日本のODAに学ぶ中国、韓国
淋しいかな、追われる日本の立場

追われる者の日本
日中韓+ASEAN(10カ国)は、インドも含めて世界経済をリードするアジア経済圏の中核になろうとしています。しかし、その中で日本は政治の不安定による国家政策発動の遅れなどから、中国、韓国の後塵を拝する状況にあります。
追う立場の中国、韓国は、実は追われる日本の過去の成功の秘訣を研究しながら追っていますから、追われる側に立って見ていると、過去の自分の姿を見ているようで、なんとももどかしい感じになってしまいます。

日本に学んだ中国のアフリカ支援
 たとえば、1つは中国のアフリカ支援。中国は資源確保、中国製品の市場開拓を目指して積極的に大型投資を行い、資源等の開発輸入を進めています。これは、かつて日本が東南アジアで行い、成功をおさめた投資、貿易、経済協力の三位一体の日本型モデルに似ています。私は似ているというより、一国の経済発展を追求すると、必ず日本型モデルに到達するはずだと考えています。
 アフリカにおいてミレニアム開発目標を達成するには、現代版中国モデル、元祖日本モデルの適応が強調されてしかるべきだと思います。また、企業のCSR(社会的貢献)が注目されていますが、これも日本が60年代~70年代に資源確保で世界中を奔走した時に、すでに実施していました。
 JICAの投融資事業の中に関連インフラ整備事業への融資が行われ、たとえば、鉱山なり林業なりの開発地域の住民も利用するフィーダー道路建設、周辺住民も歓迎する診療所などを、企業のリスクで建設していましたが、そのリスクを少しでもカバーすべく、ODA勘定による投融資が実施されていました。中国はアフリカでの資源開発で、これと似たような援助を行っているようです。

韓国のKOICA
 2つ目のケースは、韓国のもの真似。韓国はアジアで日本に次ぐDAC加盟の援助国ですが、まず援助機関をつくる時、日本のJICAを真似てKoreaのKoを頭文字にして「KOICA」(韓国国際協力団)を創設しました。そして、JICAの青年海外協力隊を真似てKOICAボランティアーズを設けて、韓国の経済協力の露払い的な存在感を高めています。
 もっとも日本の青年海外協力隊も米国平和部隊(ピース・コー)を真似て創設されましたから、真似ることは決して悪いことではないと思いますが、出来得る限り、真似た元祖以上の工夫が欲しいですね。

市場開拓の先兵
 韓国の青年海外協力隊は今、受け入れ国で人気が高い。その訳は、一人ひとりの隊員に一定の予算が付いていて、赴任国の欲しい韓国製の機材、機具を買って供与することができるシステムをとっているからです。予算不足の途上国の公務員にとって、新型のコンピュータはノドから手が出るほど欲しいものです。こんなありがたい隊員ならば何人でもウエルカムということになっています。隊員の質も良い。なぜならば、韓国では協力隊に入れば、兵役が免除されるので、優秀な若者が参入してくるといいます。フランスでも兵役免除されています。
 実は、相手の欲しいもの、必要なものを援助するというシステムは、かつての日本のプロジェクト方式技術協力という制度のなかの専門家派遣にもありました。それを携行機材と称していましたが、途上国政府は時に専門家の頭脳より専門家の携行機材に目をつけて、歓迎していた時もありました。しかし、こうした方式は相手を堕落させるだけで、長続きはしなかったですね。
 それでも、韓国協力隊は国家の発展のために韓国製の機材を買って供与し、韓国製品の先駆的な市場開拓を行っている、と見てよいのではないでしょうか。その情熱が今の日本に必要だと感じるのは、私一人だけでしょうか。