九州・沖縄」カテゴリーアーカイブ

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【大学の国際化最前線】九州大学大学院 工学府 地球資源システム工学専攻

世界の資源工学の教育拠点 北大との新プログラムも

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(インドネシアのジャワ島西部にあるチバリオン金鉱床の地表調査)

【早期から国際化進める】

 「資源工学は、国際化しないと生き残れない分野。それゆえ、われわれは他大学に先駆けて海外に関する取り組みを進めてきた」。九州大学大学院の工学研究院地球資源システム工学部門の渡邊公一郎教授は、こう言い切る。

 大学院の工学府地球資源システム工学専攻は、鉱物やエネルギー資源の開発に関する教育と研究を行っており、特に地熱分野では多くの人材を輩出している。しかし、国内にはエネルギー資源が少ないため、早期から海外の資源国との接点を強化してきた。

 代表的な取り組みが、1987年に始めた海外インターンシップだ。学部生も含め、毎年2~5人程度をフィリピンの石炭鉱山やニュージーランドの地熱発電所など、世界各地の資源開発の現場に派遣、約2週間の実習を行っている。これまでに参加した学生はすでに200人を超える。「近年は他大学も海外インターンシップに取り組んでいるが、われわれがそのモデルになったと自負している」(渡邊教授)。

 また、2003年には東南アジアの産業人材の育成を目指して設立された「アセアン工学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED-Net)」に参加。インドネシアなど東南アジアの資源国から、多くの留学生を受け入れている。また、九州大学全体では、文部科学省の「国際化拠点整備事業(グローバル30)」を経て「スーパーグローバル大学創成支援」にも採択されるなど、まさに“国際化の雄”と言える存在感を放っている。

【留学生の受け入れを拡大】

 さらに昨年は、主にアフリカ諸国を対象に国際協力機構(JICA)が実施する資源人材育成プログラム「資源の絆」に参画し、アフリカからの留学生も増加傾向にある。一方、「博士課程だけで40人以上の留学生が在籍し、受け入れ能力が限界に来つつある」(渡邊教授)。そのため同専攻では、2017年度をめどに北海道大学大学院の工学院環境循環システム専攻とジョイントディグリープログラムを開始する予定だ。「本学は資源の探査開発に強いが、北大は資源開発に関連した環境保全に強みがあり、シナジー効果も期待できる。両学が互いに教員を融通し合い、開発途上国の資源人材の育成ニーズに応えていきたい」と渡邊教授は意気込む。

 なお、同専攻では、JICAの委託を受け1970年から開発途上国の地熱関係者に対する研修を実施してきた実績もある。これは2001年に一旦終了したものの、各国から再開を切望する声が多く寄せられ、今年度から再開する予定だ。

 電力需要が急増する開発途上国では、エネルギー資源の開発が今後ますます重要な課題となる。世界の資源工学の教育拠点と呼べる存在となった同大学の活躍に期待が集まっている。

【Access】
伊都キャンパス
〒819-0395 福岡市西区元岡744
URL http://www.kyushu-u.ac.jp/ja/

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【大学の国際化最前線】宮崎大学 産業動物防疫リサーチセンター

アジアを中心に国際防疫ネットワークを形成

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(JICA研修の様子)

【口蹄疫の被害をバネに】

 2010年に宮崎県で猛威をふるった口蹄疫は、牛や豚など約29万頭の家畜を殺処分する事態に至り、大きな被害をもたらした。この惨禍を教訓に翌11年10月に立ち上げられたのが、宮崎大学の「産業動物防疫リサーチセンター」だ。

 センター長を務める三澤尚明教授は、設立の背景について「宮崎県は日本有数の畜産地であり、宮崎大学も以前から家畜の防疫に関する教育・研究に取り組んできた。しかし、実際に口蹄疫が発生すると、感染症の診断技術や検査体制がいかに弱く、現場での防疫措置を統括できる専門家が不足しているかを痛感した」と語る。

 三澤教授たちは、まず、病原体の研究や病気の診断、防疫策を踏まえた家畜の生産計画の策定など、防疫に関するあらゆる分野について総合的に研究・教育できる体制を整えた。例えば、センターには、CTやMRI装置などを配備した大中動物実験施設や、鳥インフルエンザの感染実験ができる飼育施設が設置され、内外問わず研究者たちが利用できる。この施設での研究から、これまでに口蹄疫を簡易かつ迅速に診断する新手法が生まれたり、食肉殺菌の新装置が開発されたりしている。

【国際研修も積極的に実施】

 経済のグローバル化によって人やモノが頻繁に国境を越えて移動する今日、海外から日本に病原体が持ち込まれる危険性は高まっている。また、開発途上国では、日本では発生しなくなった狂犬病もいまだに流行しており、対策は十分に進んでいない。「だからこそ、アジアを中心に家畜の防疫の国際ネットワーク構築が喫緊の課題」なのだと三澤教授は指摘する。

 こうした背景から、同センターでは国際協力機構(JICA)に協力し、2012~14年にかけて、東南アジア、アフリカ、南米から計19人の研修員を受け入れたほか、今年はミャンマーとタイなどの大学で、口蹄疫の簡易迅速診断の方法について研修も実施した。さらに、文部科学省の助成金を活用し、外国人研究者を招いて英語で講義を行ったり、獣医師を目指す学生を積極的に欧米やタイ、インドネシアなどの大学に短期留学させている。こうした積み重ねによって各国にネットワークが培われた結果、今年2月に東京都内で開催された国際シンポジウムには、7カ国から250人が参加した。

 三澤教授は、「学外との積極的な交流を通じて日本人学生の行動力も磨かれつつある」と指摘する。実際、昨年度は文部科学省が実施する「トビタテ!留学JAPAN」に感染症関連の研究室に所属する3人の学部生が応募し、長期留学が決定したという。「これからも自ら道を切り開ける学生を育成していきたい」と三澤教授は意気込む。

【Access】

木花キャンパス
〒889-2192 宮崎市学園木花台西1丁目1番地
URL http://www.miyazaki-u.ac.jp/cadic/index.php

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【大学の国際化最前線】九州工業大学 「国連との連携による超小型衛星技術に関する博士課程留学生の受入事業」

衛星開発を担う人材育成

【国連と共同した留学生受け入れ事業】

 九州工業大学は「技術に堪能なる士君子」の養成を基本理念とし1909年に創立され、世界をリードし次世代社会の創出・育成に貢献するグローバル・エンジニアの育成を目指している。環境、IT、宇宙、バイオ、金型などの分野に強く、産学官連携活動や国際連携研究などを積極的に推進している。
 
 九州工業大学は途上国における宇宙技術開発の支援に向け、2011年秋から国際連合と連携して、超小型衛星技術に関する博士課程留学生を毎年2人、発展途上国から受け入れる事業を開始することとなった。この事業は今年9月にウィーン国際機関日本政府代表部と国際連合宇宙空間平和利用委員会の間で交換された外交公文書に基づいて実施される。「設備の乏しい発展途上国の学生に技術を伝えることで、多くの国が衛星開発に参加できるようにしたい」と話すのは、九州工業大学宇宙環境技術ラボラトリー施設長の趙孟佑教授だ。

 きっかけは09年6月に筑波で開催された宇宙科学技術に関する国際シンポジウムでのこと。国連の宇宙部から、通信教育などを通じた発展途上国での宇宙技術教育に取り組む「基礎宇宙技術推進プログラム」の話を聞いた。趙教授はその場で「人工衛星を作るには教科書を読むだけでなく実際に手を動かすことが重要で、大学がその場を提供できる」と提案し、国連と連携したプロジェクトが始まった。希望者はまず国連にアプライし審査を経た上で、最終的に九州工業大学が受け入れる学生を決定する。学生は担当教授から直接指導を受けると同時に、「プロジェクト・リーダー型博士技術者の育成プログラム」という、学生がリーダーとなって自らの研究テーマに沿ったシステム開発に取り組むプロジェクトに参加する。事業にかかる費用は渡航費を国連が負担する他は全て九州工業大学の負担となる。

【優秀な人材の確保にも期待】

 「プロジェクトの対象となるのは、人工衛星を打ち上げたことのない発展途上国の学生たち。国に戻っても必要な設備が何もない中で、人工衛星プロジェクトをゼロから立ち上げ、創意工夫をしながら運営していく強い意志とリダーシップを持った人材の育成を目指す」と趙教授はこのプロジェクトの目的を語る。
 
 また、趙教授は発展途上国が衛星開発技術を身に付けることの意義について、「今まで途上国は先進国が打ち上げた人工衛星から必要な写真などのデータを購入してきた。途上国が自前の人工衛星を打ち上げることができれば、気象予報や国土の保全、農業用地や水資源の管理など、その国や地域のニーズを満たす衛星が作れるようになり、途上国の宇宙利用が進む」と話す。さらにさまざまな国による宇宙利用が進むことで、宇宙の平和利用が進むと強調する。自前の衛星を持っていれば、世界中の国々との衛星の共同利用も可能になるという。

 この事業にはもう一つ大きな目的がある。それは優秀な人材の確保だ。「単独で海外から学生を募集するには困難もあるが、国連との連携であれば、世界中から優秀な学生に来てもらえるし、日本人の学生にも刺激を与えることができる」。
 
 国連宇宙部との共同事業はイタリア・トリノ工科大学のみが行っており、日本では初の試みだ。九州工業大学にしかない衛星地上試験のノウハウを生かして途上国における宇宙開発技術の発展に貢献するとともに、世界中からの優秀な人材の確保にも取り組むこのプロジェクトの動向に、今後も目が離せない。

【Access】

九州工業大学 宇宙環境技術ラボラトリー
〒804-8550 福岡県北九州市戸畑区仙水町1番1号
九州工業大学工学部(戸畑キャンパス) 総合研究棟4F
http://laseine.ele.kyutech.ac.jp/

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【大学の国際化最前線】琉球大学 観光産業科学部観光科学科/観光科学研究科

【ここがポイント!】

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◎サステナブル・ツーリズムのあり方を観光立県沖縄で学ぶ ◎観光学が学べる大学院で国際観光のエキスパートに!

【「国際観光」の切り口から学ぶ国際協力】

 豊かな自然と文化に恵まれた観光立県沖縄の中部に位置する琉球大学。2005年に設立された観光産業科学部観光科学科は、全国初の観光学を専門とする学科で、国内外の観光産業振興に貢献できる人材の育成を目指している。
 
 「国際観光論」「国際開発論」「アジア経済論」などの講義を担当する同学科の梅村哲夫教授は、「国際観光」を学ぶ魅力について、「世界経済の動向を幅広く理解し、グローバルな視点を身に付けられること」と話す。さらに、「近年、アジアなどの新興工業国・地域の所得が上昇するとともに、多くの途上国でインフラの整備が進んでいるが、今や各国の開発計画には必ず観光開発が取り入れられている。国際観光という切り口からグローバルイシューを理解することで、経済社会開発の視点を醸成し、多面的な側面を持つ国際開発や国際協力にも応用できる」と、国際観光論の可能性について語っている。 梅村教授のゼミナール(観光学演習)には、現在12人の学生が在籍し、それぞれが関心を持つ分野・地域の観光について学んでいる。青年海外協力隊を目指す学生や沖縄観光親善使節「ミス沖縄」として国内外の観光プロモーションに携わる学生もいる。

【2009年4月、待望の観光大学院がスタート!】

 大学院教育にも力を入れる琉球大学では、09年に観光科学研究科観光科学専攻がスタートした。同専攻は、観光科学の立場から観光事象をとらえ、教育研究によって持続可能な観光振興や観光開発をリードできる国際人を養成しようと設立された。
 
 コンセプトは、従来型のマスツーリズムに代わる「持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)」の推進と、観光振興の国際化、観光を通じた地域活性化への貢献だ。 同研究科には現在、大手旅行代理店や航空会社、金融機関などに勤務する社会人学生ら6人が在籍しており、各自の関心テーマに基づく研究を進めている。留学生にも広く門戸を開き、今後、さらに国際色豊かなキャンパスになることが予想される。(2009年現在)
 
 また、琉球大学はアジアや太平洋島嶼国の大学との学術交流協定を結んでおり、交換留学の機会の提供や島嶼国共通の課題解決に向けた共同研究にも取り組んでいる。国際開発における新しいパラダイムの一つとして「国際観光」に注目が集まる中、地理的にもユニークな亜熱帯島嶼地域の沖縄で、楽しみながら「観光」と「開発」の可能性を探ってみよう。

【Access】

〒903—0213 沖縄県中頭郡西原町字千原1番地
URL http://www.tourism.u-ryukyu.ac.jp

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九州大学大学院 生物資源環境科学府

【学生の声】

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環境農学専攻 生産環境科学教育コース 松田 彩花さん

実績豊富な留学制度を活用 水分野の専門性を極めたい

 小学生の頃から海外で仕事をしたいという漠然とした思いを持っていましたが、それがより鮮明になったきっかけが、高校生の時に国連人間居住計画(ハビタット)福岡本部で開かれた「水」フォーラムに参加したことでした。開発途上国が抱える問題を知る中で、水資源や環境について関心が芽生え、九州大学農学部に入学することを決意しました。
 学部時代にベトナムの農場現場を視察する体験プログラムに参加し、かんがい施設が十分に整備されていないといった問題を目の当たりにしました。こうした体験によって、水分野に仕事として携わりたいという気持ちが強くなり、大学院に進学してより専門的な知識を身に付けることを決めました。
 
 九州大学の大学院に進学したもうひとつの理由が、在籍しながらでも留学しやすい体制が整っていることです。本学府は留学を推奨しており、また、学部時代に大学院の授業を前倒しして受講できる制度も設けられています。本学府からの留学実績が豊富な点は非常に心強く、私が近く留学するドイツのミュンヘン工科大学に関しても、留学経験者である同じコースの先輩からアドバイスをいただきました。
 ミュンヘン工科大学では、現在研究している水質測定で衛星画像を活用するための知識や技術を学びたいと考えています。将来的には、開発コンサルタントなど、途上国の水環境の整備に貢献できるような道に進めればと思います。

【教授の声】

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大学院農学研究院 中村 真子 准教授

 本学府は農業、畜産、水産、森林、生物など幅広い研究分野をカバーしていますが、今やどの分野においても国際的視野は不可欠であり、開発途上国に対する技術支援としても重要なテーマです。そこで本学府では、“キャンパス内の国際化”を推進しています。学府生全体の約3割が外国人留学生であり、日本人学生も英語でコミュニケーションをとったり、研究室によっては英語で論文の発表を行ったりしています。また、留学生を対象にした完全英語の授業を日本人の学生も受講し、単位を取得することができます。
 一方、課題を設定して解決していく力を養うため、実際に途上国を訪れ、現地の農場や研究所を視察する現場実践型プログラムも用意しています。本学の学生の留学促進にも力を入れていて、大学間や部局間の交流協定により、農学分野において権威のあるさまざまな国の大学と結び付きが強い点は、本学府の大きな強みと言えます。

【Point】 充実したプログラムで国際的視野を育む

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 生物環境資源科学府と農学部では、地球規模の課題を解決する「アグリバイオリーダー」の育成を目指したグローバル人材支援事業を展開している。そのひとつがTOEFL-iBTのスコアアップを基本として、ネイティブの講師から実践的な英語を学ぶプログラムである。さらに、米国やオーストラリアなど英語を母国語とする国の大学に短期留学するプログラムも用意されている。参加した学生は、授業や企業訪問、ホームステイなどを通じて、語学力の向上はもちろん、異文化に触れながら多様な価値観を身に付けることができる。

 もうひとつが、海外の大学で農学の現状や課題を学ぶ体験プログラムだ。たとえば、タイのプログラムでは、熱帯作物に関する講義やマングローブ植林地のフィールドトリップなどを開催。フィリピンのプログラムでは、世界のコメ生産に関する問題を解決するための研究を行う「国際稲研究所」を視察するなど、途上国の農場現場や研究現場の実態を、実際に肌で感じることができる内容となっている。 プログラムを通じて得た英語力と専門知識を武器に、メーカー企業や開発コンサルティング企業などに就職し、世界を舞台に活躍する修了生も多い。

kyushushita

㊤夏休みや春休みの期間中には英語の集中講義も開講される
㊦生物多様性やサステナビリティについて学ぶコスタリカのプログラム

【School Data】
取得可能な学位 修士(農学)、博士(農学)
定員 修士244人、博士77人
学費 入学料28万2,000円、授業料53万5,800円/年
奨学金 あり

【Access】
〒812-8581 福岡市東区箱崎6-10-1
TEL 092-642-2802
E-mail nossyomu@jimu.kyushu-u.ac.jp
URL http://www.agr.kyushu-u.ac.jp