月の退社までの約6年、オリセットネットの事業拡大に努めてきた。

 水野さんは「この事業部に来て初めてアフリカとのお付き合いが始まりました。6年間で30カ国足らずを訪れましたが、1年のうちほぼ半分をアフリカで過ごすなど、海外出張の多い仕事でした。それまでの業務と最も大きく異なっていたのは、命にかかわる仕事だということです。普及のためのキャンペーンを実施したり、国際機関と一緒に仕事をするなど業務内容も幅広いものでした」と振り返る。

【現地が主役】

 タンザニアでは、生活習慣や文化も日本とはまったく異なり、事業基盤も信用力も知名度もない中でのスタートだったが、“現地が主役”をキーワードに事業の定着に向けて地道に取り組んだ。今では現地で7,000人を雇用するなど工場も拡大し、11年にはケニア全土に展開するスーパーマーケットで扱ってもらえるまでになった。

 12年にはアフリカの農業や公衆衛生の取り組み向上を後押しする研究所「アフリカン・テクニカル・リサーチ・センター」を設立している。

【年8万キロを走破】

 もともと水野さんは、北海道大学農学部を卒業した後、米系化学会社に入社。同社では日本支部で北海道地区を担当し、「年8万キロを走破するなど、営業に駆け回る日々でした」(水野さん)。そうした業務を4年ほど続けた後、企画部門に4年、九州営業所長を2年務めるなど計10年間勤務。水野さん自身、この期間を「下積み時代」と呼ぶほどがむしゃらに仕事に打ち込んだ。
 同社を退社した後は、米系薬品会社に転職。マーケティング・マネージャーに就任した。この企業は買収したりされたりするなど紆余曲折を経たものの、水野さんは所属した12年間で、営業本部長や役員として会社経営についての実務経験を積み重ねることができた。

 新設したNPO法人では、今後、古巣である住友化学をはじめとした企業やビル&メリンダ・ゲイツ財団といった団体の支援を受けながら、マラリアの実態や治療・予防法に関する啓発活動や政策提言活動を展開する方針だ。
 同時に、発生国・地域で根絶に向けた取り組みを支援する活動を行っていく。活動にあたっては、米国に本部を置くNPO法人、マラリア・ノー・モアとも連携を図る。
 第一弾として、例えば4月25日の「世界マラリアデー」に合わせてイベントを開催。また、6月1~3日に開催予定の「第5回アフリカ開発会議(TICADV)」でも、サイドイベントやキャンペーンを実施する計画だ。さらに、啓発活動を促進するためのコミュニケーションツールの開発に取り組むほか、啓発活動の成果を測るためのベンチマーク調査も毎年行いたい考えだ。

【「もっと身近に感じて」】

 水野さんは「日本の方たちにも、自分にとって遠い存在であっても、身近なものに感じてもらえるようにしたい」と語る。
 マラリアが救える病気であること、そして治療や予防が可能であることを発信し続けることで、アジア、ひいては世界のマラリアの根絶を目指す。

(出典:「国際開発ジャーナル」2013年3月号)

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帝京大学大学院 公衆衛生学研究科(専門職大学院)

世界で活躍する公衆衛生の実践者を育成

【学生の声】

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公衆衛生学研究科 高橋 永知さん

公衆衛生を 体系的に学べる場所

アパレル店で働いていた時、青年海外協力隊出身者が偶然来客し、わずか15分話しただけですが、「こんな仕事があるのか」と心惹かれました。そして途上国で生かせる専門性を身に付けようと看護学校に通い、その後協力隊でウガンダに。
 現地ではHIV/エイズの感染防止対策などに取り組みましたが、住民への啓発など社会的な側面を含めて取り組んでいくための知識がないことを痛感し、帰国後、疫学や統計学など公衆衛生に関して体系的に学べるこの研究科に入学しました。1年コースのため、とても忙しいですが、多様なバックグラウンドを持つ学生と議論する機会が多く、充実した時を過ごしています。将来は開発コンサルティング企業やNGOなどで、途上国の現場で仕事をしたいと考えています。

【教授の声】

公衆衛生学研究科 井上 まり子講師

世界で通用する修士号取得

 帝京大学は1993年以来、米ハーバード大学と共同でシンポジウムを開催するなど交流を重ねている。そこで培われた教育手法と研究成果を体系化し、公衆衛生の諸課題に問題解決型アプローチができる高度専門職業人を養成することを目的に、2011年4月開校されたのが公衆衛生学研究科だ。 同研究科は米国の全米公衆衛生教育協会(CEPH)の認定基準に準拠し、「疫学」「生物統計学」「行動科学・健康教育学」「環境衛生学・産業保健学」「保健行政学・医療管理学」の5分野を学べるカリキュラムを提供しており、世界で通用する公衆衛生学修士号「MPH(Master of Health)」の取得が可能だ。
 また、独立した専門職大学院であるため、欧米の公衆衛生大学院(School of Public Health, SPH)同様、学生は講座の枠を気にせず、全分野の教員からきめ細やかなサポートを受けることができる。 加えて、毎年1月にハーバード大学の教授を招いて開講される特別講義では、著名な教授と議論を交わす貴重な機会にもなっている。

実践力を磨く「課題研究」

 さらに、実践を重視する専門職大学院ならではの科目として「課題研究」を行っている。これは学生自らが問題意識を持つ特定の保健衛生関係の問題について、具体的に分析して解決策を報告書にまとめるという修了時に必須の課題だ。一人の学生に対し、同研究科に所属する全ての教員が多面的な視点から審査や指導に関わるゼミ方式と。専属の指導教員によるマンツーマン方式の両方の指導により実務的な問題解決能力と研究手法を身に付けられる。
 コースの期間は通常2年だが、公衆衛生分野での現場経験を積んだ学生は1年で修了することもできる。また、医療分野の経験が全くない学生でも入学が可能で、基礎から学べるカリキュラムが用意されている。井上まり子講師は「公衆衛生は保健医療にまつわる環境や行動科学、社会経済状況などさまざまな問題と深く関わっている。ぜひ幅広い分野の人にこの大学院に来てほしい」と語る。

【Point in Check!】

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1 MPHは国際機関へのパスポート
公衆衛生学修士号「MPH(Master of Public Health)」は、保健医療分野の専門職の学位として国際的に評価されている。
2 世界の公衆衛生界と連携
ハーバード大学をはじめ、イギリスや中国、東南アジアの大学と連携し、教員や学生の交流を積極的に推進。写真はAPACPH(アジア太平洋地区公衆衛生学校連合体)の総会。

【School Data】
取得可能な学位:公衆衛生学修士(専門職)
定員:20人 
開講形態:平日昼
奨学金:あり
主な進路先:国際機関、NGO、NPO、行政機関(地方自治体、保健所など)、大手企業の健康管理センター、開発コンサルティング企業

【Access】
住所 〒173-8605 東京都板橋区加賀2-11-1
URL http://www.med.teikyo-u.ac.jp/~tsph/ 交通 JR埼京線十条駅北口より徒歩約10分
TEL 03-3964-3294(直通)
FAX 03-3964-8415
E-mail tsphgakui@med.teikyo-u.au.jp

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長崎大学大学院 熱帯医学・グローバルヘルス研究科 グローバルヘルス専攻

熱帯医学コース 国際健康開発コース ヘルスイノベーションコース
(旧・医歯薬学総合研究科熱帯医学専攻/国際健康開発研究科)

【卒業生の声】

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公益財団法人ジョイセフ(国際健康開発研究科2014年修了) 後藤 久美子さん

多角的な視点で公衆衛生を学び アフリカの保健事業に取り組む

 青年海外協力隊に参加して2006年から2年間、西アフリカのガーナに派遣され、HIV対策の啓発活動に取り組みました。帰国後はNPO法人「九州海外協力協会」に所属し、協力隊の支援や、開発途上国について中学校や高校で紹介する活動をするうちに、再び公衆衛生の分野で仕事がしたいと思うようになりました。  
 ちょうどその頃、長崎大学のオープンキャンパスに行く機会があり、教授から「公衆衛生は医学だけでなく、さまざまな視点を持った人材が必要だ」という話を伺いました。実際にカリキュラムを見て、多角的な要素を学べることに魅力を感じ、大学院の国際健康開発研究科(当時)への進学を決めました。  
 1年目は異なる研究分野、多様なバックグラウンドを持つ国内外の先生方の講義を受講し、とてもぜいたくな経験でした。2年目にはバングラデシュで公衆衛生関係の研修にインターンとして参加し、実務経験を積む良い機会になりました。2年間じっくりと多角的な視点で公衆衛生を学び、実務経験もできる学科は他にないと思うので、海外の公衆衛生・保健分野に携りたい人にはお勧めです。  
 修了後は公益財団法人ジョイセフに就職し、現在はザンビアで妊産婦や新生児の保健プロジェクトの業務調整員として活動しています。大学院で身に付けた知識やインターン経験、そこで培った人脈が生かされており、やりがいを感じています。将来はプロジェクトのマネジメント全般も手がけたいと思います。

【教授の声】

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熱帯医学・グローバルヘルス研究科 副研究科長 門司 和彦教授

 世界を取り巻く健康問題は複雑で、ひとつの専門分野によるアプローチだけでは課題を解決できません。当研究科では、グローバルヘルス総論や疫学、統計学など全コース共通の科目に加えて、3つのコースごとにそれぞれ履修する科目を設ける方式をとっています。これによって、複雑な問題にも対応できる専門性を養うとともに、学生のニーズに適した柔軟なカリキュラムを組めます。また、フィールドワーク研修や臨床実習、長期海外研修を通じて、途上国の保健医療の現状と課題を肌で感じる機会を提供します。
 熱帯医学コース以外は理学・工学系や人文社会学系の学生も受け入れるため、留学生も交えて多様な価値観を知る機会があります。これからのグローバルヘルス分野では、専門性を高めるだけでなく、さまざまな考え方を理解して課題解決に当たる姿勢が求められます。この分野で国際的な活躍を目指す意欲がある皆さんの入学を待っています。

【Point】 グローバルヘルスに貢献する人材を育成

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 熱帯医学・グローバルヘルス研究科は、従来の「医歯薬学総合研究科熱帯医学専攻」と「国際健康開発研究科」を発展的に統合する形で今年4月に誕生(10月学生受け入れ)。グローバルヘルス領域の課題を解決し、保健・健康に貢献する人材を送り出す3つのコースを設けており、臨床医を育てる「熱帯医学コース」、高度専門職業人としての実務家養成を図る「国際健康開発コース」、大学や企業などの研究者を養成する「ヘルスイノベーションコース」がある。
 授業は英語で行われ、熱帯地域や開発途上国における保健医療の研究・実践経験が豊富な講師陣に加え、ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院から派遣された教員の講義を受講する。さらに、コースによって短期フィールド研修や最大8カ月に及ぶ長期海外研修があり、熱帯医学コースでは熱帯病の症例が多いフィリピン・サンラザオ病院で臨床実習などができる。多様なバックグラウンドを持つ学生に囲まれた世界水準の学習環境も大きな魅力だ。  
 修了生の進路は、世界保健機関(WHO)などの国際機関やNGO、医療研究機関、開発コンサルタント、官公庁など幅広く、さらなる研究のため博士課程に進む例もある。

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㊤1年次プロジェクト・サイクル・マネジメント(PCM)研修
㊦途上国での短期フィールド研修中のNGOプロジェクトサイト訪問

【School Data】
取得可能な学位 修士(熱帯医学、公衆衛生学、医科学)
定員 27人
学費 入学料28万2,000円 
授業料 53万5,800円(年額)
奨学金 あり(条件つき)

【Access】
〒852-8523 長崎市坂本1-12-4 グローバルヘルス総合研究棟
TEL 095-819-7583
E-mail tmgh_jimu@ml.nagasaki-u.ac.jp
URL http://www.tmgh.nagasaki-u.ac.jp