工学」カテゴリーアーカイブ

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東京工業大学大学院 環境・社会理工学院 融合理工学系 地球環境共創コース

【学生の声】

工学部国際開発工学科(旧課程)4年
黒部 笙太 さん

防災技術で人々の命を守りたい

 国際開発工学の髙木泰士准教授の研究室で沿岸防災を研究しています。現在取り組んでいるのは、2013年に台風ヨランダの被害を受けたフィリピン・レイテ島の町タクロバンをフィールドとして、現地調査や住民からの聞き取りで把握した被害状況とコンピュータ上で再現した高潮解析を比較し、地図化することです。高潮が押し寄せた方角や流速などを正確に再現することで、防潮堤の整備や避難経路策定など防災対策・復興計画に役立てることができます。

 国際協力は文系のイメージが強いのですが、理工系の技術を生かして国際社会に貢献する道を探りたいと考え、国際開発工学を学べる東工大に入学しました。学内の「国際開発サークル」の活動でネパールやインドを訪ねたり、休学して8カ月間アフリカを旅したりする中で、開発途上国の人々の生命を守る防災分野を専門にしようと決めました。もちろん、高校生の頃に起きた東日本大震災(2011年)の記憶もありました。

 専門の防災分野に加えて、生物工学や環境、社会・人文系まで幅広く知識を吸収できること、アジアなどの留学生との共同作業を通じて日常的に異文化に触れられることに、ここで学ぶ大きなメリットを感じます。卒業後は本学の大学院に進む予定で、防災分野の専門性を深め、開発コンサルタントとして途上国で活躍することを目指します。

 

【教授の声】

環境・社会理工学院
高田 潤一 教授 

 2016年4月の全学的な組織再編で、従来の国際開発工学科・専攻は、環境・社会理工学院の融合理工学系・地球環境共創コースに発展的に改組しましたが、「グローバル社会で活躍する国際的理工人」を育成するという目標は変わりません。「開発」を「共創」へと進化させるべく、国際開発工学に地球環境や社会科学の領域を加えた幅広い学びを実現し、工学をベースに複合的視点でグローバルな課題に挑む人材を育成します。

 情報通信技術(ICT)を専門とする私は、カンボジア工科大学の能力開発プロジェクトのアドバイザーを務めるなど、東南アジア諸国の大学との技術協力・学術交流に20年来取り組んできました。研究室の8割超は中国や東南アジアからの留学生と国際色豊かです。日本人学生・留学生を問わず、エンジニアリングの視点で開発を追究する人材を育てていきたいと考えます。

 

【Check】

学部・大学院一貫の6学院19系に再編

 東工大は2016年4月、国内の大学では初めて学部と大学院を統合した「学院」を創設した。学士課程(学部相当)と修士課程、修士課程と博士課程のカリキュラムを継ぎ目なく学ぶ新たな教育体系として、全学が6学院(理学院、工学院、物質理工学院、情報理工学院、生命理工学院、環境・社会理工学院)19系に組織再編された。東工大は以前から大学院進学率が9割に上っていたが、新カリキュラムでは入学時から大学院まで方向性を見通して研究に打ち込める。最短で入学後3年で実質的に学士課程を修了し、最短5年で修士号、6年で博士号を取得できる。

 全学的なグローバル理工人育成コースとして「国際意識醸成」「英語力・コミュニケーション力強化」「科学技術を用いた国際協力実践」「実践型海外派遣」の4つの教育プログラムなどが用意されている。また、留学生向けに全科目を英語で履修する学士課程の国際プログラムを設け、世界トップクラスの理工系総合大学としてプレゼンスを高めている。

【school Data】

取得可能な学位 
学士(工学)、修士(工学)、博士(工学または学術)

受入予定可能人数(融合理工学系) 
学士課程40人、修士課程86人、博士課程40人

学費 年53万5,800円  

奨学金 あり(学生支援機構,民間奨学金)

 

【access】

所在地 〒152-8550 東京都目黒区大岡山2丁目12-1

TEL 03-5734-3113(融合理工学系事務室)

E-mail  tse-chair@tse.ens.titech.ac.jp (融合理工学系 主任)

URL   http://educ.titech.ac.jp/tse/(融合理工学系)

 

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【私のキャリアパス】途上国の“水”案件で活躍 ベースは国内で磨いた技術

(株)地球システム科学
水資源事業部 技師
松尾 俊作 さん

【松尾さんのキャリアパス】
22歳 九州大学工学部資源工学科を卒業後、
   同大学院工学府地球資源システム工学専攻に進学
24歳 同専攻を修了し、施設工業(株)に入社
28歳 同社から鎌田バイオ・エンジニアリング(株)に転籍
32歳 同社を退社し、(株)地球システム科学に入社

【海外業務はNPO参加がきっかけ】

 水分野を中心に、途上国の開発プロジェクトに携わる松尾俊作さん。大学院卒業後に計8年間、衛生プラント会社勤務で磨いた水処理技術が海外業務を手掛けるうえでもベースとなっている。

 環境問題への関心は高校時代から強く持っていたという。大学を経て大学院修了時点でもその思いは衰えることはなく、勤務先も、廃水処理や上下水道、廃棄物処理など環境プラントの企画・設計、施工・管理を手がける衛生プラント会社を選んだ。同社は、食品工場の廃水処理から池水の水浄化などの案件について、営業から設計、施工・管理、メンテナンスまで「入社直後から幅広い案件を任せてもらえた」という。

 その後、関連企業に転籍し、地元・九州に帰ってからも、浄水場や下水処理場、し尿処理場など官公庁関連での工事や、民間工場の廃水処理といった環境案件を担当。転籍後も設計・施工監理を基本とした業務に従事し、水関連のプラント案件を手掛けることとなった。

 松尾さんが海外での業務に興味を持つようになったのは、最初に勤務した衛生プラント会社の頃にアジアの水汚染状況を記した本に出会ったのがきっかけだ。「日本国内の水道はトリハロメタンなどが騒がれていた時期でもあり問題が多いと思っていましたが、アジアではそれをはるかに超える汚染に大勢の人が苦しんでいると思うと何とかしたくなりました」と当時を振り返る。その思いを抱えたまま2社目に転籍。在籍中に水道の生物浄化に共感し「地域水道支援センター」というNPOに所属することとなった。このNPOは、主に「緩速ろ過」と呼ばれる微生物を使った日本の伝統的な水浄化技術を、国内外の中小規模の集落向けに普及する活動を展開している。

 NPOに参加しながらさらに海外志向を強める中で、理事の一人に「海外の水道にかかわる仕事に就きたい」と相談。そこで紹介してもらったのが、現在勤務する地球システム科学というわけだ。
2008年4月に入社した。

【「緩速ろ過」技術を途上国へ】

 松尾さんは「最初に担当させてもらったのは、無償案件であるタンザニア首都圏周辺地域の村落給水事業です。当初は補助的な業務が中心でしたが、それでもそれまでかかわっていた国内案件に比べ、なかなか経験できないような国家の水道計画策定部分までかかわることができることをとても楽しく感じました」と話す。その後、ルワンダやスーダン、ペルーなどにおける国際協力機構(JICA)のプロジェクトを担当し、一貫して水関連の案件に携わってきた。「何もないような場所に調査から始めて水道施設を設置する仕事は、現在の日本にはほとんどありません。さまざまなリスクもそれだけ大きく、大変な面もありますが、自分の設計いかんで住民が満足するかどうかが決まるということに加え、自分で設計から手掛けることができる点に大きなやりがいを感じています」と松尾さん。

 今後は、総括的な立場に立って、プロジェクトチームをまとめることができるような実力を付けるのが目標だ。そしていずれは、NPOで出会った緩速ろ過技術を途上国案件に生かす夢もある。「この技術が適した国もありますので、将来はこの技術に携わるような仕事もしていきたいです」。業務を通じて実力を磨きながら、次の目標に向かって努力を続ける毎日を送っている。

(出典:「国際開発ジャーナル」2013年6月号)

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【大学の国際化最前線】同志社大学大学院 グローバル・リソース・マネジメント

文理の枠を超え 現場に根差すアプローチを実現

doushisha
(文系と理系の学生が協働で、小型風力発電機の組み立てから設置まで行った)

【困難に直面する人々と共に】

 現在、世界では新興国が目覚ましい発展を遂げている一方で、紛争や災害に苦しむ国も多く残されている。そうした国では、インフラ整備が不十分である上、民族・宗教間の対立や貧富の格差など、多様な問題が複雑に絡み合っており、文系か理系どちらかに限られた専門知識では対処が難しい。

 同志社大学は、新興国の若いエネルギーを吸収するとともに、困難に直面する国の人々と共に問題解決を目指す人材を育成するため「グローバル・リソース・マネジメント」(GRM)を2012年度に立ち上げた。これは、学内試験で選ばれた学生が履修できる博士課程前期・後期一貫の5年間の教育プログラムで、グローバル・スタディーズ研究科と理工学研究科が中心となって進めており、文部科学省「博士課程教育リーディング・プログラム」に採択されている。

 プログラム・コーディネーターを務めるグローバル・スタディーズ研究科長の内藤正典教授は、GRMを「文理融合の上に多文化共生を目指す世界初の実践的プログラム」だと強調する。「文系の学生にとって、理系の高度な理論を理解し習得するのは難しい。しかし、GRMでは、学習範囲を途上国開発の現場で求められるインフラ工学や資源工学の知識に限定する代わり、実際に手足を動かしつつ身に付けてもらうよう工夫している」。実際、GRMを履修する学生たちは、文系であっても理系の学生たちと一緒に風力発電システムなど電気工学の基礎を学ぶ。

 他方、理系の学生たちも、将来、中東やアフリカで仕事をする可能性もある。「だからこそ、GRMでは、理系の学生も、こうした紛争地域の現状や危機管理、さらに開発学全般に関する理解を深めてもらう」と内藤教授は語る。

【理念と実践を追求】

 GRMのもう一つの特長は、困難な状況にある人々に寄り添い、共に問題を解決していく「徹底した現場主義」だ。

 同大は、2012年6月にアフガニスタン政府代表やタリバン関係者などを招き、同国の平和構築のための会議を開催するなど、国際問題に実践的なアプローチを続けている。こうした経験を踏まえつつ、GRMでは開発途上国から留学生を積極的に受け入れている。さらに修士課程の学生には月額15万円、博士課程の学生には月額20万円を奨励金として支給し、学生が開発途上国の現場に足を運ぶ後押しをしている。

 「GRMは、同志社大学の理念である『良心教育』を現代の世界においていかに生かすか考えながら創ったプログラム」だと内藤教授は語る。理念と実践性の両方を深く追求する同大学から輩出される人材が、日本の国際開発の世界にどのような変化をもたらすのか、今後の展開が注目される。

(出典:「国際開発ジャーナル」2014年1月号)

【Access】
〒602-8580 京都市上京区今出川通烏丸東入
URL http://grm.doshisha.ac.jp/

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【私のキャリアパス】留学で出会った日本 語学力と女性としての感性を生かす

セントラルコンサルタント(株)
海外部橋梁グループ
技術副主任
林 一美 さん

【林さんのキャリアパス】
25歳 ボリビアのサンタクルス・デ・ラ・シエラ私立大学
   工学部土木工学科卒業
25歳 東京工業大学大学院
   理工学研究科土木工学専攻入学
27歳 同専攻修士課程修了後、
   セントラルコンサルタント(株)入社
   海外部に配属

【生まれも育ちもボリビア】

 セントラルコンサルタント(株)海外部で開発コンサルタントとして活躍する林一美さんはもともとボリビア出身だ。ボリビアで生まれ、大学までこの国で育った。「日本に来たのは国際協力機構(JICA)の奨学金『日系社会リーダー育成事業』を利用して、東京工業大学大学院に進学したのがきっかけ」と林さん。

 林さんは、第二次世界大戦後、祖父に連れられ同国に移住した父と、看護師として同国内でボランティア活動に取り組んでいた母の間に生まれた。小学生の頃から地元の子ども達が通う地域の学校と日系人向けの学校を行き来し、日本語とスペイン語の2カ国語を話す生活を送る。

 数学好きだったこと、そして自動車整備士として働く父の背中を見ながら「何かを作る仕事をして社会の役に立ちたい」との思いから、地元・サンタクルス市のサンタクルス・デ・ラ・シエラ私立大学工学部に進んだ。
 大学では土木工学を専攻。「卒業後は大学で教鞭を取りたいと考えていて、もっと勉強したいという思いがありました。
そのため、より高い水準の環境を求めて日本の大学院への進学を決めたのです」。2004年3月に来日し、その半年後の同10月に東工大大学院理工学研究科土木工学専攻(修士課程)に入学。日本に来たのは実は、この時が初めてだったという。
 同専攻修了後にセントラルコンサルタントを志望したのも、「日本でより高い技術力を身に付けたい」と考えたためだ。なかでも、中南米地域などスペイン語圏におけるプロジェクトの実績が豊富な同社なら、自分の語学力も十分に生かすことができると考えた。

 林さんのそんなバックボーンは同社からも高く評価され、06年10月の入社後すぐに海外部に配属される。新入社員の海外部配属は同社では初めてだという。

【スペイン語を生かす】

 海外部では橋梁グループに所属し、無償資金協力をはじめ政府開発援助(ODA)案件を中心に、業務調整や測量、自然条件調査などの業務を手掛けてきた。なかでも印象的だったのは、入社1年後に任されたニカラグアの橋梁プロジェクト。橋梁4基の施工監理を担当した。「着工してから完成するまで一貫して担当できたことで、図面に書いてあるものが実際にでき上がっていく様を目にすることができました。完成した橋梁はプロジェクトにかかわった人たちの努力の結晶で、実際に自動車が橋を通過していく瞬間は感動しました」(林さん)。

 スペイン語を自由に駆使する林さんは、実施機関である現地運輸インフラ省担当者からも厚い信頼を得た。林さんは「大変でしたが、無事に1つのプロジェクトをやり終えたことで大きな自信につながりました」と振り返る。現在は母国ボリビアのサンタクルス市における道路防災プロジェクトの積算業務を担当している。林さんは「今後はスペイン語圏にとどまらず、無償資金協力プロジェクトにかかわっていきたいです。特に女性のエンジニアはまだまだ少ないので、さらに技術力を高めて、女性ならではの観点を生かして活躍できるようになりたい」と語る。スペイン語圏ではないエチオピアのプロジェクトもすでに経験した。10年に日本人男性と結婚した林さんは「家事や子育てと仕事の両立は大変だと思いますが、非常にやりがいのある仕事ですので、これからも続けていきたいです」と話した。

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【大学の国際化最前線】山口大学工学部 グローバル技術者養成センター

維新志士の志を継ぐ 国際的な技術者の養成所

【海外に触れる機会を】

 「ここが、かつて伊藤博文たちが学んだ場所か!」。2013年8月、英国のユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)キャンパスに立った山口大学工学部機械工学科1年生の永田拳太郎さんは、高揚する気持ちを抑えられずにいた。

 山口は、江戸末期に英国に留学し、後に明治維新の立役者となった伊藤博文や井上馨ら、“元祖グローバル人材”とも言える志士たちを生んだ縁の地だ。この地にキャンパスを構える山口大学の工学部は、「グローバル技術者養成センター」を12年に立ち上げ、経済発展の著しい東南アジアや東アジアで活躍できる国際的な技術者の育成を進めている。

 「日本で現在行われている理工系教育には、国際的なコミュニケーション能力や日本人としての自覚を養う内容が不足している」。同センター長を務める工学部の齊藤俊教授は、そう指摘する。工学部では、以前より社会建設工学科東アジア国際コースを設け、国際的に活躍できる技術者の育成に取り組んできた。そして、12年度に文部科学省「グローバル人材育成推進事業」に採択されたことを機に、同コースの教育内容を強化するとともに、対象を工学部の全学生へと拡大していくため、このセンターを工学部キャンパス内に新設。

 同センターでは、英語力を強化するための教育プログラムを新しく開発するほか、技術系人材の国際化に関する講演会などを開催している。また、学生が参加しやすいよう留学プログラムの構成を工夫したり、留学者向けの奨学金制度も立ち上げ、海外研修への参加を積極的に後押ししている。冒頭で紹介した永田さんのように、英国に留学する場合もあるが、学生の多くはインドネシアやタイなど東南アジアの大学に派遣され、現地の技術系の学生と一緒に共同実習を行ったり、現地の工場見学も行う。永田さんは、この制度を利用して英国の学生と3週間過ごした日々を、「分からないことは徹底的に質問し、納得することが大事だと感じ
た」と振り返る。

【地元理解と異文化受容】

 山口大学では13年度から、全学生が履修すべき共通科目として「山口と世界」を新たに立ち上げた。これは、山口の歴史や文化、産業、自然について学生たちが調査し、発表する課題探求型の授業だ。「国際的に活躍するためには、専門分野の知識だけで
なく、現地社会に対する理解も必要だ。その際、“日本人”、あるいは“山口人”としての自覚を持っていてこそ、異文化の社会を受容できる」と齊藤氏は強調する。

 「今後は、短期・長期も含め80人の学生を毎年、海外研修に派遣するとともに、工学部以外の理系学部にも取り組みを広げたい」(齊藤氏)。明治時代に日本を変えたグローバル人材を生んだ山口が、今度は世界で活躍する人材を輩出できるか。その真価が今後、問われる。

(出典:「国際開発ジャーナル」2014年4月号)

【Access】
常盤キャンパス
〒755-8611 宇部市常盤台2-16-1
URL http://www.yamaguchi-u.ac.jp/