日本の成長戦略にベクトルを合わせてほしい ODA 民主党議員の考え方に賛成したい

第5回の「日本のODAを考える会」が6月8日夕刻、政策研究大学院大学で開かれました。今回のテーマは「アジアとの協力戦略」。キックオフ・スピーチは民主党衆議院議員の田嶋要氏。田嶋氏は事業仕分けメンバーとして活躍したこともあって、このところ一気に知名度が上がっています。もう一人は政策研究大学院大学教授の大野健一氏で、「アジアの開発課題と日本の知的支援戦略」にフォーカスを当てスピーチを行いました。

国益とODA
私はこの会の発起人の一人ですが、民主党の若手議員のテーマ「日本の成長戦略とODAへの期待」に注目しました。とくに、田嶋議員の冒頭の発言「ODAも日本の成長戦略にベクトルを合わせてほしい」に多大の関心を抱きました。この発言に対し、NGOを含むODA関係者からは想定通り“国益優先”との批判まじりの発言が相次ぎました。私たちのODA業界は相変わらず、「援助に国益は禁物」という考えにとらわれていて、世間から「井の中の蛙」とみられていることにも気がつかない一途さがあるようです。
ODAの原理原則はわかりますが、その前に、今の日本の経済、財政構造がどうなっているかを考えながら、小さくなる一方のODAをどうしたら守れるかに英知を結集させなければならない時代であることに気づいてほしいものです。

国民からのメッセージ
田嶋氏の「ODAも日本の成長戦略にベクトルを合わせてほしい」というメッセージは、実は民意を含む国民からのメッセージでもあると思うんです。日本の成長戦略という最大の政治課題にODAも合流して、どういう役割が果たせるかを考えてほしい。ODAが最大の政治課題に寄与することによって、ODAの役割が新たに認識され、さらに政治レベルにおいて、ODAの政治的有効性が再認識され、政治家が胸をはって国民にODAの国家的意義を説明できるような素地ができると思います。田嶋議員のメッセージは、まさに国民に選ばれた政治家のメッセージなのです。
 かつて、自民党政権時代に4層構造というODAメカニズム論があって、その第1層が国家的視点に立った戦略的司令を発する所で、第2層が政策立案(外務省など行政)、第3層が実施機関(JICA)、第4層がODAプレイヤーを意味していました。

政治主導のODA司令塔を
その時、司令塔は国家戦略―成長戦略の中でのODAの役割をODA政策に盛り込むよう指令する所、という考え方に立っていましたが、実際は役所の書いたODA政策を各大臣に認めてもらう所に化けてしまいました。まさに換骨奪胎だといえます。
民主党政権は国家戦略室で、成長戦略におけるODAの役割をどう位置づけできるか、衆目の集まるところだといえます。ただ、その場合、ODA側から積極的にその役割の青写真を民主党側に提示するような努力が必要となるでしょう。「国益に寄与することがODAではない」などといわずに、「国益に寄与し、そしてアジア、アフリカにも寄与できるWin-Winの関係構築」になるようなODA専門家の英知を結集させる必要があると思います。今、国民はそういうODAを求めているのではないでしょうか。