インドで経営の大義を教える日本人

「この国のかたち」の日本人
 司馬遼太郎という歴史作家は、日本という国の形を求めて多くの著書を出版していますね。そのなかに「この国のかたち」という単行本がありますが、奇しくもインドで日本の技術協力の一環として、もう3年も運営されている「経営塾」塾長の司馬正次先生は、まさに「この国のかたち」を絵に描いたような人物なのです。

 3月に塾生35人を卒業授業として日本に連れて来たとき、弊社を訪ねていただいて「経営塾」の要諦を聞かせていただきました。いやぁー、感動しました。日本の経営者に聞かせてあげたいぐらいの話でした。
 先生の授業は、先生が15年間、米国マサチューセッツ工科大学で教鞭をとってきた「製造業経営学」の授業だけではなく、経営者としての精神修業も行っています。そのなかで最も重視しているのは、「大義」の教えです。

経営の大義とは
 「大義」とは、インド人として生まれたからには、インドを愛し、同胞を愛し、インドの産業の発展に挺身する心構えを持つことである。先生の「大義」のもっと大きな狙いは、これまで優秀なインド人材が海外(特に欧米)にブレーン・ドレイン(頭脳流出)しましたが、それはインドに彼らを優遇できる産業が発展していなかったからであるとして、ここで大きな経営者の卵を育て、力のある産業を育成して、優秀な人材をインドに足止めさせることなのです。
 先生の「大義」は遠謀深慮なのです。先生は3年間で350人ほどのインド経営者という一つの大きなグループを育てましたが、このグループと日本との関係を発展させるために、卒業旅行先は必ず日本です。経営者としてのイマジネーションを膨らますために、日本の文化と接触させています。
 「盆栽」、「お寺」、「着物」、「駅」といった日本文化とインド文化を比較させながら、経営者としてのイマジネーションづくりの訓練を行っているようです。
 経営者の「大義」。果たして日本に存在するでしょうか。ただの金儲けだけだと、ただの経営者。日本経済は現在、最悪の状況にあります。国民と経営者との関係は、単に消費者層という捉え方ではなく、共に日本を蘇生させる原動力になる、という大義が求められているのではないでしょうか。
司馬先生、頑張れ! (2010.3.16)